179. 異世界1151日目 狩りをしてみる

 朝早く出発して狩り場へと向かう。さすがに日帰りのエリアでは魔獣の階位が低すぎるので向かうのは車で1日くらい走ったところになる。移動する間も目についた魔獣を倒していくが、解体は後回しにして収納だけやっていくことにする。



 目標となったのは町の東側の山の麓付近で、このあたりは上階位~良階位の魔獣が多く出没する。到着したときには大分時間も遅くなっていたのでこの日の狩りは断念するしかなかった。まあ普通だったら1日だと到着できないところだからね。

 日が落ちる前に良さそうな場所を探してから拠点を出す。気温は高いんだが拠点では空調管理もしているので問題は無い。さすがにあまり寝られないまま狩りをするのは危なすぎるからね。


 今日の夕食は購入しておいたちょっとスパイスの利いた鶏肉だ。タンドリーチキンという感じのものだったのでせっかくなので保存しておいたカレーと一緒にいただくことにした。温かいまま保管できるようになればいいのになあ・・・。ご飯は炊くのが面倒だったのでナンのようなパンと一緒に食べることにした。


 ホクサイ大陸ではなかなか手に入らない鶏肉なんだが、こっちでは結構普通に手に入るみたい。今日は見かけなかったが、今回倒すこともできるだろう。

 鳥の解体はやったことがないのでうまくできるようになるまでは時間がかかりそうだが、やり方だけは確認してきているので大丈夫だろう。


 狩りに出ているときは夜の生活は自重している。いくら拠点を作っているとは言え、いきなり襲われる危険もあるからね。まあ当たり前と言えば当たり前のことなんだけど、小説の馬鹿カップルがそういうことをしているというのを読んだことがあるが、襲われそうな場所でやるとか死に直結するのにあり得ないだろう。




 翌朝はパンとソーセージと野菜のスープ、目玉焼きなどで簡単に朝食を済ませてから移動を開始する。索敵を展開すると、結構な魔物の気配を感じることができた。いるのは並~上階位くらいだが、森の奥に進めば良階位の魔獣もいそうな感じだ。



 索敵を展開して周りを注意しながら森の中を進んでいく。牙兎や大狼や魔猪など今まで見かけた魔獣もいるんだが、この辺りはさすがに倒し慣れているので油断しなければ大丈夫だ。

 上階位下位までは特に問題なく狩ることができるが、上階位の中位からは油断しては危険だ。まあ弱い魔獣でも油断すると危ないんだけどね。近くに同族がいるとまとめて襲ってきたりもするので索敵で周りも注意する必要がある。


 今回初めて魔鳥という魔獣の鳥を発見した。飛べない鳥らしいが、足が速く、攻撃力もかなり高いようだ。形はエミューみたいで体長は800ヤルドくらいあり、首と足が体長の半分以上を占めている。全身羽毛に覆われていて足は走るためかかなり肉付きがいい。

 魔鳥は並階位中位レベルなので特に問題は無いが、結構な数がいるので集団でくると怖いものがある。ただ、かなわないと思ったら逃げようとするんだが、魔法があれば大丈夫だしね。ただ弓にしろ魔法にしろ遠距離攻撃ができないと狩るのは大変らしい。


 あと森の中ではないが、森の外れで大魔鳥にも遭遇した。こっちは上階位中位の魔物になるんだが、大きさが魔鳥の2倍くらいあので結構怖い。エミューそのものと言った風貌で生えている羽も結構な強度があるのでなかなか刃が通らない。

 こっちもある程度ダメージを与えたと思ったら逃げだそうとしたので土魔法で足場を作ったら慌てていたせいか引っかかってこけてくれたのであっさりととどめを刺すことができた。



 日が暮れる前に拠点に戻ってからまずは魔獣の解体を済ませる。ほとんどは解体魔法でで解体できるんだが、魔鳥と大魔鳥は自分でやらなければならない。

 魔鳥は肉しか使えるものはないので血抜きをした後は羽をむしってから火魔法で表面を焼いておく。そのあとは手順に沿って解体して行くが、思ったよりも肉の量は少なかった。首から頭の部分は食べられないし、体にもそんなに肉が付いているわけではない。肉の大半はもものあたりである。

 大魔鳥は手順は一緒なんだが、大きいので結構大変だった。本当は血抜きだけでも大変なんだろうが、水魔法があったので良かったよ。こっちは羽が一応買い取りしてくれるところもあるようだが、手間を考えると面倒なので肉のみを切り分けることにした。

 羽が付いたままでも解体できればいいんだけど、さすがにそれは無理がある。解体魔法を覚えてもナイフなどでの解体を基本としたものなので、羽などの前処理はしなければならない。羽がついたまま処理できれば解体魔法でもできるかもしれないが今のところは諦めておいたほうが無難だろう。



 夕食はさっそく解体した鶏肉を使って唐揚げを造ってみる。ニンニクとショウガを入れた出汁に簡単につけ込んでからあげていくが、なかなかいい感じに仕上がった。中津のからあげが懐かしい・・・。


