第8話:大炎上を防ぐ為に

 SNS炎上勢力が介入したと思ったら、それらはあっさりと撃退されたのである。


 撃退したのはブローディア、ハットリ・シズといった独自勢力だったのだが、その情報を流したのは思わぬ人物だった。


 それを人物というカテゴリーにしてよいのか悩むが、その人物はアーシック・レコードだったのである。


『ここまでスケジュールを早める事になるとは。いよいよ手詰まりと言う事か』


 これをSNS炎上勢力に対してか、更に別の神視点に対してなのか――アーシックの発言の意図は定かではない。


 それでも邪魔な勢力を片付け、そこから新たな話へ仕切り直すことの重要性はアーシックも知っている。


『同じようなマンネリの繰り返し、それはシリーズ物では宿命だが――』


 この発言の意図が何処にあるのかは分からない。しかし、アーシックが見ていたサイトは明らかにWEB小説サイトだ。


 そのランキングをみると、明らかに別作品の二次創作で独占されており、一次創作は見向きもされない。


(また同じような事を繰り返すのか? マルスを生み出した――夢小説のランキング独占と言う世界を)


 アーシックは同じような事を繰り返し、それを何度も言及し続けた小説を知っている。


 その作品の名前こそが『ヴァーチャルレインボーファンタジー』であり、あの事件の元凶となったタイトルだった。


 あの事件は、ゲーム版を再現したと見せかけて、本当はWEB小説版を再現していた――そう言える流れだったのだろうか?



 炎上勢力が介入したのは、八月八日とも言われているが――そのログが正しいのかは定かではない。


 様々なまとめサイトが無差別に拡散させていき、SNS上を混乱させているのは目に見えているが。


 それでも事実を探そうとする人物はいるのだが――ゲームを純粋に楽しもうとするプレイヤーには、こうした炎上関係の情報でさえもノイズになる。


【炎上勢力自体は八月以前から行動していたと言う噂もある】


【ここで言う炎上勢力はアーシックが主導していた勢力か?】


【アーシックとは関係ないだろう。主導していた炎上勢力の話自体、フェイクかもしれない】


【それにつられて独自に行動した勢力が、今回の大規模摘発に――】


【どちらにしても、アーシックの一件で先急いだまとめサイト勢力などが連携を取れずに自滅が正しいだろうな】


【一体、まとめサイトを大規模に晒し上げて、アーシック・レコードは何を考えているのか?】


 他のつぶやきサイトでも様々なつぶやきが拡散されている。それらがフェイクなのか事実なのか――すぐにバズりたい為に拡散するようなユーザーがいた為に、ますます複雑化していく。


 こうした流れは確かに『ヴァーチャルレインボーファンタジー』にもあった。だからこそ、それに関係した人物にとっては予測出来ていたのだ。


「全ては仕組まれていた。炎上勢力を摘発し、大規模テロを防ぐ為にも――」


 あの時の事件は今回のような炎上行為を止める為の訓練だった――という可能性を持たせる為かもしれない。


 ビスマルクはSNS上のまとめサイトからこうした事例を分析し、密かに動いていたのである。


 全ては過去の事件のようにSNS上の身勝手な炎上行為や誹謗中傷等で、コンテンツの価値を下げて自分達が神様であると――。


「ニューリズムゲームプロジェクトも、ある意味で利用されていたのかもしれない」


 ゲームはどのジャンルでもよかった訳ではないだろう。ピンポイントで、この作品が狙われる可能性があった――と思わせるものでなければいけないのである。


 話が進み過ぎていたのは、もしかすると炎上勢力が別のコンテンツで炎上行為を行う可能性があったかもしれない。


 他に飛び火してコンテンツ市場が修復不可能なまでに炎上するよりも、ここで決着を付けた方がよかったのだろう。

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