7-4

 雪華せつかツバキが次に対戦する事になったのは、ハットリ・シズ。


 シズの方はチュートリアルをチェックした上で、楽曲を選択し――ツバキに挑む、はずだったのだが。


【マッチングを開始します】


 シズのバイザーに表示されたメッセージと共に出てきたプレイヤーネームは、予想外の物だった。


(ツバキのプレイヤーネームだけど、レベルが違う?)


 疑問に思ったのは、何度もプレイしているプレイヤーがレベル3程度なのか?


 リズムゲームの場合、段位認定等で○段という表示をする作品もある。もしかすると、レベルも似たような計算かもしれない。


 実際はツバキの名前だけ同じで全くの別人プレイヤーだった。いわゆる『なりすまし』のような悪意を持った人物ではないので、深く考えない事にする。


【あのSNS上で有名なツバキが、まさかのジャイアントキリングか!?】


 しかし、SNS上では炎上させようと動く連中が存在し、このバトル動画が拡散すると早速炎上させようと記事を書いた人物もいたのだが――ある理由で自滅する事になった。


(どう考えても――薄いレベルね)


 この内容をあっさりと見破ったのは、意外な事に書かれている張本人であるツバキだった。


 本人にしか分からないような癖やプレイスタイル等も言及せず、単純にツバキの名前を出して批判的な内容にすればSNSで拡散し、バズる事が出来ると単純に考えた結果だろう。この人物がわずか数分でガーディアンに摘発されたのは言うまでもない。



 一連のガーディアン摘発の一件は、予想に反してSNS上で拡散している。少し前に起きた『ヴァーチャルレインボーファンタジー』の事件を踏まえると一目瞭然だろう。


 この事件がSNS上で残した爪跡は未だに残っており、関係者以外でもあまり触れたがらない。


 だからこそ、事件に無関係なユーザーが一攫千金や有名人になる為の材料に悪用されている――それが今のまとめサイト情勢だ。


「所詮は――そう言う事か」


 ブラウザゲームのサーバールームでまとめサイトの一つをチェックしていたのは、許可を得て内部へ案内された女性である。


 彼女はガーディアン関係者ではないので、メーカーが信用していると言う事だが――何故にメーカーがガーディアンを敵視しているのかは定かではない。


 外見が長身でメイド服――この外見でガーディアンではないと判断し、メーカーが案内したのはどういう事か?


「何か分かりましたか?」


 メーカーのスタッフが声をかけ、ある物の原因を尋ねる。しかし、まとめサイトにそこまで詳細が書かれている訳がない。さすがの彼女もお手上げか――と思われた。


 依頼は中堅のゲームメーカーで、その内容も『まとめサイトに自社作品を誹謗中傷する記事がある』と言う物。


 ガーディアンが出てくれば話は早いのだが、このメーカーはガーディアンとある事情で仲が悪い。その為、彼女に依頼したのだ。


「このサイトは、いわゆるフェイクニュースを拡散する為のサイトね。それに加えて――」


 彼女が気にしていたのは、ある人物の名前が出ていた事である。しかも、この名前自体は当たり前な人物名で、様々な作品で見かけるだろう。


(マルスの名前を、このタイミングで聞くとは――思わなかったわね)


 その名前は、マルス。あの事件を知るものであれば、いわゆる元凶の存在と言う事で有名だ。実際にマルスを倒したアルストロメリア、この人物を含めて謎の部分は多い。


「何か分かりましたか、ビスマルクさん」


 スタッフの出した名前、それはかつてあの事件にも関係していたと言われている女性、ビスマルクだった。


 目の前でまとめサイトから記事を発見し、その記事が事実かどうかを調べるのが彼女に与えられた依頼と言うべきか。

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