5-2

 ニューリズムゲームプロジェクトのセンターモニター前で様子を見ていたのは、私服姿のハットリ・シズだった。


 何故に彼女は様子を見ていたのには理由がある。それは、このゲームが本当にリズムゲームなのか疑問を抱くシステムがあったからだ。


(周囲のギャラリーも――?)


 センターモニターの方を見ているギャラリーは少ない。むしろ、こちらでデモムービーなどになっているのが原因だろうか?


 モニターはデモも流れているが、プレイヤーのエントリーを知らせるインフォメーションがモニター上部に表示されていた。


 ギャラリーが見ているのはプレイの方がメインであり、プレイ前のカスタマイズ等には興味がないのかもしれない。


 実際にプレイする予定があるようなプレイヤーならば研究等に使えそうだが、ギャラリーのほとんどは見る専門だろうか?


「これで本当にプレイヤー人口が増えているのか――」


 疑わしい、と付け足そうとしていたシズだが、後ろの方を振り向くとその差は歴然としていた。


 少し前はここに対戦ロボット物が設置されていたはずである。しばらくしての筺体移動があったのだろうか?


 現在設置されているのは、ニューリズムゲームプロジェクトと似たようなシステムのリズムゲームだった。これには――別の意味でも驚くしかない。


 同じ筺体が設置されていると錯覚していたシズだが、細かい箇所をよく見るとアバター運用形式は似ているだろう。


 一方で、コースがリアルで表示される訳ではなく、こちらはランニングマシンを思わせるような構図になっている。


(向こうの方が逆に新作と言う事か)


 前に来た際には設置されていない所からすると、あちらの客足が鈍いのは新作だからという原因もあるかもしれない。


 仮にそうだとしても、向こうもジャンルはリズムゲームだ。プレイ人口を踏まえると、急に人が集まったりする可能性は非常に低いだろう。


 収録楽曲次第では人が来るかもしれないが、それでも一時的なもので――ブーストがあっさり切れたりする事も多い。



 シュテン・ドウジの方は、ハンドコンピュータを左腕に装着し、準備万全と言う状態になっている。


 チュートリアルに関しては既に公式ホームページのプレイマニュアルなどをチェックしている関係上、それを飛ばす。


「楽曲のセレクトは、これでいいかな」


 選択したのはレベル5と若干高めの楽曲だが、選曲ミスと言う訳ではない。

それは――しばらくして証明される事になった。


【他プレイヤーのマッチングがありました。マッチングモードに移行します】


 シュテンはメットを装着しているが、インフォメーション表示に視線を合わせてはいない。


 彼女が視線を合わせていた物、それは周囲のモニターだった。おそらく、表示されているのはコース周辺と言う事だろうか。


(ボタンは5つ――このタイプだと、ノーツをラインに合わせるタイプか)


 ハンドコンピュータに表示されているのは5つのボタンにも見えるようなパネルアイコンで、これをタイミング良くタッチするタイプらしい。


 しかし、ゲーム中では自動的に移動するような物ではなく、アバターが走っているようにも見えた。


(特に足を使う様なタイプでもなさそう――)


 足元の方を見ると、特にパネルが表示されている訳ではない。あえて見えるとすれば、プレイする際のセンサーが反応するラインが2メートル位の範囲で展開されていた事か。


 このラインをはみ出すと警告が表示され、マッチングが強制停止する事もあるらしい。


「なるほど。このラインを出ないようにすればいいのか」


 リズムゲームでも転倒防止などの観点でプレイエリアの外に出るのは、非常に危険な行為とされている。


 このタイプの筺体だとプレイヤーが仮にエリアの外に出ても、プレイヤーが転倒する位でギャラリーに影響はないだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る