251. 異世界2255日目 島の遺跡の再調査

 ここには数年ぶりに来るが、特に変わった様子はないので大丈夫そうだ。自動扉も開いたので、動力も切れていないだろう。

 たださすがに心配なので、索敵をしてから一通り中を調べる。一通り見て回って問題ないことを確認してやっと落ち着くことができた。空調もちゃんとしているので、魔力の供給がなくならない限りは維持されるのだろう。


 見回りにも時間がかかってしまったので、この日は前作った休憩スペースで休むことにした。さすがにほこりをかぶっていたけど、浄化魔法を使えば一瞬で綺麗になるのは助かる。もう掃除機を使っての掃除なんて出来ないよな。




 翌日からさっそく鍵のかかっている扉を開けてみることにした。扉は居住スペースの横にあるコントロールルームと思われるところにつながっている扉だ。もしかしたらここを開ければ他の扉の鍵があるかもしれないからね。


 魔力を変化させるにはまずは身体にためた魔素を相手の身体に流し込んで同調させることで個人の持つ魔力を変えていく。ただ同調させるのはかなり難しく、魔素操作のレベルが高くないと全く出来ない。あとはもともとの相性もあるみたいだが、運がいいことに自分とジェンは相性は悪くなかった。ちなみに魔法の訓練の時はたんに魔素を流すだけなので今回の同調とは違うものだ。


 この魔力の同調で一番の問題は魔素を流し込まれた方はかなり身体に負担がかかると言うことだ。魔素を流し込まれると、身体が同調するというか、一体化するというか、とにかく変な感覚となってしまい、ぶっちゃけた話、性的興奮状態になってしまうのだ。

 ジョニーファンさんは同調できるレベルの人間がいなかったのでやったことがなかったようだが、聞いた話だがと前置きをされて言われたのは「相性が良ければ良いほど魔素の調整幅が大きくなるが、その分その負担が大きくなる」と言うことだった。


 このため時間があるときに何度か試してみたが、10分くらいで我慢できなくなって行為に及んでしまうと言う状態なのである。短時間で交代しながらでも20分が我慢の限界だ。今回どのくらい出来るか不明だがとりあえず試していくしかないだろう。


「イチ、行くよ。」


「うん。」


 魔力確認のプレートに手を当てて魔力を通し始めたところでジェンから魔素を流し込こまれる。


「くっ!!」


 注ぎ込む魔素を受けて自分の魔素との割合を少しずつ変えて調整して変化させていく。エラーメッセージが出続けるが、魔素の認識についてはエラーでインターバルがあるわけではないので何度も試すことが出来る。


「く、く、はぁ・・・あ・・・っ」


 さすがに我慢できなくなるので数分おきに交代して魔力を調整していくが、ある程度したところで興奮が抑えられなくなり行為に及んでしまう。たしかに満足感は得られるんだけど、かなり疲れるので連続してすることは出来ない。

 さすがにずっとやっていると身体が持たないので、途中で狩りに行ったりして気分転換をするが、一日に何度も繰り返す行為で肉体的にも精神的にもかなり疲れていった。治癒魔法とか使ってもやはり限界があるからなあ。


 あと、魔素の調整がかなり微妙なのでダイヤルの番号を1つずつ変えていく感じには出来ないのも問題だ。このためここまでやったから続きということが出来ない。それに無制限に魔力を調整できるわけではないので、自分たちが調整できる範囲になければ結局は開かないのだ。


 いろいろと抑えられない感情と戦いながら数日が経過していた。気持ちだけは高ぶっているんだが、やはり身体への負担はどうしようもない。


「ピッ!ガーーーーー!」


 もうそろそろ限界だなと思っていた4日目、ついに反応があって扉が開いた。


「あ、開いた?」


「うん、よかった・・・。」


「閉まらないようにさっさとドアを固定しておこう。」


 これでまた閉まってしまったらしゃれにならないので大きな岩をドアのところにおいて閉まらないようにしておく。


「感覚を忘れないうちに他のドアも試してみよう。大丈夫か?」


「ええ。イチの方こそ大丈夫?」


「まあ大丈夫と言えば大丈夫だけど、今は開けることを優先しよう。」


 他の扉も開けようと試してみたが、残念ながら開かなかった。登録されている魔力が違うのか、それとも同じようにやっているけど実際には微妙に違うのかもしれない。

 一つだけでも開けることが出来たのでいったん中の調査をしないといけないんだが、身体の火照りを治めるのが先だった。しかしずっとこんな事をやっていたら魔力同調しないと出来ないようになってしまいそうだ。



