第20話決戦前夜
模擬戦を終え、俺はそれぞれに見合った能力を付与した。
見た目にこそ変化はないものの、全員が一段階上レベルが上昇したと言っても過言ではないだろう。
正直俺もどのくらい上昇しているか試してみたい。
なのでこう提言した。
「さてお前ら、成長を試してみる気はないか?」
全員が俺の方を見て、頭の上にはてなマークを作っている。
「試すとはどのようにしてでしょうか?再び模擬戦でもなさるのですか?」
キツケがそう質問してきた。
「いや、違う。俺にその実力を直に見せて欲しいのだよ。それはつまり……俺と戦おうという……「「「すみません、許してください!!」」」……そんなに声を揃えていうものか?」
「いやいや、いくら私たちが強くなったとはいえ魔王様と戦うのはいささか勘弁していただきたいことですよ」
流石に強くなったからとは言っても一対一の戦いは嫌だと言っているのだろう。
それに関しては俺と直接戦っているドゴラとワンズがこれでもかってくらいに首を縦に振っているのでなんとなく察した。
「なに別に一対一の戦いをしようと言っているわけではない。なんなら全員でかかってきても良い「「「無理です!!」」」……お前らプライドとかないのか?」
「プライドよりも命が大事だと思うのですよ」
「我もまだ死にたくはない」
「プライドじゃ飯は食えませんよ魔王様」
別にそこまで嫌がることはないじゃないか……
大切な部下を死なすことがあるわけがないのに。
だがもう少しいじめてみるか。
などと思っていると、
「魔王様、ゴブルが結界に向かって話しかけていますがいかがいたしましょう?」
フレンがそう言った。
「音声だけこちらに届くようにはできるか?」
「もちろんです。えっと少しお待ちくださいね……よし、これで……『おい、聞いてんだろ!ここを開けやがれ!!』……うるさいですね、消しますか?」
「いやいや、消したらダメだろ。わざわざ敵地に来ているのだ。何かしらの用件があるのだろう。開けてやれ」
フレンはかしこまりましたと言って結界をといた。
そしてしばらくしたのち、入口の扉が開きゴブルが入ってきた。
「邪魔するぞ」
「かまわんゴブルよ。して、何用だ?」
「ああ、だいたい察しはついていると思うが、宣戦布告に来た」
思っていたよりも早いが概ね想定通りの内容だった。
これから3日後、場所はガラデ平原。
自らに正義があるとするならば逃げずに対峙しろ。
とのことだ。
「まぁ、いきなり宣戦布告して準備期間を3日しか与えないあたりゴズさんの卑怯なところだが、仮にも魔王を名乗るならばそれくらいはなんともない弊害だろう?」
ニヤリと笑うゴブル。
なかなかに人を乗せるのがうまい。
最弱種がゆえに生き方を心得ているのだろう。
ゴズの下に置いておくには少しもったいない。
「もちろんかまわん。なんなら3日後とは言わず明日でも良いのだぞ?」
「は、強がらなくてもいいぜ……と言いたいところだが、あんたは本気で言ってるんだろうな。だがこちらにも準備がある。だから3日後だ。……あとこれは親切心で教えてやるが、こちらには人狼族、龍族を除いた全ての十二翼が参戦する。あんまり舐めてかかると痛い目を見るぞ?」
「忠告ありがとう。肝に銘じておこう」
「……これでも余裕そうな顔をするのか。まぁいい。じゃあ3日後、平原で待つ」
そういうとゴブルは踵を返し、部屋から出て行った。
……3日か。
まずは軍の整備からだな。
「まったくゴズの考えることは卑怯で仕方がないな。あやつは正々堂々と言う言葉を知らぬのか」
「そう言ってやるなドゴラよ。あれも生きるのに必死なのだろう」
「自分の欲に溺れてるとしか思えないけどね」
まぁたしかに卑怯な奴と戦うには警戒に越したことはない。
場所まで指定してきているのだ。
おそらく何か罠を仕掛けていると考えるのが妥当だろう。
「さてお前たち。戦いまで3日だ。それまでにやることは、戦力の集結、装備の調達などなど色々あるぞ。それぞれ族からどれだけ戦力を出せるか報告せよ」
「人狼族は計二千といったところだ」
「龍族、計五百であろうか」
「吸血鬼族はまだ先の戦いの傷が癒えておらずせいぜい二百が限界です」
「サキュバス族は族長の私を含め、戦えるのは三十くらいです。もともと戦闘には向いてない種族ですからねー。あ、でも回復要因ならプラスで百は出せますね」
「マホはぁー、私だけぇー」
「スライム族は五千はいるけど、みんな弱いから戦力にならないと思うよー」
なるほど、まともに戦える戦力は多く見積もった三千といったところか。
おそらく向こうはこれの数倍、下手をすれば数十倍の可能性もある。
戦力だけ見れば圧倒的に不利といったところだな。
だがそれがいい。
圧倒的不利を覆してこその王だ。
それに数は負けていようが、駒の有用さで言えば劣らないだろう。
ここにいる者たちにはそれだけの強さがあると言える。
一騎当千くらいには戦えるだろう。
しかも俺と言う最強もいる。
「魔王様、顔が笑っていますよ」
フレンがそう言った。
「そうか?まぁたしかに楽しみな状況ではあるがな。少しばかしは本気を出して戦えることを期待したいところではある」
「魔王様が本気を出したら、ガラデ平原ごと吹き飛んでしまうのではないでしょうか?」
「流石にそれは無理で……なぜ全員が頷いているのだ?」
俺に平原丸ごと吹き飛ばす力などあるわけがないだろう。
しかしこいつらそれができると思ってやがるのか?
「まぁいい。ではそれぞれ戦の準備に取り掛かれ。族の仲間をこちらに呼ぶ際は俺に声をかけろ。転移魔法で全員を運ぶ」
「「はっ!!」」
そしてそれから3日後、ガラデ平原に陣を展開した俺たちを待ち受けていたのは想像を遥かに上回る敵の数であった。
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