241. 異世界1871日目 再びアルモニアへ
ハルアの町を出発してから国境の町タブロムまでやって来た。すぐにアルモニアに入国するつもりだったが、ハクセンも最後だし、紹介状のこともあるので言われていた宿へと向かう。
ここも予想通りの高級宿で、紹介状を出すとすぐに総責任者という肩書きの人がやって来て、そのあとオーナーもやって来た。そして案内された部屋は予想通り破格の部屋だった。もう割り切るしかないよね。これに慣れてしまったら普通の宿とかに泊まれなくなってしまうよ。
ここでは3泊だけにしたが、宿のオーナーから何度ももう少し宿泊してはどうかと言われてしまった。短い滞在の理由はちゃんと連絡すると言うことでやっと引き下がってくれたけどね。
ここでも町の観光と、食材の購入をしていく。さすがに季節的に食材の種類は少ないが、全くないというわけでもないからね。今あるお金のことを考えると多少高くても誤差レベルになってしまうが、ちゃんと引き締めるところは引き締めないといけないからね。
3日目の朝早くに出発したが、今回もホテルの従業員総出という感じでお見送りされるという異様な風景になってしまった。同じ時刻に出発する人も多かったのでかなり目立ってしまったよ。端から見たら「なんであんな若造にへりくだっているんだろう?」という感じだろうね。
朝一でアルモニアに入国してからすぐに町を出る。入国のゲートにはかなりの列が出来ていたが、貴族用のゲートが通れたので助かった。いずれはこういうものもなくなるのかねえ?
今回も折角だからと温泉の町サイノレアに寄っていく。変に気を遣われるのもいやなのでちょっと豪華な部屋をとってチェックインしたんだが、すぐに例の3人が部屋にやって来た。
「なぜ声をかけてくれなかったのですか?」
3人ともちょっと不満そうな顔で言ってきた。
「いやいや、今回は特に珍しいお酒はありませんよ。」
「いえそういう訳ではありませんよ。前のことを考えてもまだお礼をしたりないくらいなのですから。」
「そう言われても前のことで十分満足していますよ。なので今回はちゃんと部屋代は払わせていただきますので。」
「そうですか・・・。
そうだ。お二人が来ることがあればこちらの用意したお酒の試飲会でもしようと話をしていたのですよ。いかがですか?」
「本当ですか!!」
ジェンが食いついている。
「ええ。5泊されるようですので、3日後の夕方からでいかがでしょうか?いろいろなお酒に合うようにつまみもいろいろ準備しますので心配しないでください。」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね。」
やっぱり気が引けると言うことで食事内容はかなり豪華になったが、これは普通にいただくことにした。おかげでここにいる間はかなりだれた生活になってしまったけどしょうがないかな。部屋付きの温泉に入っているとねえ・・・。
「前に泊まったときは私が裸で入ってきたらかなり緊張していたわよね。」
「当たり前だろ。水着でもかなりどきどきしていたのにまさか裸で入ってくるとは思わなかったよ。あのときは自制するのが大変だったんだからな。」
「ふふふ、そうね。でももう自制しなくていいからね・・・。」
「いったな・・・。」
3日後の夕方から3人とも休みを取ったらしく、一緒にお酒を飲むようだ。いいのだろうか?料理は大丈夫なのかと確認したら、すでに大方の準備は終わらせたのであとは弟子達に任せて大丈夫らしい。
「いくつか用意したのですが、残念ながら飲ませたいと思っていたお酒で手に入らなかったものがありました。サビオニアの情勢の関係なんですけどね。」
「サビオニアのお酒だったら有名どころは買ってきていますよ。前に教えてもらったものはだいたいあります。」
「ええっ!?サビオニアに行かれていたんですか?」
「ええ、革命の前に購入したものもありますし、そのあとでもいろいろと融通してくれた人がいたので助かりました。特におすすめというお酒もありますので少し出しましょうか?」
「おお、ありがとうございます。もうしばらくしたら流通も始まるとは思うのですが、いくつかのお酒はもう造られなくなったと聞いていますよ。」
ジェンはあの国でもかなり酒を買いあさっていたからなあ。たしかに貴族が法外なお金をかけて作っていたようなものもあったから、さすがに国が変わったらあれを作れないだろうな。あのとき買っていて正解だったのかな?
あのときハクさんに言って集めてもらっていたもんなあ。押収したお酒の一部を安く譲ってくれたものもあったようだし、今の話だと元値は半端なく高かったのかもしれないね。
いろいろとお酒を試飲しながら感想を言い合っている。ジェンもかなり楽しそうだが、宿の三人もかなりテンションが高い。本当にお酒が好きなんだろうな。夕方から始まったのに、夜遅くまでやっていたからね。まあ自分も付き合ったけど、酒談義にはあまり関わらなかったよ。
~ハスカルSide~
例の二人がやって来たのに特に何も言われなかったので部屋に押しかけてしまった。受付の者が気を遣って連絡してくれたので助かった。もう十分にお返しはしてもらったと言われたのでそこは引き下がったが、食事などについては十分サービスさせてもらった。
前にやろうと話していた試飲会は楽しかった。ジェニファーさんはナンホウ大陸でいろいろとお酒を仕入れてきたようだが、そのときに私の肩書きの名刺が役に立ったとお礼を言われてしまった。
サビオニアの名酒は今回の革命でかなりの数が生産不可能となったと聞いていた。採算度外視のお酒もあったし、今回の革命の戦闘で設備や農園がやられてしまったこともあるようだ。
ジェニファーさんは革命前にこれらのお酒の大半をかなりの量仕入れていたらしく、その中からほしいお酒を1本ずつ譲ってくれた。色を付けて支払いをしたが、今後はさらに値段が上がって行くだろうな。
ただこんなに簡単に渡してくるなんて、いったいどのくらい買い込んでいたのだろうな。それ以前にそんなに流通しているわけでもなかったと思うのだが、よく手に入れたものだ。しかもかなりの年代物まで持っていたからな。他の二人もかなり驚いていたくらいだ。
おかげでいろいろと楽しんでもらう試飲会が、こちらが楽しむ試飲会になってしまった。接待するつもりだったのに接待されたような感じだ。なのでこちらからもジェンさんの持っていない秘蔵のお酒を渡したが、かなり喜んでもらえて良かったよ。
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