161. 異世界807日目 良階位に挑戦

 住むところを決めたのはいいんだが、やっぱりこのまま何もしないわけにもいかないだろうと言うことで結局はいろいろと勉強と鍛錬をしていくことにした。今後どうなるにしてもいろいろと能力を高めておいて損はないからね。


 前から通っているハルト道場で鍛錬をしたり、訓練場や郊外に出てから魔法の訓練をしたり、錬金、調合、鍛冶などの技術力アップに励んだ。

 鍛冶場の建物は自分たちで作ろうかと思ったけど、結局は倉庫のような建物を購入して設置することにした。やっぱり荷物置きとしてはいいが、部屋という感じで設置するのは良くないという話を聞いたからね。



 ただせっかく付き合いだしたので5日に1日は休養日を作ってデートをすることにした。食事もできるだけ自炊でやっていこうと言うことになり、一緒に買い物に行って食事を作ったりした。うーん、新婚さんみたいだな。



 しばらく狩りには出ないので冒険者登録を休止しようかと思っていたんだが、この間の緊急の特別依頼を受けていたので依頼達成の期間が延長されていたようだ。通常3ヶ月以内に何かしらの依頼や討伐を達成しなければならないが6ヶ月以内でいいらしい。それだったらまだいいかと休止手続きはやめておいた。




 訓練には時々クリスさんたちが付き合ってくれていたんだが、2ヶ月ほどすると良階位昇格試験に合格できるくらいではないかと言われる。もちろん実力が十分というわけではないが、魔法の威力が高いので、武術については若干低くても合格は可能だろうという話だ。


 役場に行って試験日を確認してみると一番早い試験は10日後の6/21に行われるようなのでここで受けることにした。ちなみに良階位への昇格試験はサクラでは年に3回行われており、今年最後の試験は9月に行われるようだ。

 試験の1日目は上階位の時と変わらなくて学識と実技の試験らしいが、2日目からの行動試験は当日発表されるということだった。その時々によって試験内容は変わることもあるようだが、今年はどんなものだろうなあ・・・。最長で3日ほどかかるらしい。


 試験日までは主に武術の訓練を中心に行い、さらに学力テストの対策も行った。とりあえずやれることはやって試験の当日を迎えることとなった。




 ちなみにスレインさんたちはクリスさんが用意していた邸宅に移ったらしい。貴族や金持ちの人達が多く住むエリアの立派な邸宅だ。まあ小説とかに出てくる馬鹿でっかい貴族の屋敷というわけではないんだが、御殿というレベルはあった。

 時々家にも招待してもらったり、うちにも遊びに来てもらったりと交流は続いている。一緒に冒険業をするにはレベル的な問題もあるので行っていないが、いい感じに付き合いができていると思っている。

 スレインさんたちが住んでいた家は売ってしまったようだ。どうやら元王子と結婚した人が住んでいた縁起の良い建物と言うことですぐに買い手が見つかったらしい。警備をしていたジャニーさんとルリアンさんはどうなったのかと思ったんだが、ちゃっかりと新しい家の警備に雇われたようである。



 スレインさんたちもクリスさんのやっている仕事の手伝いをやっているようなんだが、どうもイントさんは事務的な仕事が嫌いらしく、いつの間にか姿が消えているらしい。

 他にもやはり王爵としての付き合いや行事があるみたいで、そのときはかなり大変そうだった。まあ自分たちも一応貴族ではあるけど、あくまで褒章による貴族相当というだけなので参加しなくていいのはありがたい。ちなみにこれはアルドさんとデルタさんが苦手としているらしい。昔はそれが普通だったからまだ知識としてはあるみたいだけど、やはり一度離れてしまうと・・・という事のようだ。

 時々ガーデンパーティーのようなことも行っているのでそれに招待されることはあるが、招待してくれるときは気の置けないメンバーだけだったので大分楽だった。ただ国王陛下や王妃殿下が来ているときもあったのでちょっと困ってしまったけどね。そんな身内のパーティーに声をかけないでよ。




 試験の当日は早めに起きてから体をほぐしておく。役場の訓練場に行くと、今日の試験を受ける人達が集まっていた。何人か見かけたことのある冒険者がいたんだが、その中で冒険者の一団に目がとまる。


「あれっ?あの人達ってアルモニアで会ったレイスマントの狼というパーティーだったよね?」


「え?どの人?ああ、あの人達ね。確かにそんな感じね。声をかけてみる?」


 ジェンもなんとなく覚えていたみたいで間違いなさそうだ。


「「こんにちは。」」


「ああ、こんにちは?・・・あれ?前にどこかで会ったことがある?」


「ええ、トレラムの町で情報交換をしたアースのジュンイチとジェニファーです。お久しぶりです。まさかこんなところで会うとは思いませんでしたよ。あれからずっとヤーマンで活動していたんですか?」


「ああ、あそこで話した二人か。思い出したよ。

 やはりこっちは温かいからな。冬の間はルイサレムまで行っていたんだよ。いろいろ情報が役に立ったよ。ありがとうな。」


 話を聞くと、あのあと南下していってサクラまできたけど、やはりこの町での活動は厳しかったみたいで南東方向にあるムライオカの町で主に活動していたらしい。

 ある程度経験も積めたので国に戻るつもりだったらしいが、腕試しもかねてここで良階位の試験を受けていくことになったようだ。ただ受けるのはカースさんとヤルマンさんの二人だけで、他の二人は今回はパスするようだ。


「もしかして二人も良階位の試験を受けるのか?」


「ええ、なんとか実績もたまったのと、訓練をしてもらっている人達になんとか受かる実力もついたと言われたので受けることにしたんですよ。」


「その年でもう実績をためたのはすごいな。」


「こう見えても結構いろいろと経験を積んできましたからね。」


「そうか、お互いに頑張ろう。」


 他の受験者とも話をしてから開始時間を待つ。



~役場の受付Side~

 今回アースの二人が良階位への試験を受けることにしたらしい。もちろん前例がないわけではないのだけれど、かなり速いペースであることには違いない。

 もともと武勇や魔法に優れた冒険者が高階位の魔獣を狩って一気に実績ポイントを稼ぐことがあるのだけど、この二人の場合は特別依頼の実績ポイントが大きいというのがすごいところね。しかもお飾りの護衛依頼とかではなくてかなり難易度の高そうな特別依頼だからね。


 もちろん合格したわけではないのでまだ良階位になると決まったわけではないのだけれど、合格してほしいものだわ。二人のことはかなり評判もよく、そのせいで妬まれていることもあるけど、多くの人は好意的に見ている。王族との関係もあり、いまは二つの国から爵位をもらっているという。しかも一つはハクセン国である。まだ19歳でこの関係はすごいことだ。


 面白いのは二人の関係なのよね。二人の親密ぶりからどう考えても恋人同士か夫婦なのだと思っていたのにそうじゃないと聞いたときは驚いたわ。二人は無意識なのかもしれないけど、あれで付き合っていないと言って誰が信じるのかしらね。

 まあ、最近はほんとに付き合いだしたみたいで、今までと違ってなぜか初々しさを感じるのが面白いわね。

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