第9話:ビスマルク、現る
何処までがカバーストーリーで、何処までが本当の話なのかはまとめサイトでも判別が難しくなっていた。
それ位に一連の事件は悪化していく。まとめサイトは駆逐出来たはずなのに――この状況が続くのだ。一体、これはどういう事なのか? その真相は誰にも分からない。
『蒼流の騎士も、確かまとめサイトの一人って――』
「それも本当はカバーストーリーだったら?」
やり取りをしていく内に、あいね=シルフィードから飛びだした発言、その内容はビスマルクの言葉が詰まる程の物である。
『それもカバーストーリーって、冗談が過ぎるでしょ?』
この事実は、さすがのビスマルクも冷静ではいられないほどに衝撃だった事が証明された。
何が本当の意味で真実なのか――今までの事件もカバーストーリーだったとしたら?
「実際、そう思われるのも不思議ではないわ。WEB小説にノンフィクションと見間違う様なネタが入っていたら」
あいねの言うノンフィクションと見間違えるような題材とは、実在芸能人や歌い手、実況者を題材とした二次創作だ。
そうした二次創作を公式と誤認して本人に拡散するような事例は――ゼロとも言い切れない。
実際、類似事例もあって芸能活動の自粛をせざるを得なかった動画投稿者も数知れないだろう。
そうした二次創作を投稿するユーザーの大抵は、実在人物題材の作品がどれだけデリケートな物なのかを知らない。投稿して炎上し、そこでやってはいけない事を知るようなパターンが多いからだ。
『そう言った題材で投稿するユーザーがいるのは知っているけど――』
アカシックレコードの正体を踏まえると、それが妥当な判断なのかは断言しづらい。それでも、あの深層WEBに眠っていた物を考えれば――。
「あの勢力は、ある意味でも危険な存在を目覚めさせてしまったのよ」
『それによって――まさか?』
「そのまさかよ。あの勢力が実在人物題材の二次創作を書いた事で、禁断の扉に封印された存在を放ってしまった」
『アルストロメリアの事?』
「あれは本来のアルストロメリアじゃなかった。同名の別人――あの場合は別人格かな」
『別人格?』
ビスマルクは何かを疑った。あの時に遭遇したアルストロメリアは本来のとは違うと言う事実。
では、あの時に姿を見せたのは偽者だったのか? 厳密には、他の世界の人物設定が混ざった二次オリとも言うべき存在かもしれない。
あいねとのやり取りを終えたビスマルクは、オケアノスに到着する。既に午後1時になっているだろうか?
「そう言えば、あいねは――」
あいねが一連の事件には別の勢力が絡んでいる事も言及していた。それこそ、蒼流の騎士の正体だったまとめサイトの人物――マルスを呼び出した元凶とは別の勢力である。
まとめサイトも一枚岩ではないし、中には広告会社と組んで炎上するようなケースだって少なくない。
「まさか? あれまでカバーストーリーだったら、それこそ彼女は――」
一連の事件が企業側による別作品の宣伝活動と言う説は、ビスマルクは否定し続ける。そうでなければ精神が安定しない訳ではない。むしろ、舞風の立場を考えると――。
「カバーストーリーとは、どういう事だ?」
オケアノスに到着して早々、ビスマルクの目の前に現れたのは一人の男性だった。
背広姿だが、彼女が知るプロデューサーではない。その人物とは、黒騎士ギムレーだったのである。
「ギムレー、まさか?」
ビスマルクはギムレーの顔を見るなり、敵意をむき出しにはしたくないが警戒はしていた。
その理由は、ギムレーがニューリズムゲームプロジェクトをひっかきまわしたと言っても過言ではないからである。
メーカーの指示でやったと言えなくもない事例もあるが、その行動はユーザーを置き去りにした。それは間違いない。
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