 一息ついたところで調査を開始する。索敵で魔獣はいないことは確認していたが、何か罠のようなものがあっても怖いので慎重に行ったほうがいいだろう。


 通路を進むと、最初から開いていた扉のところのように大きなホールがあった。キッチンもあるし、大きなテーブルなどもあるので食堂なんだろうな。併設するスペースにはお風呂らしきところもあった。

 食堂のテーブルはまだ使えそうな感じだが、やはり劣化が進んでいる。ただ魔道具や金属で作られたところは大丈夫なのでキッチンやお風呂は使えそうだ。こっちの方が向こうの部屋よりも高級そうなので上のクラスの人間が使っていたのだろうか?


 その奥は同じように通路になっているが、前の通路よりも広く、部屋もかなり広く作られていた。部屋と言うよりはコントロールルームという感じで機械が配置されている。

 置いている機械は劣化が抑えられているようなんだが、残念ながらすでに動かなくなっていた。他で見たものよりは動きそうな感じはあるんだけどね。部屋の壁には投影機のようなものもあるので大きなモニターのような感じで使われていたのかもしれないね。

 他の部屋も似たような感じで、何かの研究がされていたような印象だ。紙のようなものがあったみたいだが、すでに劣化して読めなくなっていた。いくつか金属板に書かれているのであとで調べてみよう。


 一番奥にモニタールームみたいなものがあったんだが、ここからさらに奥にある部屋がのぞけるようになっていた。窓になっているところは強化ガラスのようなものなのかな?部屋の中には魔獣石がある程度たまっている。もしかしてこれが動力の供給場所なのか?

 中には魔獣が一匹いるが、すでに死にかけている。魔獣が死んだ後、魔獣石にして魔素を回収しているのだろうか?魔獣の死骸はないので、死んだ後は分解されるようになっているのかもしれない。これが動いているからこそ、ここの遺跡はまだ稼働しているのだろうな。


 ただこんな方法で魔獣石を回収していたということは、やはり古代文明でも魔獣石を作る技術はなかったって事なんだろう。でも、こんなところでは魔獣はあまり発生しないと思うんだが・・・と部屋の中をよく見てみると、天井に無数の穴が開いていた。

 もしかして地上から魔素を集めているのか?そういえば島のあちこちに穴が開いていたけど、ここにつながっているのかもしれないね。ということは魔素を集める方法はあるのかな?

 部屋に入る通路はないんだが、メンテナンスはどうやっていたんだろうな?魔獣が出るので簡単な入口にはしないと思うけど、下手に触ると稼働しなくなってしまうかもしれないのでこれ以上は手を出さない方がいいだろう。



 一通り部屋の確認がすんだあと、順番に部屋の中を細かく見ていく。時間はかかるがどこに何があるかわからないので一つずつ確認していくしかない。

 机などはそのままだが、機械関係なども含めて仕分けのすんだものは大きな木箱に入れてすべて収納していく。ばらばらだと整理が大変だからね。大きめの木箱を大量に入れていて良かったよ。


 見つかったものの中にいくつか役に立ちそうなものがあった。この遺跡の地図、カード、道しるべの玉だ。


 地図はよくデパートとかにある簡単な案内板のようなもので、遺跡の大まかな配置と説明が書かれているだけなんだが、これでもこの遺跡の全容を把握できた。


 ここはコントロールルームと上級居住室、隣の3つの通路のところは一般居住室となっている。その奥の酒があった倉庫みたいなところは当時から倉庫として使用されていたみたいで、通路の奥にはあの大きさの倉庫が連なってあるようだ。倉庫の奥は室内農園となっているのでサビオニアの遺跡で見たようなところなのかもしれない。

 最初に入ってきた通路の反対側の通路の先はホールになっているようだ。舞台とかまであったのだろうか?あと入ってきた通路が途中で切れていたが、あの通路の先には普通の町のような住居エリアがあったようだ。サビオニアで見たような町みたいで、様々な施設が書かれている。

 その住居エリアからいくつかのエリアに通路が延びているのだが、工場とかいろいろ書かれているが、分からない文字もある。中心に町があって放射線状に職場がある感じかな?


「ここってもともとはかなりの大きさの島だったって事なのかな?」


「島じゃなくて大陸の一部だった可能性もあるわよ。」


「確かにね。この辺り一帯が吹き飛ばされたけど、運良く遺跡の一部が残ったって事なのかな?海底を探したら何か出てくるかもしれないけど、さすがに年月が経ちすぎているのでちょっと厳しいだろうね。」


「そもそも地面ごと吹き飛んでいるから、なにかあっても壊れているわよ。だけどそれだけのことがあったのに一部とは言え、よく残ったわよね。」


「まあ魔素を供給するエリアにもなっていたからかなり頑丈に作っていたのかもしれないし、通路も長いのでもしかしたらここは他のエリアからかなり離れていたのかもしれない。まあ今となってはもう分からないけどね。」



 カードのようなものがあったのでもしかしてと思い、ドアの横のプレートに当ててみると反応した。よかった、これでドアをちゃんと開け閉めできる。鍵のかかった中にその鍵があるというパターンだ。誰か分からないけど、置いておいてくれて良かったよ。

 このカードで他のドアを試してみたところ、一般居住室の残りの2カ所のドアを開けることが出来たが、倉庫とホールの扉の鍵は開かなかった。まあこっちの居住区が開いたので他のところはまだいいかな。そこまで重要なものがあるとは思えないしね。倉庫はちょっと気になるけど・・・。


 道しるべの玉はコントロールルームの机の金属製の箱に入っていたものだ。2つ入っていたんだが、まだ登録されている場所はなかった。そしてありがたいことに道しるべの玉の使い方が書かれたプレートが入っていたのだ。

 登録場所の再登録を考えていたんだが、登録場所は一度登録すると上書きが出来ないものだったようだ。そして登録するのもすぐに出来るものではなく、結構な時間がかかるみたい。これはまた試してみないといけないだろう。転移魔法の検証も一緒にやらないといけないしね。



 一般居住室の方は特に目を引く物はなかったが、金目のものや素材になりそうなものは回収していく。あと劣化して使えなくなったものも回収しておいたので、あとてまとめて燃やすしかないだろうな。

 さすがに部屋の数も多かったので一通り見るだけでも数日かかってしまったのはしょうが無いだろう。そのあとゴミとなったものは夜の間に火魔法ですべて燃やしておいた。前のように焼け跡からなにか見つかると言うことはなかった。



 時間はかかったが、大きなキッチンや大きなお風呂もあって生活自体は快適だ。お風呂の壁には何かが映し出されるようになっていたみたいだが、さすがにその機能は失われていたのが残念だ。おそらく風景などを投影できていたんだろうな。

 単純な魔道具はまだ動くが、細かな配線や基板のようなものは時間とともに劣化して使えなくなっているようなんだよな。サビオニアの遺跡よりはまだ原型は残っているけどね。今のここの文明だと修理は出来ないけど、地球だったら修理とか出来るのかな?ただ魔法も使った技術なのか、地球の技術でも無理そうな気もするな。



 一通りの確認が終わった後、資料関係の確認作業に入る。ただここも途中で知識が失われていったのか、他と同じようなことが書かれている。このため、金属プレートなどに書き写してくれたのだろうか?おかげで今までも読めるものとして残っているのだろう。


 ここの研究内容は古代兵器についてだった。古代兵器を作ったところではないが、どうやら古代兵器の倒し方を研究していたみたい。ただある日古代兵器がすべて破壊されたという記述もあった。他のところで古代兵器に対応するものでも出来たのか?それとも他でも研究していたことが実を結んだんだろうか?

 資料関係は結構な量があったのである程度の内容を見てから簡単に分類して収納していく。本当ならこんな量ではなかったと思うが、金属プレートに写したのでかなり厳選して書いたんだろうな。ありがたいことだ。

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