19. 異世界43日目 旅の準備は・・・特にないな
今日は狩りに行くのはやめて旅の準備に取りかかる。旅の準備とは言っても宿泊道具はいらないし、食事もいらないので改めて考えてみるとあまり必要なものは少ないのかな。
移動する前に武器の手入れをしておこうと鍛冶屋ドルンのお店へ行き、剣と短剣の手入れをお願いする。ある程度は強度を維持できる付与魔法も施されているし、一応自分でも手入れをしているんだが、できるだけ定期的に研ぎなどの手入れに出した方がいいと言われているので素直に従っておこう。
もちろん自分でできるようになればいいんだけど、まだ拭いたりする程度の手入れしかできないからなあ。武器を預けてから昼過ぎに取りに来ることにしてお店を後にする。
あとは非常食や薬なんだが、いままでほとんど使っていないので補充の必要はなさそうだ。薬は最初にちょっと使ったくらいであとは治療を覚えたから使う機会がなかったんだよなあ。荷物も圧迫するので売れるんだったら売ってしまいたい。
着替え関係は十分だし、季節的に防寒具もいらないだろう。マントとかあるといろいろ便利そうだけど、もう少し寒くなってからかなあ?
明日の集合場所の確認をしておいたほうが良いだろうと言うことでカサス商店へ向かう。地図に従ってやってくると、思ったよりも大きな店舗だった。今まであまり行かないエリアだったので来たことはなかったんだが、魔道具から雑貨まで幅広く扱っているみたいで総合スーパーのような印象だ。気軽に話していたけど、実は力のある商店の人なのかもしれない。
お店ではこちらでは見なかった特売コーナーとか見切り品コーナーとかまであって、結構人が押し寄せていた。あまりやってないけどやっぱりどこの世界も商売は同じような感じなのかねえ。まだショッピングモールとかフードコートみたいなものはないけどね。
素材や道具の買い取りをしているところがあったので薬の買い取りについて話してみる。買い取り額はおおよそ販売額の8割となるようだ。
未開封の封はされているし、中身の確認はしてくれたんだけど、薬の買い取りについては冒険者なら上階位以上でないとだめらしい。もしくは実績のある人の保証が必要のようだ。
さすがに実績のある人の保証は難しいかと思ったが、ふとコーランさんの依頼のことを思い出した。
「この依頼書で保証になりませんか?このお店のコーランさんという方の依頼となるんですけど。」
護衛について書かれた依頼書を渡すと自分の冒険者カードと依頼書を見比べてうなっている。サインもあるし、偽物ではないですよ。
「わかりました。行程の内容も聞いているとおりですし、書類も間違いありません。わざわざ会長自らが護衛依頼を出していると言うことは十分に保証となります。ただ並階位のあなたに依頼をした理由は不明ですが・・・。」
「え?会長って・・・コーランさんって商会の会長なの?ええ~~~!!」
話を聞くとコーランさんはカサス商会を実質的に立ち上げた人でこの商会の会長だった。お店の輸送担当の課長さんくらいかと勝手に思っていたんだけど・・・。
「すみません。あなたの立場だったらこれ見せたら断れないですよね。すみません。あとで何かあっても困るので買い取りはいいですよ。」
平謝りである。
「いやいや、大丈夫ですよ。ちゃんと買い取らせていただきますよ。」
先ほどまでの顔つきからかなり優しい顔になって言ってきた。
「ほんとに大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。買い取り額は初級回復薬(並)が1本240ドールで5本、初級治療薬(並)が1本400ドールで3本、中級回復薬(並)が1本1600ドール、中級治療薬(並)が1本2400ドールですので合計6400ドールとなりますが、おまけして6500ドールでよろしいですか?」
「ありがとうございます。十分です。」
荷物も少し減ったし、お金も入って助かった。しかし回復薬のグレードも見てわかるんだな。鑑定レベルが上がったら自分もわかるようになるのだろうか?
このあとこの商会について少し話を聞いてみると先ほどの依頼書があるせいか、結構細かく教えてくれた。
商会はもともとこの町にあった小さな商店だったが、今の会長が20年ほど前にお店を継いてから業務を拡大していったらしく、現在は首都を含めた大きな町だけでなく、他の国にも出店するくらいまで大きくなったらしい。
当初から、商品は自分で見てみないと始まらないと公言しており、未だに仕入れに同行していて困っているようだ。いい加減に危険だからやめてほしいというのが家族、従業員の総意みたい。
まさかそんなお偉いさんだったとは・・・。まあ気にしてもしょうがないのであまり詳細は知らなかったことにしておこう。いまさら態度変えられないよ。
ちなみにコーランさんとは宿の食堂で知り合って何度か一緒に食事をした程度で、なぜか気に入ってもらえたらしく、今回オカニウムに行く話をしたらちょうどいいと護衛依頼を出してくれたと説明しておいた。
するとなぜか「なるほど、あなたが・・・。」と言うようなことをつぶやきながら納得していた。なにが「なるほど」なんだろう?
お昼を食べた後は武器を受け取りに行き、図書館で勉強と知識の取り込みを行う。この1ヶ月ほどで役に立ちそうな情報は大体取り込んでしまったので新しい本が追加されない限りは十分かな。
チートスキルはもらえなかったと言っていたけど、この本だけでも結構なチートスキルだよなあ。10日間だとほとんど意味がないけど、長期間となるとかなり有用だ。
しかしレベルが上がっていったらどんな機能がついていくんだろう?残念ながらこのスキルについてはガイド本にも説明はないし、本にももちろん載ってないんだよなあ。
宿に戻って1時間ほど鍛錬をする。毎日最低限体は動かしておかないと成長しないからねえ。荷物の整理も完了して、持って行くものはリュック一つにまとまった。
夕方に役場に行くと冒険者達が大分戻ってきていた。ユータとカナや他にお世話になった人たちにオカニウムに行くことを伝える。残念ながらクラーエルの二人は遠征に出ているみたいでいなかったので機会があったら伝えてもらうことにした。
オカニウムに行ったこともある人も多いので、おすすめのお店や宿についてもいろいろと情報をもらうことができた。最後まで色々とお世話になったなあ・・・。
夕食はユータとカナと一緒に食べに行き、久しぶりにカツカレーライスの様なものを食べておなかを満足させる。
「絶対に無茶をしないようにな。次に会うときにはお互い上階位になっていたらいいな。」
ユータ達に激励を受けてから宿に戻る。シャワーを浴びてから洗濯も済ませて早めの就寝。明日から移動となるので大変だけど、こちらに来て初めての大きな移動となるので楽しみだなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます