18. 異世界42日目 護衛依頼を受けることになった
いつもの時間に起きてから朝食に買っておいたパンを食べてから出かける。宿は10日分追加で払っていたんだが、2日後に出ることになったので割引分を差し引いて返却してくれたので助かった。
旅の準備と言っても特別何かいるわけではないので明日準備することにして今日はいつものように狩りに出かけることにした。
索敵をしながら魔獣を狩っていくが、今日は割のいい狼を見つけることができなかった。スライムや角兎、大蜘蛛や大蛇を狩って解体していく。剣の使い方も大分様になってきていると思うがどうなんだろうね。
大蛇は最初の頃は何度も皮の処理に失敗したもんだ。何回も「もう解体のところに任せた方がいいかな?」と思ったからね。でもそうやっていたらいつまで経ってもだめだから頑張ったよ。
お昼を挟んで狩りを続け、今日は少し早めの5時に町に戻ってきた。今日の収入は630ドールと、索敵を覚えてから大分効率は上がってきた感じだ。これでどんな魔獣かまで分かるようになったらいいんだけどね。
ふと見ると冒険者カードに連絡が来ている案内が出ていた。連絡があると、身分証明証の職業のところにマークが点滅するのである。この連絡を使うにもお金がかかるが、すぐに連絡を取りたい場合やどこにいるのかわからない場合にはかなり便利な機能である。
同じ町の場合はいいんだが、別の町になると書類の輸送や依頼書の転送費用でかなり時間や費用がかかってしまうので、金額が高くなってしまうようだ。
わざわざ連絡があるってことはコーランさんかな?とりあえず詳細は窓口に行って聞くことにしよう。
「カイルさん、こんにちは!」
いつもの窓口の女性に声をかける。
「こんにちは~~。連絡が入っていたと思いますが、カサス商会のコーランさんからオカニウムまでの護衛依頼が出ていますよ。先に風の翼に護衛依頼が出ていたので追加の護衛依頼と言うことみたいなのですが、雑用の様な感じになるみたいで、報酬はほとんどないようですけど、いいのですか?」
コーランさんのお店はカサス商会って名前だったのか。どうやら今回の同伴についてわざわざ護衛の特別依頼としてくれたようである。
「ああ、大丈夫です。向こうの町に移動を考えているときにコーランさんからその話が出たので報酬が移動費用と相殺と言うことで話をしていたんです。」
「そうなのですね。わかりました。でも向こうの町に移ると言うことは拠点を変えるのですか?頑張っているので陰ながら応援していたのですよ~~。」
「ありがとうございます。以前お世話になった人があの町にいるという情報を手に入れたので、いったん向こうに行ってみることにしています。会えなければ戻ってくるかもしれませんのでそのときは又よろしくお願いしますよ。」
「わかりました~。でもカサス商会から依頼を受けるって、すごいですね。護衛依頼の中ではかなり良い案件なのですよ。風の翼がこの辺りでは専属護衛の一つとなっていますが、我こそはとアピールする人たちが多くて・・・。商会としても今拡大中のところですし、この縁は大事にした方が良いですよ。」
「そうなんですね。あまりその辺りは知らなくて・・・。コーランさんと意気投合したというか、そんな感じです。」
「それでは護衛依頼については受領すると言うことで処理しておきますので、オカニウムについたら役場にこの書類を出して完了手続きを行ってくださいね。」
そう言って護衛の依頼書が書かれた紙を渡してきた。特別な紙を使っているようで、契約の魔法がかけられているらしい。
「あと集合場所をカサス商会の前に変更しても大丈夫かと言ってきていますがよろしいですか?」
「わかりました。大丈夫です。」
このあと討伐記録の実績を更新してから役場を後にする。図書館にも寄って本を読みあさってデータの蓄積と知識の蓄積をしてから夕食をとって宿に戻る。
わざわざ特別依頼として実績を積ませてくれるなんてありがたいなあ。いままで商会なんて特に気にしたことがなかったから注意していなかったけど、結構大きな商会と言っていたのでこの縁は大事にした方がいいだろうね。とは言っても今まで通りの対応しかできないんだけど。
ただあまり変なことを言って異世界から来たというのがばれてもややこしいことになりそうなのでその点は注意しておかないといけないな。いくら親切とは言っても商人なら見返りを期待しているだろうし、大きすぎる見返りは危険すぎるからね。
~コーランSide~
私はアーマトの町にある小さな商会であったカサス商会を親から引継ぎ、20年で他の国に進出するまでの商会へと育て上げた。会長となって一応一線は退いてはいるが、まだまだこの商会を発展させたいという意気込みだけは衰えていない。ただ新たな商売のネタがなく、ここ数年は停滞している感じなのがちょっと悲しいところだ。
