第四楽章【最終決戦】

第27話【時と闇の神】

2人は目で合図を送りルーヴィヒの、背後に回り込む。そして同時に斬り掛かろうと共に剣を下ろした

その気配に気が付いたルーヴィヒは「うおおおおぉ! ! !」とまた叫ぶ

気が付いた頃にはヨルナミとワタが向かい合っていて一瞬の判断で2人は避けることが出来る

あと一歩遅かったら互いを傷付けていただろう。その油断に追い討ちをかけるように2人の体は何かによって傷付けられる

剣は焔を宿しているので威力は上がっている。当たれば重症では済まないだろう

「何が起こったんだ……落ち着け……」

ヨルナミは必死に考える。考えている最中にもルーヴィヒの攻撃は止まない

ルーヴィヒは叫けんだ

気が付くとまたワタと向かい合っている

かなり遠くに居たはずなのに……何故だ……

本当に何が起こったんだ……

ワタの攻撃を避けながら必死に考える

飛ばす能力なら僕らを闇の彼方に飛ばせばいいだけ……なのにそれは出来ていない

この部屋と何か関係があるのか……

分からない。でも、必ず何かがあるはずだ

そんな事を思っていると再び、ルーヴィヒの能力が2人に降り注ぐ

ヨルナミはたまたま時計を見て能力の影響を受けた。時計は動いてないのにワタがこっちに飛んできた。これに密接な関係があるとしたら……やつの能力は時を止める事か。叫ぶ時、何かが起こって時が止まるんだ

そういう事か

納得したヨルナミはワタに伝える

「ワタ! やつの能力は時を止めることだ! 止まるのは叫んだ時! 」

ワタも納得しどうすればいいのかを考える

「叫んだ時なら、喉を潰せばいいんだな。ヨルナミ! 喉仏を狙うぞ! 」

「おう! 」

ワタは短剣、ヨルナミは剣を握りルーヴィヒに立ち向かう

その間何度も何度も時を止めたが2人は完全に読めるようになっていたので避ける事が出来る

「くっ……予の攻撃が当たらぬとは……それならこの力を使うしかないか」

ルーヴィヒはいきなり呟き始めると世界はさらに真っ暗になっていった

漆黒よりも暗くもうこの世の終わりと言わんばかりになっていた

ヨルナミはその暗くなる一瞬を見計らって焔の灯りを強くした

とても明るく綺麗な焔紅に染まる

今までよりもとても綺麗でとても神々しい

ワタもそれに便乗をして体に焔を宿し全てが山吹色に染まった

普通なら髪や目のみだが体全身が山吹色になり世界の中心になったかのような明るさになり、ルーヴィヒに斬りに掛かる

「無駄だ。この闇はやがて世界を包む。予を殺さぬ限り無駄なのだ! そして闇は弱者の魂を喰らい、焔を宿せる人間のみが生き残る世界になるのだ! 」

やっぱりこいつはやばい。自分の目的の為なら弱者を利用してしまう

そんな目をしていた

「いよいよ、貴様らが死ぬ時が来たのだ! 冥土の土産に教えてやろう。予は時と闇を司る神なのだ! 神は神にしか殺せぬ。無駄なのだ! 積み上げてきた時間も何もかも! 貴様らには世界は救えないのだ! 」

神だと……

でも、それでも僕は立ち向かうしかない

「無駄……? そんなの誰が決めたのさ? 」

ワタは無駄という言葉に反応を示す

「予が決めたのだ。無駄というのはな! 」とルーヴィヒが言おうとしたらワタは大声で「無駄ってのはな! ぶち壊す為にあるんだよ! 何をやっても出来ない。役に立たない。そんな事を言っているのはお前の弱者のみだ! 無駄というのは自分のために弱者を利用し、自分が出来るはずのない事を否定する為にある言葉なんだ! だから無駄じゃない! 俺らが相棒とあいつと、あの人と積み上げてきたものも無駄じゃないんだ! だから俺らはお前をぶっ殺す! 」

ワタはもう出る力があと少ししかない事にヨルナミは気が付いていた

何とかしてワタを止めないと行けない。それでもなんて声をかければいいのか分からない。ずっと一緒に居るからここで止めたらまた喧嘩になるかもしれない

でも……

その時聞いた事のある声がヨルナミに聴こえた

「ヨルナミ。もし、またワタが止まらなくなったらお前が止めろ。相棒だろ。わいはもうすぐ居なくなるかもしれない。だから……」

かつてキロルがさりげなく掛けた言葉だった。あの時は意味が分からなかったけど今やっと意味が分かった気がする

「キロル……。分かったよ、君の言う通りにするよ」

ヨルナミはギターを取り出しそのギターに焔を宿したのだ

ギターは紅くなり世界を照らす太陽のようになった

ヨルナミが弾き始めると暗黒に包まれた世界の色は変わっていく

ヨルナミは遂にこの力は自分の為にあると言うことを確信した

周りは闇に包まれつつも自分と母が居た世界が見えた

「そうか……これは僕とお母さんの絆なのか……お母さん、ありがとう」

その後自分の世界で本格的にギターを弾き始める。とても速く指が、肩が取れそうな勢いだった。そんな事は気にせずヨルナミはとにかく弾いていた


君はまだ生きていて

僕らは一緒に生きて帰る

姉や教祖の娘と

武器職人と技師と一緒に

ご飯を食べよう

こんな戦い早く終わらせて


その力はワタだけではなくルーヴィヒにも降り注ぐ

ワタは精神面や体力の回復が見られたがルーヴィヒは逆にダメージを受けた

そのダメージにより怯んだルーヴィヒをワタは突き、喉仏を削り取る

喉仏を斬られたことによって声が出せなくなり時を止めることが出来なくなったルーヴィヒは鎌の斬撃波を飛ばすようになった

その斬撃波は黒くとても速い

こんなのが暗闇で撃たれたから避けれなかったのだろうか。1回目以外飛んで来なかったからたまたま避けれたのかは分からない。でもこれで攻撃は通りやすくなったはず

様子を見ながら判断しよう

「これで……ルーヴィヒに勝てるかな……ワタ! 更に攻撃を! 」

「おう! 」

2人は更に攻撃を仕掛け始め、鎌の攻撃を弾き2人は飛び斬りつける

ワタは身体能力が上がっていた為、更なる攻撃を見せた

「予は……ここでは死なぬ……お父上の様な……そんな平和ごとはごめんだ! ここで殺られるもんか!」

ルーヴィヒは更なる進化を見せた

部屋中の時計を取り込み、天使のような真っ白い翼が片翼に生え、髪の毛は白くロン毛になる

その様子はパッと見た感じがヨルナミに本当にそっくりだった

「お前らがその気なら! 予も本当の力を使わせてもらう! 」

ルーヴィヒは自分の身長よりも長くなった鎌を振り回しながら2人に迫って来た

2人は何とか攻撃を避けつつも攻撃を交わしている時にヨルナミは何故か1つの感情に襲われてしまった


やっぱり、こいつの血が流れているのか……。僕は……何者なんだ……


深く考えてしまい身動きが取れなくなるヨルナミを見てルーヴィヒは攻撃をしに鎌を構え光の速さの様に迫って来る

その音に気が付いたヨルナミはもうダメだと思い目を閉じた

刺されたかと思って恐る恐る自分のお腹を見てみても刺さっては居らず無傷だった

下には血がただれており、とても怖くなった。この部屋はヨルナミと、ワタそしてルーヴィヒしか居なかったからだ

前を見てみるとヨルナミを庇い、鎌の鋭い所が腹を貫き余りにもの痛さから涙が出たのかワタが立っていた

「ヨルナミ……なんで戦い中に止まるんだ……? 痛いじゃないか……」

ワタは肺が殺られていて呼吸がまともに出来ないのか声がとても小さく掠れていた

脈もどんどん無くなっていく

「なんで……なんで僕を庇ったの? 僕の方が……」


この時ヨルナミは1つ言葉を思い出した

牢に入れられ絶望した時、伊吹さんが死んだ時ワタが声を掛けてくれたひとつの言葉

「俺の前で弱音は吐くな。吐いたら殴るからな」

いつもこの言葉に励まされ僕は居た

これが僕と君の絆なんだ

この事がきっかけで今があるんだ……これで強くなれたんだ……


「お前は……生きるべき人間だ……俺はもう……」

「僕の前で弱音吐くなよ! 君がそう言ったんだ! 君も守れよ! 一緒にまた……ご飯を食べるって……」

「そんな約束したな……もう分かるんだ。俺は助からない。自分の最後ぐらい分かるよ。」

「僕は助ける……」

ヨルナミはそういいギターを弾き始めようとした

「無駄だって! 」といいワタはギターを投げた

「いいか、よく聞け。お前はこれから世界に音楽を広めるんだ。俺の分まで生きてまたあっちで会ったらキロルと……飯を一緒に食おう。ひとつ心残りがあるとしたら……お前と一緒に帰れなかったことだ。帰ったらみんなに言ってくれ……ありがとうと……」

ワタはその言葉を残し、ゆっくりと目を閉じた

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