第5話:新たなゲーマーの参戦

 ブローディアのまとめサイトが話題になっていたのは、丁度――このプレイヤーがニューリズムゲームプロジェクトに参戦した辺りだった。既にディフェンスタイプで思わぬプレイを披露するプレイヤーが話題になっている中で、この人物の登場は周囲を驚かせたのである。


 天気の方は晴れている事もあり、屋外型ARゲームも稼働している中で何故かこのゲームの前にいたのは――。


(まさか、草加市内でも設置場所が少ないとは――)


 彼女がやってきたのは草加駅近辺のARゲームフィールド。あの『オケアノス』だったのである。


 設置されている場所はわずか数か所、別のゲーセンにもあったが混雑しているようでプレイ出来る気配がない。


 このゲーム自体、実は密かにパソコン版とも言えるオンラインバージョンが存在するようだが、こちらはベータテスト中との事。


 テスト段階のゲームよりも、こちらの方が――という考えが彼女にあったのだろう。その彼女とは、プロゲーマーライセンスを持っているシュテン・ドウジだった。


 シュテンの出現を歓迎するプレイヤーもいるようだが、一部のプレイヤーには歓迎されてないようにも見える。


「あのプレイヤー、シュテンでは?」


「別ジャンルでは聞き覚えがあるな。朱転童子か?」


「さすがにプロゲーマーが初心者狩りをするような――」


「リズムゲームに初心者狩りの概念はない。スコアを競う要素はあっても、それでバトルする訳ではない」


 シュテンを遠くから見ているゲーマー二人組は、別ゲームの順番待ちである。そちらのゲームにシュテンが着ていない事に対して皮肉等をつぶやいている訳でもないようだ。


「しかし、リズムゲームのプロゲーマーと言われてもピンとこない」


「プロゲーマーと言えば、対戦格闘やシューティングがメインと言える。リズムゲームのプロゲーマーはマイナーの領域だ」


「そう言う物かね」


「いずれ、リズムゲームのプロも現れるだろうが――」


 さすがにシュテンがプロゲーマー第一号になるとは考えにくいが、現れないとは断言できない。それ位にリズムゲームのプロゲーマーはSNS上でもメジャーと言う訳ではないようだ。



 シュテンの目撃情報を入手し、オケアノスへ駆けつけていたのは――ハットリ・シズだった。


 既に彼女はくのいちモードで姿を見せていたが、一部エリアではデータアクセス的な事情でアバターをカットしなければいけない。


 そうした事情もあって、途中まではアバターモードだったが私服姿に戻ったのは――こうしたルールに従った形だろう。


(まぁ、アバター対応しているARゲームも稼働しているし、オケアノスでは止む得ないのかな)


 シズは周囲のギャラリーの注目は浴びるだろうが、アバターモードをカットする。


 アバターを見る為にはARガジェットと呼ばれるARアバターを認識出来るガジェットが必要なので、一般人にはシズの姿はそのまま見えるのだが――。


 それでもアバターを使うのには理由があって、ARガジェットを持っているプレイヤーに見つからないようにする為である。


 アバターをあえて外で使う人物の中には、コスプレイヤーのようなパフォーマンスで使う人、来店ログを残す為などの理由だろう。


(センターモニターにプレイヤーネームが――?)


 ニューリズムゲームプロジェクトの筺体前に到着し、シズがモニターを見ると――既に見覚えのあるような名前が表示されていた。


 そのネームはカタカナ表記なのだが、はっきりと分かりやすい名前だった。その名前を見て、声が出そうになったが――あえて抑える。


(シュテン・ドウジ?)


 あのプロゲーマーであるシュテン・ドウジ、彼女がプレイを始めたと言うのか?


 リアルでは知名度が非常に高く、リズムゲームでは知る者が多い。しかし、リズムゲームのプロゲーマーは人口が非常に少ないのだ。


 それを踏まえると、ゲーマー知名度はメジャーでもジャンル的にはマイナーと言わざるを得ない。


「使用タイプは――?」


 シズは何か疑問を持った。リズムゲームは使用タイプのようなFPSなどのような分類をするのだろうか?


 まるで、対戦格闘でゲームのプレイ前に使用キャラを選ぶような物である。それをリズムゲームで要求――されるものなのか。


 半信半疑ではあるものの、シュテンのプレイを見てから判断する事にした。下手に独自判断を行うのは逆効果と考えからである。

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