260. 異世界2363日目 古代兵器の対処方法
打ち合わせが再開されて、アムダと古代兵器を結びつける説明が行われた。
「遺跡で発見された資料からアムダは古代兵器で間違いないだろうと数カ国から報告がありました。かなり具体的な資料が提示されたものもありましたので、その資料を写します。」
プロジェクターのような感じで壁に投影されたのは自分が提供した資料だった。
「今回撮影したアムダと遺跡から発見された資料を比較して古代兵器の可能性は非常に高いと思われます。また、今回の討伐に向かった人たちからの意見やその強さから古代兵器を模倣して作られたとは考えにくいと判断しています。
古代兵器についてさらに詳しい説明が提出されていますが、内容の説明については本人にしていただこうかと思います。ジュンイチ様お願いします。」
一応事前に話は振られていたけど、さすがに緊張するなあ。
「ヤーマンの冒険者のジュンイチと言います。僭越ながら自分たちが行った調査結果を簡単に説明させていただきます。」
ヤーマンでも説明したような内容に加えて、先ほどの冒険者の装備からオリハルコンが抽出されて修復された可能性があること、魔獣石から魔素を取り込んでエネルギーとしている可能性が高いことを説明する。
「現在のオリハルコンとミスリルの合金ではなく、古代遺跡から発見されるオリハルコン100%の素材が使われていると言うことで間違いないのか?」
「それについては過去に発表された古代兵器の遺物の調査結果にも書かれていますし、自分が確認した遺跡の資料でも同じ事を確認しました。ただし古代兵器のすべての装甲ではなく、部分的な使用だと思われます。
ただ武器となる部分はすべてオリハルコンで出来ている可能性が高く、討伐のときにも現在のオリハルコン装備では刃が立たなかったと報告が出ていましたので間違いないと思います。」
このあともいろいろと意見交換がされるが、人数も多いのでなかなか話が進まない。一番の問題は研究者が多いので話が脱線しすぎることだ。途中で議長を務める人から修正が入るが、何度も話がそれてしまう。
昼食の休憩の時もあちこちで議論がされており、結構遅くまで議論したところでこの日はいったん終了となった。
翌日も朝から議論となり、やっと古代兵器を止める方法についての話となった。
「核があるという場所の特定はまた話すとして、核の破壊が問題となるというのはそれだけ堅いと言うことなのか?」
「いえ、普通だと壊せないようになっているといった方が良いです。取り外すことが出来れば良いのですが、簡単にはとれない構造となっているようです。オリハルコンで固定された台座にはめ込まれていますので・・・。」
「普通だと壊せないと言うことは一応壊す方法があるということか?」
「古代文明の資料に破壊すると書かれていました。ただそれをどれだけの人が出来るか・・・。」
「どういうことだ?」
「お伺いします。魔獣石を魔素を消費するわけでなく、破壊することは出来ますか?」
「まさか・・・。」
「はい、資料によると古代兵器の核は魔獣石と同じものと考えていいようです。なのですべての魔素を消費させてしまえば動かなくなると言うことも考えられますが、冒険者が持っていた魔獣石がどの程度だったかと言うことと、今現在でも魔獣から魔素を吸収しているようですので、かなり難しいのでは無いかと思います。」
この時点でみんなが沈黙してしまった。それはそうだろう。
「つまり、特階位レベルの魔獣の攻撃をかいくぐってとりついた後、どのような金属で固定されているか分からないハッチを錬金術で開け、魔獣石と同じ性質の核を破壊する必要があると言うことなのか?」
「無理だ。優階位の実力を持つ錬金術師はいるのか?」
「それ以前に核が破壊できないのであれば意味が無いだろう。」
「古代文明では魔獣石を破壊できたと考えてもいいと言うことなのか?それならばなんとかその方法を見つけられないのか?」
「それについては過去何十年、何百年と検討されて無理という結論が出ていることだろう。」
「それでは普通に倒すしかないと言うことになるが、はたしてそれが出来るのか?」
ジェンの方を見るとうなずいてくれた。
「よろしいですか?」
自分の発言に辺りが静かになる。
「これを見てください。」
手のひらに魔獣石を載せて分解するイメージで魔力を込める。すると魔獣石が割れて霧散した。
「「「「・・・・・」」」」
それを見ていた人たちは静かになった。
「ど、どういうことだ!!」
しばらくいろいろな言葉が飛び交った後、やっと落ち着いてきた。
「いろいろと試した結果、魔獣石を壊すことが出来ました。一応方法はお教えしますが、イメージがどこまで出来るか分かりません。」
そもそも魔素というものがなんなのかと考えたが、結局分からなかった。もともと目に見えるものではないし、気体のようなものかと考えたが、うまくいかなかった。そこで光のようなイメージで考えたのだ。
ただそれが固体化すると言うことがどういう原理か分からないが、魔獣石が通常の物質ではないものと考えられる。つまり波長というか波が収束して形に見えているだけではないのかと言うことだ。光も波と粒子の二つの性質を持っていると言われているからね。
そこで魔素を波長という形でとらえ、破壊するわけではなく、波が広がるイメージをすると分解できたのである。
ただこれを細かく教えていったとしてもまずい気がするので小さなものの集まりとしか言うことが出来ない。
ジョニーファンさんもかなり驚いて挑戦しているがやはり出来ないようだ。自分たちも明確な原理が分かっていないので正直教えるのにも無理がある。おおざっぱなイメージだからこそ出来る可能性もあるからね。あまり理論的に考えると出来なくなってしまいそうだ。
魔獣石の破壊についてみんながある程度落ち着いてきたところで発言する。
「今の段階では他に破壊できる人がいないと思いますし、正面から戦っても倒すのはかなり難しいと思います。そこで自分たちも戦いに参加して核の破壊の役割を果たしたいと思っています。
一応ある程度の戦闘能力はありますし、ハッチを開けるための錬金術も使えます。ですので、動きを止めてもらうことが出来れば、兵器にとりついて核の破壊が出来るのではないかと思っています。」
自分の発言に驚いた表情になっていたが、一人の研究者が質問してきた。
「戦闘能力と言っても良階位の冒険者と聞いているが大丈夫なのか?最低限の実力が無ければ近づくことも難しいと思うのだが・・・。」
「それについては我が国の騎士隊から話を聞いている。冒険者としては良階位ではあるが、優階位の実力があるものとも十分に渡り合えたという話だ。また隠密や索敵能力は非常に優れているとも聞いているので、実力的には討伐に参加することは出来ると思っている。」
ラザニアさんが発言してくれた。
「魔法の能力に関してもわしが保証できるぞ。わしと同レベルと考えてもらってかまわないくらいじゃからな。まあ今回の古代兵器にどこまで通用するのかは分からんがな。」
ジョニーファンさんからも発言があり、周りの人たちがかなり驚いていた。
結局他に案も見つからないこともあり、帝国の皇帝への説明があったあとで古代兵器の討伐が決定した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます