252. 異世界2267日目 転移魔法の実践

 ある程度調査が終わってきたところで転移魔法の検証を行うことにした。登録するのは後にして、まずは今持っている道しるべの玉を使っての実践だ。


 今持っている道しるべの玉の転移先は10カ所で、1つはここが登録されていて、5つがすでに発見された遺跡、4つが未発見の遺跡だった。

 5つの発見された遺跡の内、3つはホクサイ大陸とナンホウ大陸で自分たちも調査に行ったところで、残りはトウセイ大陸とキクライ大陸に一つずつだ。

 4つの未発見の遺跡のうち2つはモクニクとサビオニアで調査をしている。まあモクニク国では遺跡ごと消滅していたけどね。残りの2つは海の上なので、この島のことを考えるとすでに無くなっている可能性が高い。

 知らないところにいきなり行くのも何があるか分からないから怖いし、転移先の状態も分からないのにいきなり転移するような馬鹿なまねはしない方がいいだろう。



 まずは転移先と思われる場所のすぐ近くに移動してから道しるべの玉に魔力を込めて出てきた転移先を選んでから魔力を込めていく。すぐに転移できるというわけではないみたいだが、しばらくすると発動したみたいで目の前の視界が若干ずれた。


「転移した?」


 確かに場所が少しずれているけど、特になにか身体に違和感があったわけでもないので自分でもよく分からない。


「身体が消えたと思ったらすぐ横に現れたわよ。時間的なずれはなかった感じだったわね。かき消えていくって言うものでなくて瞬間移動という感じね。」


「ということはうまく転移できたって事なのかな?とりあえずは成功かな?距離が遠くなった場合に時間的なずれがでるのかどうかは分からないけど、確かめようもないよね。」


「まあそれはそうよね。」


 続いて少し離れたところから試してみるが、魔力を貯める時間はほとんど変わらなかった。使う回数に制限はないようだが、魔力を貯めるに時間がかかるので連続使用というのは無理だな。距離が離れた場合にどのくらいかかるのかも気になるところだ。


 ジェンも試してみると転移できた。端から見るとほんとに一瞬で消えるのでかなり怖いな。ただ転移できるようになっても数秒のタイムラグがあるので、転移したいと思った瞬間に転移できるわけではないようだ。

 同時に発動すると、若干でも早いほうが優先されるようだ。完全に同時だとなにかの優先順位が働くと思うが、二人が同時に出現して重なってしまうと言うことはないだろう。


 それから手をつないでやってみたが、魔力の許容量不足ということで転移が出来なかった。前に王家の遺跡で転移できる魔力容量制限があったので、レベルとかによって一度に運べる量が決まっているのかもしれないな。

 ガイド本にはレベル4で複数転移が可能となると書いているからね。魔力容量がどのように変わっていくのかは正直不明だが、自分の魔力量を上げることが出来ればその分転移できる容量も増えるのかな?


 ただ身につけていたり持っているものについての扱いがよく分からない。密着していないといけないわけでもなく、手に持っていると一緒に転移する。それぞれのものに固有の魔力量があるのだろうか?

 収納魔法のものは大丈夫なんだが、収納バッグはだめだった。収納バッグはかなり中身を減らすと転移できたが、手に持てる程度のものなので収納バッグの意味が無い。



 続いて移動先にものを置いてみたところ、転移できなかった。半分引っかかる感じにしてもできない。水がある場合もできない。空気の場合のみなのかな?どうやって判断するのか分からないな。

 試しに転移先に水を置いて、水の中から転移してみると転移できた。転移前と後である程度同じ状態でないと転移できないと言うことなのかな?ということはいきなり宇宙とか石の中とかいうことはないのかもしれないね。


 身体の一部を水につけていろいろ試した結果、身体の9割くらいが接している同じ空間には転移できる感じだった。多少の物質の差は誤差レベルと言うことだろう。しかし転移元と転移先の状態を判断するというのもなかなかすごいな。

 あと、何か物を置いたときには移動する体積の1割以下だと転移できるようだ。そのときには元々おいていたものが横に動かされるので重なるわけではない。

 金属などはだめだが、水や木材などは転移できたので重量とかが影響しているのだろうか?物質がもつ嵩密度ではなく、真密度が影響しているのかもしれない。その境がどのようなものなのかまでは正確には分からないが、感じ的に水より軽いものであれば行けるイメージかな?


