162. 異世界870日目 良階位の昇格試験

 まずは筆記試験があったんだが、これはまあ問題なくクリアできたと思う。問題集さえちゃんとやっていれば落ちることはない試験だしね。

 このあと実技に入ることになったが、今回の試験官は剣の翼という優階位のパーティーメンバーだった。たしかスレインさんたちが憧れていると言っていたパーティーだよな。たしかに強そうだ。



 良階位の実技試験は非公開となっているので一人ずつ訓練場に入っての試験となる。試験を受けるのは35人だ。多いときは50人以上受けることもあるらしいが、今回は少ない方みたい。

 実技は剣だけでなく魔法を使ってもかまわないとなっているが、結界のようなもので威力はかなり落とされた状態での試験となるので魔法については牽制くらいにしか使えないだろう。



 同時に2~3人ずつやっていくみたいで一人大体30分くらいかかるようだ。自分の順番になったところで中に入ると、剣と盾を持ったがっちりとした体格の男性が立っていた。うーん、体格的にすでに負けているような気がする。


 対人の試験時間は10分程度で、その間にどこまで自分の実力をアピールできるかが勝負だ。装備はいつもの物だけど、切れ味はかなり落としているので大きな怪我をすることはない。何かの時には治癒魔法をかける人が待機しているしね。


 まずは火魔法と風魔法で左右から攻撃を仕掛けたあと、水魔法で正面の視界を遮り回り込んで攻撃を仕掛けるが、あっさりと防がれてしまう。まあそんな簡単にいくとは思っていないけどね。魔法も向こうから出された魔法で相殺されてしまったし。

 このあと雷魔法を使いながら剣で攻撃を仕掛けるが、正面からいくと簡単によけられてしまう。それからは剣と盾を使って攻撃を仕掛けながらちょくちょく魔法も使って攻撃をするが躱されてしまって全く当たらない。

 一通りこっちの攻撃を受けたと思ったのか、向こうからも攻撃をしてきたので盾で剣を捌きながらなんとか耐える。さすがに剣の動きが鋭すぎてぎりぎり捌くのが限度だ。これでも手加減しているのがわかるくらいなのが悲しい。


 対人の確認が終わった後は、魔獣と戦うことになる。捕らえてきた魔獣なんだが連れてこられたのは上階位上位の銀狼だ。こっちも魔法を先制攻撃で使ってから土魔法で足止め。そのあと水魔法で防御しながら雷魔法を使って動きを鈍らせる。盾で攻撃を防ぎながら徐々に剣で攻撃し、首を切り落として討伐を完了した。

 魔獣戦は剣の威力も魔法も制約されていなかったのでかなり楽に倒すことができた。まあ剣だけでもなんとか倒すことはできるんだけど、魔法があればまず負けることはない。


 このあと別の部屋に行ってから魔法の威力についても試験してもらう。火魔法は白色まで行かないが白っぽい色まで制御できるようになったから威力はかなりのものだったと思う。他にも5種の魔法で的に攻撃して結構な威力を出せたと思っている。


 試験が終わると、別の部屋で全員が終わるまで待機だ。ジェンも同じタイミングで試験を受けていたようで自分の少し後にやってきた。

 やはり魔法を使いながら短剣で攻撃をしてみたがほとんど当たらなかったらしい。相手の攻撃もほとんどがかわすか受けることはできたのでなんとか及第点はもらえたんじゃないかと言っている。魔獣は自分と同じく銀狼だったみたいで、魔法を使えたので結構楽に倒せたようだ。


 全員の試験が終わったところでいったん自由時間になる。近くの喫茶店に入ってからお茶を飲んでのんびりして、時間になったところで会場へ。


 試験結果の発表は一人ずつ呼ばれるわけではなく、番号が張り出されるみたい。しばらくすると番号の書かれた紙が張り出されたが、番号がちゃんとあったのでほっとする。よかった~~~。これでジェンだけ受かっていたら悲しすぎたよ。

 不合格になった人達は試験結果の概要について説明を受けていた。合格した人は次の試験の後で説明を受けるらしい。

 カースさんとヤルマンさんさんも受かったようだ。ここで合格したのは全部で18人と結構多かった。まあ実力が無いと受けないだろうからね。



 次の行動試験は明日の朝0時に集合するように言われる。装備以外の荷物は必要ないと言うことなので特に準備はいらないみたい。ある程度荷物の整理をしたら今日は早めに休むことにしよう。


