242. 異世界1893日目 幸せになった二人
温泉を堪能してからサイノレアを出発した後、途中のクリアミントの町は少しだけお店を覗いてすぐに北上する。
以前はこっち方面の道路は工事中だったが、今はきれいに整備されていて走りやすくなっていたこともあり、予定通りにマイムシの町に到着できた。
ミルファーさんとスイートさんの二人は元気にしているだろうか?
自分たちが結婚するときに連絡はしていたんだが、さすがに来るには日程的に厳しかったみたいで、参加できないことのお詫びと近況について連絡はもらっていた。あれからも年月が経っているので今はどうしているのかなあ?
「まだ前と同じところに住んでいるかなあ?」
「ミルファーさんに彼氏が出来たという話だったから、もしかしたら結婚している可能性もあるけど、どちらかがそのまま住んでいる可能性は高いと思うわ。家賃とか考えてもかなりお得だったでしょ?」
「まあ普通じゃ考えられない価格と言っていたし、なかなか入居できないという話だったからね。
たしかスイートさんは前に泊まっていた宿のマルミニアで働いているはずだから宿の予約ついでに聞いてみよう。」
マルミニアに行って宿の予約をする。
「こんにちは。部屋を取りたいのですが空いていますか?」
「はい。・・・あれ?前にうちに泊まったことありませんか?」
「ええ、かなり前になりますけど、1ヶ月ほど滞在していましたよ。よく覚えていますね。」
「まあこれも仕事のうちですからね。部屋は一つでいいですか?」
「はい、お願いします。」
宿の予約を済ませたあと、スイートさんのことを聞いてみる。
「ここで働いていたスイートさんはまだいらっしゃいますか?」
「スイート?ああ、あなたたちは確か知り合いでしたね。もちろん働いていますよ。ただ今日はもう終わって家に戻っているはずですし、明日は休みを取っていたはずですよ。」
「申し訳ありませんが、まだ前と同じところに住んでいるかだけでも教えてもらえませんか?ちょっと訪ねてみようと思っているんです。」
「ああ、あなた達なら大丈夫でしょう。かなりお世話になったと言うことは聞いていますからね。前のところから移ったとは聞いていませんね。公営の集合住宅でしょう?あそこに住めるとは運がいいですよね。」
「ありがとうございます。」
宿のチェックインを済ませてから集合住宅を訪ねる。
「こんにちは。ジュンイチとジェニファーと言いますが、ミルファーさんとスイートさんのお宅でしょうか?」
表から声をかけると中から返事があった。
「えっ?えっ?ジュンイチさんとジェニファーさん?」
そう声が聞こえるとすぐにドアが開いてスイートさんがでてきた。
「ど、どうしたんですか?えっ?本物よね?」
「ええ、ちょっとこっちの国に来たのでどうしているかと思って寄らせてもらいました。時間は大丈夫ですか?」
「ええ、どうぞ入って。あ、夕食はもうとりましたか?」
「いえ、まだですけど、今日はまだここに住んでいるか確認にきただけですのですぐに帰りますよ。」
「いえいえ、折角なので夕食を一緒にどうですか?明日が休みなので今日はミルファー達が遊びに来る予定なのよ。なので二人がいると喜ぶと思うの。」
そう言われたので結局夕食を同伴することになった。
「ミルファーさんはもう一緒に住んでいないんですか?」
「ええ、実は、」
話しかけたところで呼び鈴が鳴ったのでスイートさんが出迎えに行くと、ミルファーさんの声が聞こえてきた。
「お邪魔しますね。」
「ミルファー、今日は驚くようなお客さんが来てるわよ。折角だから夕食に誘ってるから一緒に食べましょう。」
中に入ってきたミルファーさんはかなりの驚きの表情で自分たちを見ていた。
「ジュンイチさん!ジェニファーさん!!」
「お久しぶりです。元気にしていましたか?」
「ええ、ええ。その節は本当に、本当にお世話になりました。」
挨拶をしているミルファーさんの隣に見知らぬ男性がいるのが気になるんだが・・・。
「あ、すっかり話すことを忘れていました。実は私1年ほど前に結婚したの。それで今はこの近くに建った集合住宅に住んでいるんですよ。
紹介しますね。夫のカルネです。」
「初めましてカルネと言います。お二人のことは妻から聞いています。本当にお世話になったようで、ありがとうございます。二人のおかげでミルファーと出会えたと思っています。」
どうやらカサス商会で働き始めてしばらくした頃に同僚のカルネさんと付き合いだしたらしい。2年ほどしてから結婚することになり、それをきっかけに部屋を出ることになったようだ。
