Relate/聖剣使いの英雄譚
未来紙 ユウ
プロローグ
0 『選択』
──人はあんなに簡単に死んでいくものなのか。
理不尽な存在を前にして、たくさんの灯火がなんの抵抗もできずにかき消されていく。
鎧を纏う白髪の老人が、目の前で真っ赤な鮮血を垂れ流している。死んでしまったかと思ったが、ピクリと指が動いた。
生きていた老人に急いで〈
まだ生きている。助かる方法があるはずだと、信じて諦めなかった。〈回復(ヒール)〉をかけ続けるが傷口は塞がらず、血が止まる気配もなく段々と体は冷たくなる。
涙が溜まり、視界がぼんやりと歪む。
──人族の未来は……お前に、託す……。
瞳から光が失われていく老人が、フッと笑いかけてきた。
──任せた……人族の希望……。
全身から力が抜けたように、老人はピクリとも動かなくなる。それでも〈回復(ヒール)〉を使い続けるが、抜け殻となった体に効果はない。
どれだけ信じても、どれだけ諦めなくても、絶対に覆せない不可能はあるんだと──その時に知ってしまった。
──救世主。
老人が最期に放った言葉に違和感を覚える。
守らなきゃいけない。そうしなきゃいけない。そうしないと、あの選択が間違っていたことになる。
この時からだったかもしれない。選択は正しかったのか……俺が、俺自身を疑い始めたのは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます