ちちぶ天狗

第20話 将軍によって小島が改造された話【トモ・将軍・大地・校長】

「小島ちゃんって、ほんとバカだな～(笑)」

「え！お前が言う？！まぁ、いいけど…

でさ、将君の話に戻るけど、俺が6年生になったら、将君は当然中学に入るわけで、一緒に遊んだり野球することもなくなって、ほんとつまんなくなったんだよね。

別にまわりの奴がつまらないというわけではなくて、将君が面白すぎたから抜けた穴が大きすぎてさ。

で、俺がいた少年野球のチームは、埼玉でもずっと3本の指に入るくらい強かったんだけど、俺が6年の時は、チーム史上最悪のハズレ年と呼ばれて、めっちゃ弱かった(笑)。

その原因は俺なんだよね。

肩が強かったからピッチャーをやらされてたけど…コントロール悪いし、すぐバテるし…しょうもなくてさ。

さすがに見切りをつけられて最後の方はキャッチャーをやってた。

その時にバッテリーを組んでいたのが、隣の小学校の大地という奴でさ、今は別の中学だからトモは知らないだろうけど、大地とは仲がよくて俺の一番の理解者だったな。

で、よく『小島は、やる気さえ出せばスゲー選手になるんだから頑張れよ～』と言ってくれたのに、将君がいないとどうも気分が乗らなくて、4番で副キャプテンのクセに、めったに練習に行かずに地元のソフトボールを本気でやってた(笑)。

ちなみにソフトボールは、埼玉で3位になりました(笑)。

そんな俺に大地は『中学は違うチームになるけど高校行ったらまたバッテリーを組もう！』とまで言ってくれたのに、俺は適当に『いいよ～』って答えてたんだよね。

そんな適当な感じだったんだけど、やっぱり野球は好きだったから、中学で将君がいる野球部に入部したわけ。

そしたら、すでに将君が支配する野球部が出来上がってた。

3年生はいたけど、やる気のない奴は圧倒的暴力で容赦なく部活に来れなくしてたみたいだし、監督がいなかったけど、将君が校長を監督に指名してさ。

もちろん校長が練習に来ることは一度もなくて、部費で買えない分のバットやらボールやらを校長の自腹で買わせてた…というか、その為に校長を監督に指名したんだろな(笑)。

そんな感じで、将君がエースで4番とキャプテンと監督の4つの役割を1人でやってたわけ。

完全に誰も逆らえない体制になってた(笑)。

そして3年が2人しかいないから、俺は入部早々にキャッチャーでレギュラーになってさ。

ピッチャーの将君にボールを返す時、将君の構えたグローブから少しでもズレたら将君は絶対ボールを取らないわけ。

それを毎回ダッシュで取りに行かされてさ。

少しでも歯向かえば『グランド一周走って来い！』と言われるか蹴られるかのどっちかなんだよね。

そのお陰で俺のコントロールは随分良くなった。

あと俺が編み出した技が…

将君の身体や顔面に向かって、おもっいきり投げる事！

そうすればボールを取らざるを得ないからさ(笑)。

毎回全力で返球するから、もともと肩は強かったけど、さらに強くなった。

あと、俺は昔から足が速かったこともあって、将君の命令でキャッチャーなのに打順を1番にされて、さらに左打ちに変えられた。

そしてボテボテのショートゴロを打つ練習をめっちゃさせられた。

まぁ、ボテボテのショートゴロを打てば、俺の足でだいだい内野安打になったしね。

そして塁に出れば盗塁…そして盗塁…とにかく馬みたいに走らされた。

それに将君は少しのミスも許さなくてさ。

ちょっとでもミスすると、すぐに『グランド一周走って来い！』と言われたから、1年の時だけでざっと1000周は走らされたな。

しかも走らせるのは俺だけ(笑)

休みの日でも将君から電話があってランニングに付き合わされた。

そのおかげで体力は半端なく付いた。

逆らえないから、とにかく走った中学1年だったわ。」

ちなみに小島の50メートル走のベストタイムは5秒8。

100メートル走のベストタイムは11秒4である。

そして小島の通っていた中学は、生徒数が少ないこともあって陸上部がなかった。

なので陸上大会は、出たい人が出ると言うのが学校の方針だった。

小島は、授業をサボれるという理由で毎回陸上大会に参加していたけれど、100メートルで4大会連続秩父で優勝している。

そして県大会も準決勝まで行っている。

もちろん陸上の練習などしていない。

授業をさぼりたい生徒の飛び入り参加の記録である。

こうして小島は、将軍によって体力と肩とコントロールを鍛えられ、高校へ進学するときには、数々の野球部と陸上部のスカウトの目にもとまり学校選びに悩むことになる。

小学校の時の大地の予言とおりになるのだけれど、停学中の当時の小島は、そんなことを知るよしもなかった。