106. 異世界470日目 遺跡の調査

 テントだったんだが、気温も高くないのと、持っていたベッドマットを使ったのでよく眠ることができた。見張りもいるので魔獣に襲われる心配もほとんど無いと考えてよかったし、一応アラームはセットしていたしね。ジョニーファン様の紹介状もあるのでよっぽどなことが無い限りは変なことはされないだろう。


 簡単に準備をしてから昨日聞いていた訓練用の広場で簡単に訓練を行う。兵士は鍛錬の時間が決まっているのかこの時間はまだいないのでよかった。ただあまり大きな音は立てられないので打ち合い稽古はできなかったけどね。



 朝食には定食のカレーのセットを頼む。カレーはやっぱりどろっとしている方が好きなんだが、こっちのカレーはシャバシャバなのがちょっと残念だ。

 このあとデイストリフさんに資料室に連れて行ってもらい、遺跡の情報を見させてもらうことにした。ここの管理をしているのはヤルマンという副官の男性で、簡単に紹介してもらう。結構立派な体格で武闘派という感じなんだが、書類整理の方が好きらしい。もちろん戦闘力は高いらしい。


 このあと係の人に資料を出してもらう。ジョニーファン様から資料については見せていいと言われているみたいなので助かった。全体図とある程度の要点の書かれた地図を見せてもらい、資料と照らし合わせていく。

 遺跡は3階建ての構造みたいで、小さめの部屋が並んでいるので居住エリアとかだったのかもしれない。それ以外にいくつかホールのようなところがあり、そのあたりに壁画などが描かれているらしい。見ていくのはこっちの方が中心かな?


 ほとんどの設備は朽ち果てていたみたいで、すでに運び出されているのでがらんどうになっているようだ。現在はケーブル関係の取り外しなども行っているらしい。いくつか魔道具らしきものとかもあったようだが、こちらも大半のものが朽ちてしまっていたようだ。収納バッグなど結構使えるものもいくつか見つかっているようだ。



 一通りの資料を見るとすでにお昼になっていた。まあ膨大な数の資料だったからね。でもこれで見るべきところは絞り込めたから主要箇所を見るだけなら2~3日くらいで終わりそうな気もするなあ。まあ壁画の確認とかしていたら結構な日数になるだろうし、他にも見落としがあるかもしれないのでもう一度調査もするけどね。




 お昼を食べてから許可をもらって遺跡へ向かう。この途中で道しるべの玉に示される場所が近かったので確認していくことにした。


 すべての距離が0になる地点を確認すると、遺跡の入り口の近くにある大きな石の上がその場所だった。高さの0地点は石の上から10cmくらいのところかな?石は木々に覆われてしまっているんだが、自然の石ではなく、加工されたもののような印象だ。


「ここが0となる場所なんだけど、この上に転送されると言うことなのかな?」


「多分そうなんでしょうね。」


「使って試してみたい気もするけど、一回限りだからもったいない気もするなあ。」


 せっかくなのでこびりついている木々を払ってみると、さすがにかなり雨風で削られてしまっているが、六角形の形をした石だったようだ。何か刻まれているかもと思って調べてみたが、石の表面には何も残っていなかった。


「島にあった遺跡でも0の地点は特に何もなかったよね?特に転移先の方に仕掛けが必要というわけではないと思うから、ここもそんな感じなのかな?」


「場所を示すためにこの形にしただけなのかもしれないわね。転移先も自由にしたらいろいろと問題が出そうだから転移先は指定していたのかもしれないわ。」


「でもさっきみたいに木とかがあったら転送したときにどうなるのかが気になる。」


「変なものがあったら転移できないとかもあるかもしれないわね。」


 いろいろと石を調べてみると、遺跡の入り口を警備した人から声がかかる。


「なにかあったのか?」


「いえ、この石も加工された形跡があったので見ていただけです。」


「なるほどな。たしかに言われてみたら人工的な感じだ。気がつかなかった。やはり我々とは見るところが違うようだな。」


 自分たちが調査している石を見て納得したようだ。


 一通りの調査を行ったところで、遺跡の入り口で受付をして内部へと入る。ある程度通路を歩いて行くと、居住スペースなのか小さめの部屋が並んでいるところにやってきた。ここではドアなどの使える部分の取り外しが行われている。金属関係を再利用するのだろう。


