ギャルJK、異世界でイケてる聖女になる!!

神代零児

#1 パンツとトラック事故、でもって女神!

 マジ最悪! がトラックに轢かれて死んじゃうとか、クソダサ過ぎてマジ笑えねーよっ!!


 頭抱えたくなって、おでこに手を当てようとして、その手がおでこをすり抜けてっ!


 すかすかすかすか!


 あー今のは霊体ってヤツで、だからそうなっちゃうって事なんだろー! ちゃんと分かってんよー!


 はぁ、はぁ……。れ、霊体でも興奮すると疲れるもんなんだな。


 あーそうだ! 叫んだお陰でちょっと落ち着いたから自己紹介するわ。


 の名前は楽阿弥らくあみ莉音りのん。高校二年、所謂いわゆるJK。


 あーしがなんで死んだのかって話も、今からするから。


 あーしの横、歩道のトコでびーびー泣いてるじっちゃんばっちゃん。結論から言うとさ、この二人を庇った結果車道に飛び出しちまったんだよね。


「うおおおん! なんで、あんな若くて優しい子が死なにゃあならんのじゃあ!」


「お迎えなら、わたしらに来れば良かったんじゃあっ!」


 あーしの為にそんな事を言ってくれてるけど、その目は今のあーしを見てる訳じゃ無くて、道路で転がってる方の、所謂実体の方のあーしへと向いてる。


 そりゃそーだ。生きてる人間にこっちのあーしが見られる訳無いし、声だって聞こえやしねーんだから。


 さて、実体のあーしの状況についても言っとくか。


 背中向いてるからこっからじゃ顔は見えないけど、自慢のミルクティーベージュのミディアムロングヘアは例え死んでたってサラサラしてんよ。ちゃんと日々手入れしてっかんな。


 高校指定の白のブラウスシャツ、そこからピンクのブラの肩紐やらサイドベルトやらが微妙に透けてるのが分かる。


 ……え、あーし普段からあんなくっきりとブラ透かせてたの? 痴女じゃん。


 って痴女じゃねーしっ!


 下は下で、ただでさえ短くしてる紺のプリーツスカートが豪快に捲れ上がって、ブラとおそろのピンクのパンツが『こんにちわ』しちゃってる。


 出血大サービスかよっ! ――これ、別に身体張ったギャグでもなんでもねーかんなっ!


 じ、自分で言うのもなんだけどロクなカッコしてねー!


 ……でもまー実際打ち所は絶妙に良くて、いや死んでるから悪いんだけどさ――ともかく見た目には目立った傷とかは無くて、パンツこそ大サービスしてるけど血とか実際は殆ど出てないし、さっき回り込んで確認した死に顔もめっちゃ安らかな感じでぶっちゃけ可愛かった。


