34. 異世界150日目 再び旅の準備と異世界チート

 明日には出発となるため、今日のうちにできるだけ荷物は整理しなければならない。そんなに荷物は増やしてはいなかったんだが、最低限リュック一つずつにまとめておいた方がいいだろう。

 とはいえ、売れるようなものは特にないので古い服をいくつか処分してもらうくらいかな?ほんと収納魔法か収納バッグがほしいよ。



 朝の準備が終わってからカサス商会に行って同行することを伝える。少し時間がとれないか確認してみると、30分くらいなら時間がとれると言うことだった。

 朝食がまだだったようなのでさっそく持ってきたインスタントラーメンもどきを作って試食してもらうことにした。試食の話をしたのでコーランさんの他にもフラールさんら数人やってきていたので人数分作ることになる。カップまではできていなかったので普通のお椀で代用だ。


「手順としては袋から麺を取りだしてカップに入れます。そのときにこの乾燥したスープと野菜も一緒に入れます。そのあとお湯を入れて蓋をして3分待ちます。」


「これで終わりなのですか?」


「やるのはこれだけです。好みによって若干待つ時間は調整が必要ですが、あまり長くなると麺が溶けてスープみたいになりますので注意してください。それが好きという人もいるかもしれませんけどね。」


 お湯を入れて3分ほどしたところで食べてもらう。


「ちゃんと麺にも火が通っているし、麺に味がしみこんでいて美味しい。」


「これはうまい。3分でこれだけのものが食べられるなら十分じゃないか?」


「お湯さえ準備できればこんなに簡単にできるなら冒険者や兵士達の非常食にも最適だな。」


 コーランさんたちはお湯を注ぐだけでほんとに3分もかからず普通の麺料理が食べられることに驚いていた。感想を聞く限り、なんとか合格点はもらえたようだ。一応乾燥した野菜とか肉とかも入れているからね。


「あと、これが3ヶ月前に作ったものです。これはあまり数がないので一つだけ作ってみますね。」


 保存していたのは数個分しかなかったのでとりあえず一つ作ってみる。


「さっきと差がわからないな。」


「これなら十分じゃないか?」


「特に腐食防止の魔法をかけていたわけではなく、袋に入れて空気をある程度抜いた状態で保管しただけのものです。

 あまり古くなると臭くなってくると思います。保存の状態にもよりますが、おそらく半年くらいは保持できると思わうんですけど、そこは試してみないとわからないです。魔法でつくった麺だったらもっと持つかもしれませんが、作るコストが高くなると思います。」


 袋に入れているので何かに移して食べる形だが、最初から容器に入れて売ればお湯を注ぐだけになること、そのほか知っている内容を伝える。


 「申し訳ないですが、ちょっと待っていて下さい」と言ってコーランさんたちは他の部屋へ。どうやら採用するかどうかを話しているんだと思う。15分ほどして戻ってきた。


「ジュンイチさん、おそらくこれは今まで発明されていないものだと思います。それで特許申請して問題ないようであればこちらでもう少し研究を進めて売り出したいと思います。申し訳ありませんが、このことは他には内密でお願いします。」


 このあとすぐに契約書が作られて、特許申請することになる。契約の話はジェンがやってくれたのでスムーズに進んだ。申請は発明者に自分とジェン、販売者にコーランさんとしておいた。


 申請はそれぞれに該当する神様にするらしく、教会に行ってから手続きをする。今回は豊穣と技の神であるタミス神にお願いするようだ。お祈りを捧げると申請書類に神のサインが入った。これで認められたことになるようだ。


 ちなみにこの申請内容を閲覧するシステムがあるらしく、過去からの申請内容を見ることができるようだ。これで申請期間も確認できるらしい。すごいシステムだなあ。



 ジェンとコーランさんの話した内容は、大まかにはこんな感じらしい。

 ・どのくらいの利益が出たのかの申告は商会に任せること。

 ・場合により台帳を確認させてもらうこと。

 ・最初の3年間は利益の15%を支払うこと。

 ・利益配分の割合は3年おきに見直すこと。


 とりあえず作り方のレシピは書いてきていたのでそれを渡し、あとは入れものについての話をする。すぐに研究部門で研究を進め、来月には売り出したいと張り切っていた。研究部門はアーマトの町にあるようなので先に連絡のみ入れておくようだ。


 最初の3年間でこの商品の地位を確立して、後から参入する商店を引き離すつもりらしい。すごい意気込みだな。原理が分かれば作れるようにはなると思うけど、根本的な考えが分からなければ難しいかもしれない。製作方法は完全に秘密にするらしいが、どこまで対応できるのかねえ。




 今回も護衛依頼をに出してくれるようなので自分たちも役場に移動。首都までの護衛依頼を受注しておく。今回の護衛が達成できれば上階位への昇格試験を受けられそうだとの話だった。

 通常の護衛代は日数を考えると上階位で3~5万ドールくらいらしいので、並階位で今回の護衛の報酬額の5万ドールは破格らしい。


 ちなみにこの護衛の実績は金持ちの冒険者が実績ポイントをためるために使われたりもするみたいで、箔をつけるために上階位まであげておきたいという意向があってやる人もそれなりにいるようだ。とはいえ、試験で落ちてしまうことが大半らしいが・・・。




 お昼を食べてから色々とお世話になったお店などに挨拶をしていく。鍛冶屋や食堂などさすがに3ヶ月もいたらいろいろと知り合いができるものだ。


 持っていた武器で鉄の短剣(高)はやはり使うこともないので売ることにした。鍛冶屋のドウダンと交渉の結果、2万5千ドールで買い取ってくれることになった。ちょっと金額にはびっくりだが、まあそんなものか?付与魔法にもう少しいいものがついていたらもう少し高かったらしい。

 低レベルで5千ドールくらい、並レベルで1万5千ドールくらい、高レベルだと4万~5万ドールとかで売られているからねえ。買った金額を考えると25倍なので丸儲けだな。



 夕方には役場に行って他の冒険者とも挨拶をする。一緒に狩りはしてはいないが、いろいろと情報交換とかお世話になった人も多い。特にジェンは最初に来たときから色々とお世話になった人も多くてかなり話し込んでいた。「結婚式には呼べよ!!」と声をかけてくる人もいたが、そんなのではありません。


 この町での最後の夕食となるので、行きつけのお店でちょっと豪華に魚料理を堪能した。しばらく新鮮な魚は食べられないだろうしね。

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