 一応地中探査を行いながら通路を進んでいく。事前に同じような調査は行っているとは思うんだけど、見落としもある可能性があるからね。島の遺跡とは違って、壁の機能が落ちているのか自分の魔法で探索はできる。おそらく壊すこともできるだろう。



 ホールになっているエリアは、階層をぶち抜いた感じで一番高いところは10m位ありそうだ。ここの設備はすでに運び出しが終わっているのか人の姿はない。


 ホールは3つあって、順番に見ていくが、最初の二つはただの集会所という感じだったが、3つめは教会のようなところだったのか、祭壇があって、正面の壁に壁画が描かれていた。


 ここに描かれているのは古代文明の神達の姿みたいで、現在の5人の神とは異なるようだ。他の遺跡でも同じような絵は見つかっており、創造神がおり、その下にかなりの数の神がいるとなっている。


 神話では、神の入れ替わりの話が伝わっている。この話は神から直接伝えられたという話もあるが、もちろん真偽はわからない。ただ遺跡などに描かれている神々と現在の神が異なる点、今の5柱の神様が子供の姿で描かれている壁画もあると言うことからこの話は真実と言われている。



~神の系譜~

 神からの加護を受けて人間は文明を発達させていった。しかし傲慢になってしまった人類は争いをやめず、神に近づこうと不遜な態度を取り始めた。そしてついに人間は神から見放される。神の加護が無くなった人間は反省することもなく暴走し、全世界を巻き込んだ戦争となり、古代文明は滅びてしまう。なんとか生き残った人間達を哀れに思った若い神々が再び人間達に加護を与えて新しく管理を始めた。この若い神達が現在の5柱の神となった。


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 簡単に言うとこんな感じなんだが、もちろん長いものはかなり長い内容となっていて、短いものは絵本くらいの内容になっている。神学のレベルを上げるためにかなりの書類を読んだからなあ。レベルを5に上げるにはこのような壁画を研究していくしかないと思う。


 ここに描かれている神様には古代ホクサイ語で名前も書かれており、神様達をあがめるような文章も書かれていた。よく長い年月劣化しないで残っていたなあと思ったんだが、絵は描かれたものではなく、いろいろな石をはめ込んで描かれているものだった。すごい技術だな。



 途中の通路の探査に時間がかかったこともあり、すでに時間も遅くなってきていたのでいったん撤収することにした。とりあえず明日は先ほどの壁画の調査とその奥の部屋の確認だな。早ければ明日にはすべて見て回れるので、そのあとは壁画の研究とかかな。せっかく依頼として受けたんだから、なにかしらの成果がほしいよなあ・・・。



 夕食にはデイストリフさんも付き合ってくれるみたいで一緒に定食を食べながらこっちでの状況など色々と話をする。定食はステーキにサラダという内容だ。魔獣が大量に出てくるので肉が中心の献立となってしまうらしい。

 遺跡の調査は冬の間を除いて3ヶ月くらいになるらしく、今年になってからもすでに2ヶ月になるようだ。さすがにずっとこのような生活が続くと不満が出てくるため、今は買い出しをかねて順番に町に戻って息抜きをしているようだ。残念ながら彼女はそのメンバーには入れず、ずっとこっちに滞在らしいが・・・。


 夕食の後は、浄化魔法で体を綺麗にしてから眠りにつく。さすがにシャワーのようなものもないので他の人も基本的に浄化魔法で対応しているようだ。できない人は水で体を拭いたり、できる人に頼んでいるらしい。

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