263. 異世界2381日目 多くの犠牲の対価

~~別視点~~


 ドォォォォォォ~~~~~~~ン!!!!!!


 アムダとの戦いが行われていたところで大きな爆発が起きた。冒険者の二人が古代兵器に飛びついたあと、しばらくして振り落とされたと思ったところで古代兵器から閃光が発せられた。

 例の光魔法かと思ったがそうではなかったようで、爆音とともに辺りは土煙で覆われてしまった。爆発の直前に兵士達は逃げ出したが、冒険者を含めて何人かは逃げられずにその爆発に巻き込まれてしまったように見えた。




 今回、我々は戦いの監視のためにやって来ていた。アムダの討伐の結果如何にかかわらず、戦闘内容を克明に記録し、失敗した場合には次に生かすための報告をするのが我々の仕事だ。

 どのような結果になろうとも手出しをせず、ただ見守るだけであり、そしてその結果を報告することが最重要な任務だ。


 突撃隊の戦闘は当初からかなり激しいものとなった。ただ事前にアムダの動きについて報告があったとおりだったため、多少の能力アップにもかかわらずどちらかと言えば圧倒していた。

 予定通り足の部分への攻撃に集中し、少しずつではあるが、足にダメージを与えていった。とりあえず動きさえ止めてしまえばどうにかなるという考えからだ。

 しかし、順調に見えたのは途中までだった。確かに足は切られていたのだが、アムダの動きを見るとそこまで気にしていないような感じだったのだ。防御できそうな場合でも特に気にせずに攻撃を加えていたように見えた。

 もともと4本の足だけがあれば問題なかったのだろう。残りの足は移動するときの補助の役目であり、実際は無くても困らないものだったのかもしれない。


 4本足になった後、いくら攻撃してもほとんど身体に傷を付けることが出来なくなったしまった。しかも前よりも間違いなく剣の交換頻度が上がっていた。残った足の強度は他のものよりも上だったのかもしれない。


 戦闘による討伐は無理と判断したのか、合図とともに突撃隊全員がアムダに突撃した。その中の4名が切られないように剣を身体に受けてオリハルコンの道具で剣の動きを固定し、他のメンバー達も身体を張ってなんとかアムダの動きを止めることができた。

 この瞬間を例の二人の護衛がアムダにとりつき、すぐ後にジュンイチとジェニファーの二人がアムダの身体にとりついた。このあとしばらくしてハッチを開けることが出来たらしく、核の破壊に成功したように見えた。


 兵士達は飛翔の魔道具を使ってアムダから離れだしたが、すでに動かなくなっていた兵士達もいた。冒険者の二人も逃げだそうとしたようだが、兵器からの攻撃を受けてしまったようだ。

 このあとジュンイチがアムダの下敷きになってしまったようで、なぜか無事だったジェニファーも逃げずにジュンイチに寄り添っていた。そのあと光と爆音に包まれたのだ。




 アムダを倒すことが出来たのか?それとも失敗してしまったのか?索敵をしてみるが、古代兵器に索敵は効かないため分からないが、突撃隊がいくつか感じる。


 しばらくすると土埃がはれてきた。先ほど兵器がいた場所には兵器の姿はない。倒したのか?


 他の監視者達と爆心地に近づいていく。付近にはいろいろな破片が飛び散っているが、兵士達の者ではなく、兵器の破片のように思われる。爆心地は大きな穴になっていてその中心に古代兵器の大きな残骸が転がっていた。

 おそるおそる近づいてみると、残っているのはオリハルコンの部分だろうか?骨のようなところが残っているが、もう動きそうにはない。


「倒したのか?」


 誰かが声をあげる。


「倒したぞ。やってくれたぞ!!!」


 大きな歓声が上がった。私も兵器の残骸を見て確信した。


 しばらく歓声に包まれた後、ふと我に返って突撃していった人たちのことを思い出した。


「突撃隊の人たちは?」


 その言葉で先ほどの歓声が静まった。みんな分かってしまったのだろう。この討伐を成し遂げた犠牲のことを・・・。



 連絡を受けた人たちも一緒になって辺りの捜索を行った。討伐隊のうちの多くは吹き飛ばされていたが、息がある者も多かった。すぐに簡易テントの中に運び込まれ、駆けつけた治癒士達により治療が行われた。

 すでに遺体として見つかったものもいたが、遺体の見つからない人もいた。あの爆発で完全に吹き飛んでしまったのだろうか?



 このあと捜索はしばらく続けることになったが、今回のことを通信で先に報告をする。


「突撃隊兵士32名と冒険者2名は目的を遂行。無事にアムダを破壊。現在負傷者の治療をしつつ、捜索を続けています。」


 あとの捜索は残るもの達に任せて、私は王都へと向かった。王都に到着して王宮へ向かうとすぐに謁見することとなった。ここで改めて報告を行う。


「監視隊隊長のライハンと申します。アムダの討伐についてご報告いたします。


 03000に予定通り討伐作戦を開始。突撃隊がアムダに突入。

 激しい攻防が行われ、当初の予定通り足への攻撃を中心に戦闘を継続。

 03024にアムダの足1本目を破壊。

 03035にアムダの足2本目を破壊。

 03048にアムダの足3本目を破壊。

 03053にアムダの足4本目を破壊。

 03066にアムダの足5本目を破壊。

 03072にアムダの足6本目を破壊。

 03073にアムダが形態を変化。

 形態変化によりアムダの戦力アップ。

 03078にプランBにて突撃を敢行。

 03079に冒険者2名が兵器にとりつき、核の破壊開始。

 03081に核の破壊に成功。兵器から閃光が見られ爆発を確認。


 爆発後、爆心地でアムダの残骸を目視。破壊されたことを確認。


 現在も引き続き周辺の操作は続けていますが、現在のところ負傷者が26名、遺体回収が6名、行方不明2名です。爆心地に近かったと思われる遺体はかなり損傷がひどく、判別が難しいですが、遺体はすべて兵士のものと推測されます。

 行方不明と判断されているのは冒険者の2名です。はっきりとは分かりませんが、倒した兵器に挟まれて身動きが出来なかったと思われます。爆発の中心付近にいたため、回収不能な状態まで吹き飛んでしまった可能性は否定できません。」


「ご苦労。」


 このあと皇帝は高らかに宣言された。


「大きな脅威は去った。これでもう古代兵器を恐れることはないだろう。

 しかしこの脅威のためになくなった者達のことを忘れてはならない。そしてこの脅威を取り去ってもらった者達のことを忘れてはならない。我が国の兵士、そして兵器を倒すために尽力してくれた二人の冒険者を忘れてはならない。


 そしてこのような同じ過ちは絶対に起こしてはならない。

 古代兵器の脅威を今一度確認しなければならない。再び古代兵器が稼働しないようにしなければならない。今回のことは世界に伝えるべきであろう。」




 各国からの使節団を見送った後も、古代兵器に関する調査は続けられた。そしてアムダが出現したと思われる付近で古代遺跡が発見された。

 すでにかなり破壊されていたが、残っていた資料からここで古代兵器が復活したと結論づけられた。今回稼働した古代兵器はアウトラス帝国に50年前に滅ぼされた国の一族が秘密裏に起動したものだったと推測された。


 遺跡に残された文献からその遺跡はその国の王族に代々伝わっていた遺跡らしく、再び国を興すために古代兵器の力を借りようとしたようだ。

 過ぎた力は身を滅ぼすと言うことだろう。遺跡はすべて破壊されており、古代兵器の起動に関わる資料もほとんどが焼け落ちていたのはある意味良かったのかもしれないと個人的には思っている。

 というのも古代兵器が小型の兵器を生み出すことが出来るという記述があったからだ。もしあの兵器より劣るとはいえ、眷属のような兵器が生み出されていたとしたらと考えると恐ろしくなってしまう。再び世界が滅びていた可能性もあるのだ。

 今回古代兵器の核を破壊できるという冒険者がいたからこそ倒すことが出来たが、もし彼らがいなかったらどうなっていたことか・・・。我々は古代兵器におびえながら生きていかなければならなくなっていたかもしれないのだ。



~クリストフSide~

 アウトラス国から今回の顛末が世界に発信された。今回の古代兵器の復活した経緯、古代兵器による被害、そして今回の討伐が無かった場合の予想される世界の未来の姿。予想された未来はかなり衝撃を与える内容だった。アウトラス国だけにとどまらず、世界中の国がその被害を受ける可能性もあったのだ。


 本当かどうかは今となっては分からないが、以前滅んだ国の末裔が隠されていた古代兵器を復活させてしまったと説明があった。ヤーマンにもあったものなのであながち間違いでも無いのかもしれない。ジュンイチ達が言うにはあそこの古代兵器の復活は無理だと言うことだったがな。


 今回の討伐に尽力した英雄達のことも同時に伝えられた。アウトラス帝国の兵士の中にヤーマンの冒険者二人の名前があることに多くの人が驚いていた。

 アウトラス帝国は今回の犠牲者に黄玉章を送ることを発表した。そして彼らを知る人たちは彼らの業績をたたえながらも悲しんだ。


 今回おそらくあの二人がいなかったら倒すことが出来なかったのではないだろうか?二人の過去のことはよく分かっていないが、いきなりこの世界に現れたような二人だった。もしかして神が今回のために使わしてくれた人物だったのだろうか?

 ヤーマン国では二人の英雄のために国を挙げての追悼の儀が行われた。二人の多くの知り合いも駆けつけてきたようだ。彼らを招待して一緒に二人のことを語り合った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る