第3話 怖い親父から譲り受けたもの【小島父・ポピー】

小島の父親は、中学生の頃から家の大工の仕事を手伝っていて、あまり学校へは行かなかった。

そして、そのまま大工一筋の人生を送る。

とにかく真面目な男で、女遊びどころか軽い下ネタすら言わない。

そして娘が誕生日のときに「もう1人弟が欲しい」とねだられたので、作る予定はなかったけれど娘のために真面目に頑張った。

そして36歳の時に小島利彦が誕生する。


小島にとって父親は、とにかく怖い存在だった。

学校では威張っていて一度も泣いた事がなかった小島も、父親に怒られて殴られたときは泣いた。

そんなときは、もっぱらポピーのところへ行って慰めてもらった。


そんな父親は、小島が物心つく頃には、頭が派手にハゲあがっていた。

前から後頭部にかけてズル剥けだった。

バーコードにすらならない毛の量なのに、月に4000円かけて床屋行っていたことが小島には不思議でならなかった。


そんな父親と小島は、1度だけキャッチボールした記憶がある。

父親は野球をしたことがないこともあってか、3球目でボールが父親の顔面に当たって終了した。

小島は「たった3球だけど、親父とキャッチボールをしたことがあるとないでは全然違うよね!」と思うようにしている。


そんな父親は、小島が小学校へ上がる前に一緒に牧場へ行ったこともある。

小島をおんぶしながら、父親は馬の特徴を息子に教えた。

「トシ、馬っていうのはな、後ろが見えないから怖いんだ。だから急に後ろに立ったり、ケツを叩くと後ろ足で蹴り上げられるから絶対後ろには立つなよ!」と言いながら、馬のケツをパンパンと2回叩いた。

次の瞬間、馬の蹴り上げた足が父親の腹に直撃し、おんぶしていた小島もろとも蹴り飛ばされた。

幼い息子を下敷きにしたまま、父親は悶絶していた。


そんな父親のことを思い出すたびに、小島は今でも笑ってしまう。

そして笑いの為には体を張るという点において「やっぱり親父と俺は似ているのだろうか…」と思うのであった。

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