37. 異世界165日目 旅は順調に進む

 朝食を食べてからカサス商会の前に行くと、準備が大体終わっていた。ここからの護衛はサクラを拠点としている”蠍の尾”という女性だけのパーティーだった。良階位のパーティーで、メンバーは4名のようだ。


 支店長のユニスさんにリーダーのスレインさんを紹介してもらう。


「おはようございます。今回サクラまで同行させていただきますアースのジュンイチと言います。こちらはパーティーを組んでいるジェニファーです。よろしくお願いします。」


「ああ、そうか。蠍の尾のリーダーをやっているスレインだ。よろしく。出発準備があるので失礼するよ。」


 そう言って準備に戻っていった。えっと、護衛の時の対応を話したかっただけど、なんか気に障ることをしたのかな?


 こちらの状況が気になったのか、コーランさんがすぐにやってきてスレインさんと話すと、すぐにスレインさんが謝ってきた。

 どうやら金持ちの実績稼ぎに入った護衛で、実質的には護衛対象となると思っていたらしい。まあ確かに並階位の冒険者が護衛として入ってきたらそう思うだろうな。


 実力は並階位相応なのであまり期待しないでほしいこと、現在までに倒してきた魔獣のこと、簡単なこちらの戦い方などを話しておく。

 自分たちの実力については追々確認してもらうことにして、戦闘は基本的に蠍の尾の人たちで対応し、場合により自分たちも加わることになった。ただ連携の問題もあるのでやはり戦うときは分かれて戦うことになる。



 蠍の尾パーティーは南方の出身の4人の女性のパーティーで、首都を拠点にして活動しているらしい。前衛2人、後衛2人という感じだ。年齢は25歳くらいか?年齢は恐ろしくて聞けないな。


 リーダーがスレインさんで魔法と治癒を担当しているようだ。赤い髪をした端整な顔立ちの女性で、スレンダーな体型をしている。短剣と盾と皮鎧を装備しており、ジェンに近いスタイルという感じだ。かなり参考になりそうなのでジェンにも稽古をつけてほしいところだ。


 アルドさんは190cmくらいの大柄の女性でいかにも前衛という感じ。朱色の髪をしており、かなりがっしりとした体型だ。大きな鎚と150cmくらいの大盾を装備しており、上半身には金属の鎧を身につけている。


 イントさんは剣と短剣を両方使うスタイルみたいで、場合により両手に剣を持って戦うらしい。皮鎧のようなものを身につけている。盾を使うので若干異なるが、自分に一番戦闘スタイルが近いかな?スレインさんと同じような赤い髪をしており、なんか色気がすごい。


 デルタさんは剣を持っているが、魔法がメインのようである。指輪か何かが発動媒体かな?薄手のローブのような服を着ている。服と言っても金属が編み込まれているようだけどね。赤い髪をしており、身長はかなり低く150cmくらいか?なんか言葉使いが男の子のような感じでいわゆる僕っ娘なのかな?



 今回は運転席側が広いトラック二台と大きなトラック2台と車が1台となっている。2台のトラックに蠍の尾メンバーが2人ずつ乗って先頭と最後尾。その前後に運転手のみのトラックが一台ずつ、中央に車が走る陣形のようだ。


 街道が整備されているせいか、今までよりも移動速度が速いが、途中の山を越える付近はかなりペースが落ちてしまうようだ。一番の難所はこの山越えで、強い魔獣も結構いるらしく、倒すには少なくとも上階位くらいの実力が必要らしい。


 また最近は盗賊が出ている情報もあるので注意が必要なようだ。スレインさんからも盗賊が出たときに心構えについて聞かれたので、討伐の経験はないが、現在の自分たちの考えについて話しておいた。



 移動中はいつもと同じく、仮眠をとったり、学識スキルを得るために勉強したりして過ごした。途中でてきた魔獣は自分たちも一緒に討伐することもあった。初めて見る芋虫系と昆虫系の魔獣は数が多いので大変だった。