 ぴんと長いまつげはじゃなくて自前だし、マイ・チャームポイントのくっきりとした唇とかめちゃキュート。


 そこだけは例え公衆の面前でパンツ見せまくってたって、あーしとしてはまだ救いだったなってマジ素直な気持ちでそー思ってる。


 死ぬ事よりも、可愛くねーのだけはあーし絶対嫌だから。


 言っとくけど、じっちゃんとばっちゃんは別に悪くないよ。


 悪いのはあーしをナンパしてきたあのサイテー野郎だ。


 ……街を歩いてたあーしに、チョーシこいた男が声掛けてきてさぁ。


『ウェーイ、ねーちゃーん。俺と一緒に運命感じ合わなーい? ウェイウェーイ!』


 キョーミ無くて話も聞く気無かったから大体の記憶でセリフの再現してるけど、まーこんな感じのチャラチャラしたナンパだった訳。


『あーオトコなら間に合ってるわ、オメーの運命は一人で舌噛んで死ぬって事で。じゃーな』


『ウェーイッ! ねーちゃんめてるねぇ、もっと明るく陽気にウェッウェーイ!』


 ワリィけどセリフは盛ってる。なんせ聞き流してた箇所を全部ウェイで埋めてるだけだかんな。


『はいはい、オメーはあの明るいお日さんにでも恋焦がれて死にな』


『ウェッウェウェ! ウーウェウェー!』


 あーしの素っ気無い返しにこのウェイ原人も引くに引けなくなったのか、なんかこっちの腕を掴んできたりしてさー。


『んだよ離せよ』


 それでも別にどうにでも出来る自信は有ったんだけど……。


『こりゃあっ! 大の男が女の子に乱暴するとは何事じゃあ!』


『そうじゃよっ、みっともないったらありゃしないねえ!』


 ここでこの古き良きノリって感じのじっちゃんばっちゃんがさ、あーしの為に口挟んできてくれたのよ、うん。


『ウェ!? ……んだよジジイとババアが、引っ込んでろ!』


 流石のウェイ原人も叱られてプライドが傷付いたとあっちゃ人の言葉を思い出すみたいで、叱ってくれたじっちゃんばっちゃんに逆上してきやがってさ。


 でさ、あーしもせば良いのに。


『やめろサイテー野郎が! その人らに手ぇ出すんじゃねーっ!』


 じっちゃんの胸倉むなぐら掴んだウェイ野郎を引き剥がそうとして、


『るせー、邪魔すんな!』


 逆に撥ね除けられちまって……。


『――ッ! きゃっ!?』


 そのまま車道に投げ出されたあーしは、迫るトラックに。


 ドンッ!!


『ひょえー、お嬢ちゃん!!』


『なんてことじゃあっ!!』


 見事吹っ飛ばされちまいましたとさ、めでたしめでたし。


 ……いや、最初にも言ったけどホントは自分でもめちゃくちゃダサいと思ってんよ? マジのマジだよ?


 いくらなんでも死んじまったらそこでもー人生終了なワケだし。


 あのサイテー野郎なんて、最後は結局『ウ、ウェーーー!!』て奇声上げて逃げてったしなー。


 それに霊体だからさー、あんなパンツ丸見えな実体の方のあーしのスカートだって、直せやしねーんだよ? 生死またいでまでして、あーしは一体何の羞恥プレイやらされてんだっつーの。


 けどさー。やっちまったものはもー、グダグダ言ってたってしょーがねーつーかさー。


 それに。


「うおおおおおん! わしらはちゃんと分かっとるぞぉ、お嬢さんが派手な見た目しててもわしらを庇ってくれた事をのぅ! 優しい子じゃったんじゃあ!!」


「それにあの軟派なんぱな男に対しても、ずぅっと凜としておってのぅ! こんな婆さんでも同じ女子おなごとして、見ていて心がスカッとしたもんじゃあ!」


 ……うん、この二人にこんな風に言って貰っちゃったらさ、なんか死んだ事に悪態吐いてばっかりもいられなくなるっつーか。


「「うおおおおん、うおおおおん!」」


 んもー、そんなめっちゃ泣かなくったっていいってー。顔じゃんかー。


 ったく。もーパンツ丸出しは別に良いから、せめてハンカチだけでも取り出せねーかな?


 二人の顔、拭いてやりたいんだけど。


 じっちゃんとばっちゃんはまだまだ泣いてる。


「うおおおおん! 神様ぁ、せめて、せめてこの子の魂は救ってやってくだされぇ!」


「こんな凜として優しい子は、例えこのニホンとは違う世界でも聖女様として生まれ変わってほしいんじゃあ!」


 い、いやいや。神様とか聖女とかそんなムダに壮大な話しなくていーから!


 ……ん、なんだ?


 なんか二人のセリフの後から、お日さんの光がじんわり強くなってきたような……?


 ちょっ、ええっ!? いきなり、光がぶわあってなって……じっちゃんもばっちゃんもその他大勢も、時間が止まったみたいにピタッと固まっちまった!?


『その願い、叶えて差し上げましょー!!』


 はあっ!?


 なんか大人の女の声っぽいけど、でもめっちゃアホみたいな口調の言葉が、き、聞こえてきたぁーーー!!


 ビッカアアアアアアアアンンンッ――――――!!


 頭の上でめっちゃくちゃド派手な音がして、見上げると、そこに!


 金髪ソバージュロングヘアに薄緑色しためっちゃ凝った感じのドレス姿の、それでいてよく見りゃ左脚側はパンツが見えるスレスレまでスリット入れてる、清楚なんだか痴女なんだか分かんねー、けど腹立つ位に神々しいって言葉が似合っちゃうような女が、居たっ!!


 めっちゃ美形だし、それは認めるけどっ、でもと輝かせてるその目とかは、マジのガチでアホっぽいぞっ!


 なのに神々しいって、どーゆー事だー!


「私は異界ゼルトユニアの女神ファリーリーですっ! ラクアミ・リノンさん、貴女をあっちの世界で、最高に最強な聖女にしてあげちゃいますー!」


 な、ななななななんああーーーっ!?


 このアホいったい、な、何言ってんだぁーっ!!


 ――#1 おわり!――

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