第7話[旧都市東京 鬼ヶ城決戦]2
『『『『『ウガァァァァァァァ!!』』』』』
旧都市が弾幕と機械の駆動音、オーガロイドの叫び声と断末魔、瓦礫の崩れる音で響き渡る。廃墟の回りから砂煙や塵が広がるように舞い、旧都市を霧のように囲む。
絶えず電波が飛び交い、仲間と戦況の確認が行われる。目的は“AECCT”への突入経路確保、その為のオーガロイドの露払い、そして鬼ヶ城の破壊。
《十一部の一班、突入経路を確保、前進を続ける!》
《十三部二班、大群に足止めを食らった!》
《第五部四班、砲撃型の狙撃を受けている!》
『ウガァァァァァァァ!!』
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
『グルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』
日々乃の雄叫び、アースセイヴァーの猛攻が戦場を駆け抜ける。目の前に立ちはだかるオーガロイドを一体一体殴り、頭を掴んで廃ビルに投げ飛ばす。
《前に出すぎんじゃねぇぞ! サポートが届かなくなる!》
ジャンの搭乗するアッシュガルがライフルをアースセイヴァーの死角に向けながら後に続く。
「にしても、ワンパンでオーガロイドを倒すたぁ、やっぱすげぇなあの機体……っと!」
アースセイヴァーの頭上より、ビルを蹴って飛びかかるオーガロイド。ジャンはライフル弾をそのオーガロイドのコアに撃ち込む。オーガロイドは断末魔をあげ爆発四散した。
「すみません、ジャンさん!!」
《後ろ見るな! 後ろが俺の役目!! ひたすら前進しろ!!》
「はい!! うぉぉぉぉぉぉ!!」
アースセイヴァーは拳を振り上げオーガロイドの潜む廃墟を駆け抜ける。ジャンはアースセイヴァーに続き仕留めきれないオーガロイドを討つ。
『ウガァァァァァァァ!!』
オーガロイド群の猛攻は止まない。狭い建物に密集し、大群と連なって襲いかかればジャンでは敵わない。
「座標送信!」
ジャンは素早くアッシュガルをジャンプさせ、機体を後退させた。彼の立っていた位置にオーガロイド群が突撃をかもそうとした一瞬、上空より隆弾が飛来し鬼化の群れに炸裂した。
「サンキュー、“10式”!!」
ここより更に後退した場所から隆弾砲による援護射撃を行ったT-10式に対してジャンは親指を立てた。
「あ、おいアースセイヴァー──」
『グルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』
アースセイヴァーは拳一つでオーガロイドの群をまとめて吹き飛ばしていた。突風があったかのように砂煙は舞い、粉々になったオーガロイド群の破片が塵となり消滅した。
《すみません! 行きましょうジャンさん!!》
「お、おう……やっぱすげぇな、お前」
ジャンは改めて、目の前を前進するアースセイヴァーに向けて畏怖と驚嘆のこもった呟きを漏らした。
箙兵衛が率いる特殊任務隊、通称“特任”が、オーガロイドの本拠地への入口と見える地下鉄に突入する。
「行くぞお前ら、敵城に突入する!!」
入口を阻むオーガロイドに箙兵衛の駆るアッシュガルがダガーを弾倉に備えた2丁拳銃“火縄銃・火鉄(マグマ)”を構えてオーガロイドの群れに突撃する。マフラーユニットと大腿部のスラスターからジェットを噴出し、見えない壁を蹴って飛ぶようにオーガロイドの間合いに次々と入りを顔面やコアに刺す。叩き込む。撃ち込む。
彼ら特任のアッシュガルはアップデートされた新型であり、細身の見た目とマフラーめいたスラスター、ダガーの付いた拳銃を構え次々とオーガロイドを必殺する姿は、まるで戦国の世に暗躍した忍者のようだ。
「コール2とコール3は右全域、コール4とコール5は左全域にレーダーを展開しろ。我々が先陣を切る!!」
箙兵衛のアッシュガルは火縄銃・火鉄を腰に携え、小型ライフルを両手に構えて地下鉄へ進入する。彼の部隊も、周囲を警戒しながら後に続く。
「ありゃアッシュガルの新型か」
一機のアッシュガルが、建物の屋上にワイヤーで登り上がった。
狙撃ライフルを携えたそのアッシュガルは、アシェリー自らが乗り込んだ狙撃型だ。
「日本で作られた機動戦闘仕様か……エモンが見たら喜びそうだな」
アシェリーのアッシュガルは、ロングレンジに特化したバイザー型カメラアイを起動して周囲の気象や地形の情報をデータに入れる。そして狙撃ライフルを両手で構え、右肩スコープで地上のオーガロイドに狙いを定めた。
一呼吸と共に操縦桿に備え付けたトリガーを指で引き、その動作がアッシュガルに投影され狙撃ライフルから弾丸が放たれる。
「Chastoooooooooooooooooo!!」
エモンのアッシュガルが振るう高周波太刀“キルオーガ”は「斬 鬼 化」という文字がデザインされた刀身を震わせ、次々とオーガロイドを斬り捨てた。腰に装着されたブースターを稼働させ、素早い動きで次の狙いとなったオーガロイドの間合いに入る。
彼へと向けられた砲身がある。建物の上部に身を潜め、砲撃型が次の犠牲者となる機体をロックオンする。
しかし、定めた標的をこちらに飛んでくるミサイルが遮った。砲撃型は狙いを変更し、レーザーでミサイルを撃ち抜く。
『──ウガァァァァァァァ!』
別方向より発射された弾丸によって砲身が撃ち抜かれ、砲撃型は断末魔をあげ爆発した。建物が震え、倒れようとする。
「アッシュか、感謝!」
《その場を離れろ! 建物が崩れるぞ》
エモンはブースターの噴出口を機体前方に向け、加速したままバックする。
頭上に狙いを定めライフルを建物に向け連射。建物が瓦解し、崩れた壁がオーガロイドの大群を押し潰す。
「お前のデータは私も受け取っている。先程のアッシュガルは興味深かったぞ。風副長にも見せてみたいものだ」
《私は、これで十分》
風副長のアッシュガルが、オーガロイドの背中を蹴って飛びながら、ナイフをコアに投擲した。ナイフをコアに刺され活動停止したオーガロイドが次々と爆発四散する。
全身のマニューバに細かく意識を向けた高度な操縦技術は、エモンと同等以上であった。
《俺も成果にしか興味がないがな。日本独自のアッシュガル、見せてもらおうか》
アシェリーは弾倉を入れ換え、次の援護射撃への体勢に入った。バイザー型カメラアイは戦場全体を見渡し、あらゆる戦況が視界に入る。
アースセイヴァーは破竹の勢いでオーガロイドを次々と撃破していく。
「はぁ……はぁ……」
しかしオーガロイドの数が多い。消耗も現れ始めた。思うように進めない。
《ぐわああああああああああ!!》
日々乃の感覚が、通信を越えて味方が次々と犠牲になったのを察知した。
《箙兵衛隊長ぉぉ!!》
勝家は思わず特任のカメラデータを自身の機体コクピットと同期した。
腹部破損。箙兵衛の機体データが赤いアラートと共に投影された。
「箙兵衛──!?」
勝家は思わず、彼の生存を不安視する声をあげた。
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