 帰りに簡単に外で夕食をとり、家に戻ってから装備の手入れをして早々に眠りにつく。数日間かかると言うことだったので眠れるうちに寝ておかないとまずそうだからね。



~試験官Side~

 今回の試験の内容について試験官および関係者が集まって協議をしている。説明をするのは実際に対応した試験官だ。


「さて、次にジュンイチの評価に移ろう。同じパーティーのジェニファーも一緒に評価しようと思う。」


「ジュンイチの戦闘能力について言わせてもらうと、剣や盾などの武術に関しての能力はぎりぎりだが合格点を出せるレベルと判断していいと思う。攻撃に関しては若干劣るが、防御に関しては十分なレベルを持っている。おそらく魔法もかなり使えることから、攻撃に関しては魔法を主体に置いているのだろう。魔法攻撃と剣の攻撃の間合いもよかった。」


「魔獣の討伐においては魔法での先制攻撃の後、防御を優先しながら攻撃を加えており、かなり安全な討伐をしていた。おそらく常に素材確保を念頭に置いた戦い方をしていると思われる。魔法を制限無く使うのであれば良階位の魔獣でも一人で十分に倒すことができるのではないかと思われる。」


「ジェニファーについてはジュンイチと同じように若干攻撃力には劣るが、これは戦闘スタイルによるものだろう。どちらかというと防御の方に力を入れている感じであり、防御に関してはこちらも十分なレベルに達していると判断していいだろう。魔法についても攻防の間にうまく使っている。」


「魔獣との戦闘においては防御を中心に魔法攻撃で牽制し、とどめを刺すというスタンスで行っていた。魔法の威力があるにもかかわらず、防御を重点に置いているのもリスクを考えていて評価できると思われる。」


「ジュンイチの魔法の威力は属性によっては優階位レベルはあると言っていいのではないかと判断した。発動までの時間も短いのに威力は高い。特に火魔法の威力はかなり高い。今回見せたものはすべての実力ではないようにも感じる。

 今の時点で全属性が使えるだけでなく、実際に攻撃力も備わっていた。火、風、雷の威力は他のものよりも高かったが、他の属性もちゃんと殺傷能力を有していた。はっきりとはわからないが、次元魔法も使えると思われる。

 ジェニファーについても確認したが、魔法のレベルに関してはジュンイチと同レベルと考えてよいかと思う。水魔法についてはジュンイチよりも威力が高い感じだった。」


「実力的には武術はギリギリ合格、魔法については十分な実力であり、戦闘力として判断すると十分な能力を有するということで問題は無いか?」


 特に異論は無く次の内容に進む。


「過去の依頼の実績についても達成結果はすべて優や良の結果が報告されており、失敗の報告はない。並階位の時に受けた護衛依頼についてだが、そのときに盗賊退治を行っているが実際にはかなり退治に貢献していたらしい。当時は良階位の蠍の尾と一緒だったために共闘という形で報告されたと言うことだったが、蠍の尾に確認したところ、この二人がいなかったら危なかったと言っていたので間違いないだろう。

 それに良階位の魔獣の討伐依頼を2回達成しており、その評価も良だった。さらにジョニーファン様やヤーマン王家からの特別依頼も完了していることからもその実力は十分だと判断していいだろう。

 このほか海賊の宝の依頼、北の遺跡調査の依頼については探索能力だけでなく、かなりの知識も有していると判断できる。古代ライハン語の解読の貢献度についても報告されているが、その業界ではかなりの知名度となっているようだ。」


「まだ19歳と聞いているが、小さな頃から実力があったのか?」


「いや、冒険者に登録したのは2年ほど前だが、そのときはやはり初階位の実力だったようだ。実力を隠していたわけではないだろう。上階位の昇格試験でもやはりそのレベル並みだったことは間違いないはずだ。

 高位の治癒魔法を使えるという話も出ているが、それについては公にしていない。まあ教会のこともあるから公にする気もないがな。」


「このあとの行動試験もあるが、まずは合格でいいだろう。」


「うむ、異論は無い。」


 思った以上に高い評価を受けている二人だった。

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