 転移できない場合は転移先の周りの状態が転移元の周りの状態と違っているか、なにかものがあると言うことだろう。ただあくまで転移先の小さなエリアの問題であって、その周辺の状況は全く不明だ。なので転移したら周りが魔獣だらけと言うこともあるし、密閉された空間になっている場合もある。

 おそらくその危険性を少しでも排除するため、ちょっと離れたところに転移場所を指定して管理していたのだろう。他の転移場所も同じような感じかもしれないな。北の遺跡も岩の上にあったけど、おそらくあそこに建物を作って管理していたのかもしれない。


 いろいろと試したけど、結局よく分からない事も多い。魔法自体が科学的に考えておかしな現象なので解明は無理なのかもしれないし、これ以上の検証をしてもしょうが無いだろう。



 あと魔素はこの道しるべの玉にもためることが出来るようだ。ある程度この玉にためておけばすぐに使うことが出来ると言うことだろう。ただきっちりと把握は出来ないが、通常魔力を込めるよりも多くためないといけない感じがする。遠くの場合は一気に魔力をためることが出来ないから普段から魔力をためておかないといけないだろうな。

 ただ問題なのは魔力をためても収納バッグに入れると放出されてしまうと言うことだ。結局はこれは持ち歩くしかないと言うことだろう。




 続いて今回手に入れた道しるべの玉の登録について考えてみた。登録箇所は8カ所なのでどこに登録するかをきちんと決めておかないといけない。この島はすでに登録したものがあるから一つだけに登録すればいいけど、とりあえずはサクラ、オカニウム、この島というところか?あとアルモニアやハクセンやナンホウ大陸のどこかに登録する感じか?

 どっちにしろ登録する場所は間違いなく転移しても大丈夫なところにする必要があるのできっちりと決めなければまずいだろう。この島はおそらく大丈夫だとは思うけど、他の町は郊外にしないとまずいかな?家とかがあればいいけど、管理する人も必要になるしちょっと無理だな。


 あとは魔素を貯めるのにどのくらい時間がかかるかだ。まあ持ち歩いて貯めていけばいいだけなんだけど、それだとよく分からないので今度オカニウムに行ったときに試してみようかな。それによってどのくらい使えるものかが分かるからな。



~ジェンSide~

 ヤーマンに戻ってきてからいろいろな人に会って、すぐに島の遺跡へ向かうことになった。島に渡るために船を購入したけど、ちょうどいい物が手には入って良かったわ。地球にいたときと同じくらい豪華な設備だったのよね。

 だけど目的は島への移動だったから、折角の船の機能は使うこともなく到着してしまったのよね。折角だから帰りは少し船上生活を楽しみながら戻りたいものだわ。



 島の遺跡の機能が残っていたのはよかったわ。転移が出来るようになればほんとにここに住むのも一つかもしれないわよね。どのくらいの時間で転移できるかにもよるけどね。



 さっそく扉の解錠に取りかかったけど、本当に大変だったわ。感情が抑えられなくなってしまって途中で意識がなくなってしまうことも何度もあったものね。大好きだけど、さすがに限界だと思ったわ。扉が開いてやっと落ち着いたんだけど、あのあともしばらくは魔力の注入をすることになったのよねえ。ふふふ・・・。



 転移の魔法は魔力を貯めるのに少し時間がかかりそうなので気軽には使えない可能性があるのはちょっと残念だった。とりあえず試してみてからどのくらい使えるものかを確認する必要があるわよね。



~あとがき~

 今回も転移についていろいろと考えた内容でした。転移が日常生活の一部として使えるものとした場合の安全性や制限を考えてこのような設定となりました。

 ただどうやって転移先の状況を確認しているのか、一緒に転移する制約はどうなっているのかなど、解明できていません。もともと魔法というもの自体が科学では説明できない現象なので科学的な考えでは解明できないものなんですけどね。

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