98. 異世界440日目 魔道具はかなり充実していた

 クリアミントの町に到着したが、すでにお昼も回っているのでまずは宿の確保からだ。事前に聞いていた宿をいくつか見て周り、ラントハイドというところにする。ツインで朝食付きで1000ドール、夕食をつけると1100ドールだったが、とりあえず朝食のみで3泊お願いすることにした。まあ中二日あればある程度の情報は得ることができるだろう。



 カサス商会がここにはあるようなので顔を出すことにしたが、残念ながら店長は少し外出と言うことだったので、また夕方に来ることにする。


 せっかく来たので店内を見ていくが、なぜか魔道具のコーナーがあまり充実していない。というかかなり限定した商品しか置いていない感じだ。店員がいたので聞いてみる。


「お客さんはアルモニアにくるのは初めてなのですか?こっちでは魔道具は専門店で取り扱うのが普通ですので、当社も別館にて取り扱っています。こちらに置いているのは魔道具でも現在売り出し中のものを少しだけとなります。」


 魔道具が充実しているので、専門店が先にできあがってしまい、総合スーパーのようなものができてもその流れで魔道具だけを取り扱っているお店が多いようだ。


「そういうことだったんですね。」


「はい。ちなみにこれはいま売り出し中のバッグです。重量が50%カットされるというおすすめ商品ですよ。これはこの国でもまだ開発ができていないのでヤーマン国からの輸入品のみとなります。」


 値段を見ると8500ドールとなっていた。やっぱり若干高くなっているね。


「同じものを持っているから大丈夫ですよ。」


「ありがとうございます。もし魔道具に興味がありましたらすぐ近くにある別館をおたずねください。」


「ありがとう、後で行ってみます。」



 一通り店内を見て回ったあと、話に聴いた魔道具のお店に行く。かなりいろいろなものが売られており、同じ魔道具でも種類が豊富だ。やはり魔法が発達していると違うなあ・・・。

 今持っているものよりも高性能っぽいものもあるが、まだ買い替えまではいいだろう。ジェンはなにやら美容関係の魔道具を見て回っているので放っておこう。



 魔道具の扱いとなるみたいでシステムキッチンのようなものが置いてあった。そういえば日本でも電化製品のお店にシステムキッチンが置いてあったね。


 他に調理用具を見ていくが、オーブンはあるが電子レンジはない。まあ電子レンジは科学が発展していないと無理だろうな。魔道具でイメージして作れるのだろうか?でもできたとしてもちょっと使うのが怖いんだよなあ・・・。すぐに温められると点はいいんだけどね。

 今ある料理関係の魔道具は小さなシステムキッチン、炊飯器、ミキサーくらいだ。パン焼き器とかはさすがに売っていない。まあ収納バッグがある時点であまり必要性はないんだけどね。


 いろいろとチェックしたあと、近くにいた店員を呼んで値段を聞いてみる。



 システムキッチンで使い勝手の良さそうなものは値段を聞くと58万ドールと言われる。コンロ部分が3つに魚焼きのグリル、オーブンがついている。シンクは2つあってお湯と水の出る蛇口が2つ付いている。もちろん排水処理もちゃんとできるようになっている。なかなかいいな。

 これよりさらに性能のいいものになると魔道具の性能がアップするため値段が一気に102万ドールと倍増してしまう。ただ水量とかも多くなるし、火力もかなり上がるようだ。消費魔素はあまり差がないらしい。



 悩んでいるとジェンがやってきた。


「どうしたの?」


「いや、拠点用にシステムキッチンを買おうと思っているんだけど、どれにするか悩んでる。」


 二つの内容を説明する。


「それだったらいい方を買ったらいいんじゃないの?金額的には大丈夫なんでしょ?」


 即答で答えてきた。


「でも値段がかなり高いんだよ。」


「いいじゃない。また稼げばいいんだし、悩んでいるのはお金の問題だけで性能では上の方がいいと思っているんでしょ?後で買い換えたり、機能を追加することを考えたら最初に買っておいた方がいいんじゃないの?」


「そうだね。」


「すみません、こっちの方を買って帰りたいのですが、もう少し割引はできないでしょうか?」


 さすがに100万ドールの商品を速攻で決めてしまったことに驚いていた。結局少し負けてもらい、99万ドールで購入することになった。持って帰るという時点で手間賃もかからないからね。他にもジェンが欲しいものなどいくつか購入する。




 再びカサス商会の受付に戻って話をすると店長はちょうど戻ってきたところらしい。店長はケルミンと言う人で、魔道具関係に詳しいらしく、自分の納めている魔道具にかなり興味があるようだった。


「さすがに魔法についての研究が進んでいるだけあって魔道具も充実していますね。」


「ええ、ただその分競争も激しいのでなかなか大変ですよ。今ジュンイチさんに納めてもらっています魔道具はこちらの国でもかなり驚かれました。

 今のところ追随してくるところはありません。あと、バッグだけでなく他のものにも応用できないかと現在研究を進めているところです。」


「そうなんですね。最近は少し付与魔法の能力が上がってきてもう少し性能アップのものができてきていますが、納めるものは今までと同じものにしています。」


 重量軽減の魔道具で現在試作品のものを見せると、ざっくりで言うと10%くらいのアップしそうだと言われる。ということは感覚的に自分が作れる最高のもので20%くらいは能力アップするという感じか?ただ作るのに時間がかかりすぎるからこっちはまだ出せないな。

 消費魔力とのバランスが重要だからねえ。消費魔素が変わらない大きさで機能だけ上げるとなると特に刻む付与魔法の精度を上げるしかない。車につけたみたいに消費魔素を気にしなければ性能は上がるけどね。


「そういえばさっきシステムキッチンを買いましたよ。さすがに値段が高かったけど、いいものを手に入れられてよかったです。」


「うちのお店で買ったんですか?もしかして正規の金額で?」


「少し負けてくれましたけどね。」


「うちの社員だったら5~10%の割引がきくんですよ。最近になって始まったシステムなのですが、このおかげで社員もうちのお店で購入するようになって売り上げが増えたんです。しかも社員もかなり喜んでくれたのでかなりいい改革でした。」


 そういえばそんなアドバイスしたような気がするなあ。


「購入の時の領収書があれば返金しますよ。」


「申し訳ないですが、お願いできますか?」


 返金されたのは5万ドールくらいだったのでかなり大きい。ケルミンさんもまさかこんなに買っているとは思っていなかったようだ。


 このあと少し話をしてからお店を後にする。夕食は宿に併設の食堂で大毛牛という魔獣のステーキを食べた。これはもっと北の方にいる羊と牛の中間のような魔獣だ。なかなか美味しかった。上のクラスになればもっと美味しくなるのだろうか?


 部屋に戻ってからこの後の予定を確認して眠りにつく。今日はシャワーはやめて浄化魔法だけで済ませた。

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