「鶏肉はなかなかいいね。ホクサイ大陸では手に入らなかったけど、やっぱり蛇肉とは違うよね。」


「そうね、やっぱりお肉の脂がとても美味しいわ。これは確保しておかないといけないわね。」


「収納魔法もあるからある程度の量は売らずに持っておいていいよね。自分もやっと次元魔法のレベルが上がってかなりの収納ができるようになったしね。」


 こっちの大陸に来る前に収納魔法のレベルも上がって収納の容量が一気に増えたのでかなり余裕がある状態となっていたのである。収納バッグの必要がなくなったのでどうするか考えているところだ。売るならオークションの方がいいからね。


「魔鳥は大魔鳥よりもあっさりしているけど、料理によって使い分ける感じなのかな?重さあたりの値段はあまり変わらなかったよね?」


「確かそうだったはずよ。とれる肉の量が倍くらいだから大魔鳥の方が買取額は高い印象だけど、単価は変わらなかったわね。」


 初めての料理を堪能しながら食事を終える。このあとは魔法の訓練などをしてから眠りにつく。狩りに出ても生活サイクルは変えないのが基本だ。まあ夜の見張りがない時点で普通ではないかもしれないけどね。




 翌日からも同じように狩りを続けて10日ほどしてから撤収することにした。今回初めて倒した魔獣は魔鳥と大魔鳥の2種だけだったんだが、こちらは自動で解体できるようになった。もちろん羽の前処理はしないといけないけどね。

 かなりの肉を確保できたのでしばらく鶏肉には困らないだろう。拠点では水炊きとかチキン南蛮とかも造ってみたけどなかなか良かったからね。



 遠征から戻ってきていらない素材を買取に出す。通常のお店は正規の金額だが、役場で買い取りする良階位以上の魔獣については買取額は20%アップしてくれた。なんかずるをしているような感じだが、せっかくもらえるものなので素直に受け取ることにした。ここで何か言っても何も意味が無いからね。

 良階位の魔獣はホクサイ大陸でも狩っていた巨猪、巨角牛位だったが、この素材は結構なお金になるから結構美味しいんだよね。お肉も美味しいし。1匹あたり8千~1万ドールだが、20%アップなのでかなりの上乗せになる。


 革などは防具の補修用に使いたいんだが、革の前加工をしなければならないのでそこまで手が回っていない状態だ。このため補修に使うための素材は前処理を行ったものを購入している状態である。

 ある程度魔法を使いながらなので地球でやるよりも手順は簡単らしいが、やはり結構な道具がいるからね。このため皮の加工は専門でやっているところが多い。ゲームみたいで皮を手に入れたらそのまま使えるとかだったらいいのになあ。



 上乗せで金額ももらえたのでこの日はちょっと高めの宿に泊まることにした。貴族用は値段が跳ね上がるので、平民用の高級宿という感じのところだが、一泊2000ドールという値段だ。

 シルバーフローとかと同じ感じのところで、建物は5階建てなんだがエレベーターも付いているので階段を上らなくていいのはありがたい。

 夕食は町の中で定食のようなものを食べた。いろいろな料理が小さめのお皿に色々と載っているのでこっちの食べ物を色々と堪能できる。港町なので魚を使ったものが多いが、味付けは特に辛いというわけではない。ちょっと変わった香辛料を使っているものもあったけどね。

 夕食を終えてから少し買い物をしてから宿に戻る。こっちはあまりお風呂という風習がないみたいでお風呂がある宿はかなり高いところしかなかったので今回は諦めている。気分的なものなんだがシャワーを浴びてから久しぶりに夜遅くまで頑張った。さすがに治癒魔法を使うまではしなかったけどね。


~魔獣紹介~

魔鳥:

並階位中位の魔獣。森や草原などに生息している鳥形の魔獣で、体長800ヤルドくらいの大きさで数匹~10数匹の群れを造って生活している。

飛ぶことはできないが、その分足が発達しており、かなりの速度で走ることができる。長い首からのくちばしでの攻撃は鋭く、目などをやられてしまったという報告があるので注意。

かなわないとみると全速力で逃げ出してしまうため、一気に仕留めるか、魔法や弓などの遠距離攻撃が有効。

素材としての買い取り対象は肉の部分となるが、特にももの部分の肉が高価。


大魔鳥:

上階位中位の魔獣。草原に生息している鳥形の魔獣で、身長は1500~2000ヤルドくらいの大きさとなる。集団を造ることは稀で、通常は1~2匹で生息している。

飛ぶことはできないが、その分足が発達しており、かなりの速度で走ることができる。全身を覆われた羽は強度があり、魔法も効きにくくなっている。

かなわないとみると全速力で逃げ出してしまうため、一気に仕留めるか、魔法や弓などの遠距離攻撃が有効。

素材としての買い取り対象は肉の部分となるが、特にももの部分の肉は高価となる。羽も買取対象となることがあるが、常に買い取り対象ではないので注意が必要。また買取をする場合もかなり程度のいいもののみが対象となる。

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