 芋虫系は大きなものは子供くらいの大きさの巨虫と言われるものも出てきた。粘液を吐き出して攻撃してくるのでうまくよけないと皮膚がやられてしまうようだ。弱酸くらいの感じか?人数が多い場合は問題ないが、束縛するような粘液も出してくるので注意が必要らしい。

 正直巨大な芋虫はかなり気持ちが悪い。これにやられると、生きたまま体を溶かされて食べられてしまうらしい。しゃれにならないな。


 あまり食べる気もしないが、毒が含まれているので元々食べることはできないらしく、素材にも使えるところがないようだ。



 昆虫系はカナブンの大きなものという感じで形はいろいろとある。小さなもので握りこぶしくらい、大きなものでバスケットボールくらいの大きさになり、カブトムシのように角があるタイプや、クワガタのようにハサミがあるタイプもいる。


 スピードが結構早く、対象も小さいため、剣で倒すには結構大変だが、魔法を使うとかなり楽に倒すことができる。


 外皮が買い取り対象となっているんだが、かなり程度が良くないと買い取りにはならない上、金額も安いので、持って帰る人は少ないらしい。駆け出しの冒険者がこれを防具代わりに自分で加工して使うことも多いようだ。



 昆虫系は数も多いのに、お金にならないためにいやがる冒険者が多い。魔獣石もせっかくなのである程度は回収しておく。良階位とかだとはした金レベルだろうけど、数が数なのでこれだけでもちょっとした小遣いだ。



 3日ほどは途中の町や村に宿泊したが、またジェンと同じ部屋にさせられてしまうのは悪意を感じる。そういう関係ではないと何度言っても「はいはい、ごちそうさま」といって相手にしてくれない。ジェンも嫌がるそぶりを見せないので余計にだ。



 途中でスレインさん達から剣や魔法の指導を受けたり、魔獣の解体について助言を行ってもらったりといろいろと指導してもらった。高レベルの人からここまで丁寧に指導してもらうとはかなりありがたいことだ。

 特に自分のスタイルに近いイントさんからの助言はかなり役に立つ。盾の使い方は正直よく分かっていなかったので、いろいろと使い方を聞いてだいぶ形になってきたと思う。


 魔獣との戦闘では思ったよりも役にたっていたようで、蠍の尾のメンバーからも褒めてもらえた。これだったら上階位の試験も十分クリアできるだろうと言われてちょっとほっとした。ちなみに最初はやはり並階位なのであまり期待していなかったようである。



~魔獣紹介~

巨虫:

上階位下位の魔獣。岩場や山岳地帯に生息している巨大な芋虫の魔獣。多くの足を細かく動かして移動するが、思った以上に素早い動きをする。大きなものは子供くらいの大きさになる。進化前の大虫を従えて行動することが多い。

体を束縛する糸のような粘液と、消化液のようなものを吐き出して攻撃してくる。体を束縛されてしまうと抜け出すのはかなり厳しいが、人数が多い場合は助けてもらえるためそこまで脅威ではない。ただ一人で自信が無い場合は逃げた方がいいかもしれない。束縛された後、生きたまま消化されていくのは考えたくはない。

素材としての買い取り対象はない。肉も毒が含まれているために食べることはできない。


大角甲虫:

上階位中位の魔獣。岩場や山岳地帯に多く生息している硬い外皮を持つ昆虫型の魔獣の総称。大きさは握りこぶしくらいから頭の大きさくらいまで幅があり、形も角があるものや、はさみがあるものなどいろいろとある。

速度が速く小回りも利くためなかなか捕らえるのが難しい。攻撃は硬い外皮を使った突撃とシンプルだが、頭など急所を攻撃されないように注意しなければならない。

昆虫系に共通するが、魔法による攻撃が有効。外皮は硬いがおなかなどはまだ柔ら無いため攻撃する場合はそちらを狙おう。

素材としての買い取り対象は外皮で、外皮を加工して防具代わりに使っている冒険者も多い。

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