結婚式はカサス商会のモニターとしてかなり安くすることができたらしい。もしかしたら支店長が自分たちの知り合いと言うことで気を遣ってくれたのかな?さらに役場に相談に行ったところ、新しく出来た集合住宅の部屋の抽選に当たってすぐに入居することが出来たそうだ。ジョニーファンさんの紹介状がまだ効力を発揮したのかもしれないな。
この日は5人で宴会のようになり、今までのお互いの話で盛り上がった。スイートさんにもアプローチしてくる男性はいるらしいがまだちょっと男性不信もあり、付き合うまでにはなっていないようだ。ミルファーさんの話だと付き合うのも時間の問題と言うことのようだけどね。
カルネさんはこの町に来た経緯をすでに聞いていたらしく、それを知った上で受け入れてくれたようだ。幸せそうで良かったよ。
翌日はスイートさんが町を案内してくれたのでいろいろと見て回ることになった。前いた時よりも町の広さが二倍以上になっている感じだった。すでに王都までの道路も完成しているようなのでかなり交通量も増えてきているらしい。
今は北と西の魔獣狩りが盛んに行われていて、安全エリアの拡張に努めているらしい。結局いろいろと話もあったせいでこの町に3泊してくことになってしまったよ。
~ミルファーSide~
今日は懐かしい人に会いました。まだ数年なのだけど、もっと前だったような気もします。きっとこの町に来てから今までと違った生活になったのが大きいのでしょう。毎日が刺激でいっぱいでしたからね。
この町に住み始めてしばらくしてからあの二人から結婚式の案内状が届きました。やっと結婚すると分かってほっとしたものです。さすがに日程的に厳しいこともあって手紙を出すだけになりましたが、そのあと丁寧なお礼が届きました。
まだ少し人間不信という感じで、同僚とのつきあいは最低限にしていましたが、同僚の男性からアプローチを受けました。亡くなった夫のこともあり、最初は断っていたのですが、何度も誘ってくるので少し付き合うことになりました。前の夫のことも気にかけてくれる優しい人でした。
未亡人と言うことはすでに話していましたが、盗賊にさらわれたことは話せませんでした。本当のことを話してしまったらまたこの町で住めなくなってしまうかもしれない。そう考えると何も言えませんでした。
そう思いながらも好意を持ち始めると、このまま黙って付き合うことに悩みました。勇気を出してすべてを話しました。もちろんスイートまで巻き込むわけにもいきませんので、自分だけのこととして話しました。
かなり怖かったのですが、彼は受け入れてくれてそのまま抱いてくれました。そのあとも彼は他の人に話すこともなく、変わらない態度で、それ以上に優しい態度で付き合ってくれました。
1年ほど経った頃に結婚することになりましたが、最近はやっている結婚式を行うことになりました。支店長の好意で結婚式のモニターという扱いにしていただけたのでかなり安く式を挙げることが出来ました。
普通は社員でもなかなかこのようなことはしてもらえないようですが、ちょうどいろいろ試したいことがあったからと説明されました。同僚からもうらやましがられました。
さらに新居をどうしようかと考えていて、ちょうどできあがった集合住宅に申し込みをすると運良く当選できました。ほんとに運が良かったのでしょうか?やはり役場の人が気を遣ってくれたのでしょうか?
二人の話を聞くと、なんとナンホウ大陸まで行ってきたらしく驚くような話ばかりでした。そのあとハクセン経由でこっちまで来たみたいで、私たちにとってはまったく知らない世界の話のようでした。
二人は前会ったとき以上に仲が良くてとてもうらやましく思いました。スイートが町を案内するようでしたが、せっかくなので私たちも町を案内しようと休暇申請すると、なんと夫も一緒に休みを取ることが出来ました。なぜか支店長からも「しっかり友人をもてなしてね。」と声をかけられました。
スイートが先に案内していたので行っていないところを連れて行きましたが、こうやって改めて案内すると町が大きくなっていることを実感できました。
この町に来て本当に良かったと思います。あのとき二人の誘いに乗っていなければこんな生活はなかったでしょう。勝手なことだとは思いますが、幸せになることが亡くなった前の夫への供養になると思っています。
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