いろいろと新しい情報を仕入れるためにできるだけ商品の納入には同行し、常に商売につながることに目を光らせている。できるだけ生の声を聞くために食事は町の食堂で食べることにしている。
その日も気に入っている宿カイランに併設のお店に食事をとりにいったんだが、隣に冒険者のような格好の若い男の子が座っていた。
どうやら冒険者になったばかりのようで、冒険者に依頼する護衛や収納バッグのことを話していると「ランクが上がったらそのときはお願いしますね。」と言っていた。冒険者で護衛ができるレベルになれるのは一握りの人だけだが、物怖じせず話してくるのは好感が持てた。
冒険者と言うことは商売のことにあまり興味がないと思っていたんだが、若いにもかかわらずかなりの知識を持っていた。それも驚くほどのアイデアを出してきていた。
もうけがなくてもお客を呼ぶための目玉商品やお店の商品の配置方法など、うちの店でもやっていないアイデアがいろいろと出てくる。
特に気になったのはフードコートやショッピングモールと説明している小さなお店の集まった場所だ。いろいろな目的の買い物客を一カ所に集めることでより多くの消費を促し、また客寄せのためにショーなどのイベントを行うことでさらに集客をする。正直、このようなアイデアが出ることに驚いた。
彼の話していることは実際に行われているような口ぶりだが、いままでそのようなことを見たことも聞いたこともない。あくまで考えている内容なのだろうか?正直このアイデアだけでもすごいことである。対価にはならないが、食事をおごるというとかなり恐縮していた。
お店に帰ってからさっそく聞いた話を実践してみることにした。関係者を集めて目玉商品の販売や、商品の配置について改めて考えてみると、たしかに納得できることがいろいろとあった。
言われてみたらたしかに納得できるんだが、なかなか思いつかないことだ。打ち合わせの席でも参加した店員は「なんで今まで気がつかなかったんだ?」と改めて納得している。
目玉商品は最初お客から「何事か?」「不良品なのか?」と思って警戒されていたようだが、慣れてくるとそれを目当てにお客がやってくるようになった。もちろんやってきたお客は他のものも購入するので売り上げが大幅に上がった。
ジュンイチさんのアイデアで実際に効果の確認が出てきたところで、サクラに持っていた土地にショッピングモールとフードコートというものを作ってみた。
最初はやはり人が少なかったが、口コミで噂が広がり、かなりの人が訪れるようになった。目玉となるお店がいくつかないと最初のお客が来ないと言われていたので有名店に無理を言って出店してもらったんだが、十分満足してくれていた。
このあとアーマトの町に行ったときに彼と再会できないか探してみたが、残念ながら見つからなかった。連絡先を聞いておかなかったのは失敗だったと後悔した。
ただ、そのあと運が良いことに同じお店で彼と再会することができた。どうやら金銭的な問題で別の宿に移っていたらしいが、この日は少し懐が温かいためやってきたらしい。
オカニウムに移動すると言っていたので私たちの車で一緒に行かないかと誘ってみた。かなり警戒されてしまったが、最後は一緒に行くことに同意してくれた。
せっかくなので少しでも恩返しをかねて護衛依頼を出させてもらった。話した感じでは過剰の報酬は受け取りそうにはないので、宿泊代や食事代は手出しだと説明したが、これはあとでどうとでもなるだろう。
前回の助言だけでも今回の移動費分くらい十分に元は取れているし、他にもいいアイデアが入手できれば十分だ。正直なところ、どんな話が聞けるのかわくわくしている自分がいるのが楽しい。こんなのは久しぶりだな。
~魔獣紹介~
大蛇:
並階位下位の魔獣。草原や岩場、森などあらゆる場所に生息する蛇の形をした魔獣。大きなものは大人の身長くらいあり、小型の魔獣や動物を絞め殺してから丸呑みする。物陰や木の上から突然襲ってくることがあり、隠密のスキルを持っているのか索敵に引っかかりにくいため注意が必要。
毒はもっていないが、鋭い牙を持っているので気をつけなければならない。腕や足などに巻き付かれるとなかなか剥がせないが、そのときは落ち着いて頭を攻撃しよう。
素材としての買い取り対象は皮と肉となるため、素材確保の場合は頭を潰すのが一番よい。ただし皮は上手に処理を行わないと買い取り対象外となるため、自信がないのであれば専門家に任せる方がいいだろう。
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