第17話模擬戦①
「じゃあ最初はドゴラとスラメ」
「はい!」
「うむ!」
魔王の部屋の中央に特設リングを設置し、一応そこから出て、地面についた場合はリングアウトで敗北だ。
もちろん上空はどこでもセーフ。
「まぁあくまで模擬戦だ。相手を殺さない程度には実力を見せてくれよ」
俺がそういうと、2人は軽く頷きリングに登る。
「じゃあ始め!」
開始の合図と同時に槍を構えたドゴラがスラメに向けて飛び込んだ。
「悪いがスラメよ、一瞬でけりをつけさせてもらう。唸れ我咆哮の槍、ゲオルギニス!!」
ドゴラの持つ槍が吠えた。
まるで槍の先端に龍の頭があるかのように。
そして高速の突きを何度も繰り出す。
凄まじい速さと正確さ。
スラメに回避する隙間を与えない。
ものの数秒でスラメは霧散した。
そういう表現が正しいだろう。
跡形もなく消えたのだから。
リングの上に漂うのは煙だけ。
「すまないなスラメ。我も魔王様に実力を示したいのだ。以前能力が欲しければ実力を示せと言われたからな。それなしでもらうことは我が真髄に反するのだよ」
突き出しをやめた態勢でドゴラはそう言った。
いや、たしかに昔そう言った。
だがなドゴラ……お前が相手にしてるのはスライムだぞ?
それで実力云々を語るのは恥ずかしくないのか?
それに……
「ぬ?やたら煙が晴れぬな……どうも我にまとわりつくような……」
「捕まえたよ!ドゴラ!!」
「な!に!……ゴボォ」
スラメは俺が能力を与えていることを忘れたのか?
そうスラメはドゴラの槍を受けるどころか自分の体を霧に変化させて全てかわしたのだ。
自分の能力を理解した最高の回避方法だ。
こうなればドゴラが槍でいくら突こうが無意味である。
そしてその状態でドゴラに近づいて、元に戻る。
しかも体内にドゴラを取り込んで。
完璧な不意打ちだ。
素直に感心した。
さてどうするドゴラ。
このままだとまずいぞ。
(まずいぞ……体がしびれてきおった…スラメまさか体内で我の動きを完全に奪う気だな!)
そうスラメは体内に取り込んだものに一定の効果を与えることができる。
メリザには回復をそしてドゴラには痺れを。
「どうドゴラ?僕強くなったでしょ!もうただのスライムなんかじゃないんだから!!」
(身動きは取れまい……ならば!)
痺れが周り動かないと察したドゴラはある脱出方法を思いついた。
「龍化!!」
そう大きくなることでスラメからの脱出を図った。
「大きくなることなら僕も負けない!!」
龍の大きさになるドゴラに合わせてスラメもサイズアップする。
しかしそれには限度があった。
「……んー!もうこれ以上は無理ー!!」
そう言ってスラメはドゴラから離れた。
『ふぅ……なんとかなった。さてスラメ、我がこの姿になったということはどういうことか分かるな?…………もう加減はできんぞ』
ドゴラは人型に戻ったスラメを見下ろしそう言った。
人型の少女にドラゴンが手加減しないと言っている光景だけ見るとなんとも言えないが、これは勝負あったか。
俺がそこまでと言おうとした時、その気配を感じたのかスラメが
「魔王様!まだ終わってないよ!!」
そう叫んだ。
『何を言うスラメ。これ以上はもう無理であろう?』
「まだ……まだ終わってない!」
スラメ……まだ何か隠しているのだな。
「いいだろう。ならば継続だ。ドゴラ本気でいけ」
「ありがとう!魔王様!じゃあドゴラいくよ!変化!」
スラメは徐々に姿を変え、ドゴラよりは小さいが水色の龍へと姿を変えた。
それに焦ったのはドゴラ。
(くっ……まだ痺れが取れておらんのに龍の姿のやつを相手にせねばならんとは!!それ以前にスラメの変化の能力が万能すぎる)
『うわー!すごい!僕空を飛んでるよ!!』
純粋に喜んでいるスラメ。
いや今は戦闘中だからそっちに集中しような。
しかしドゴラの動きが悪い。
いまだに痺れが取れてないと見える。
となると
『くらえ!』
ドゴラに向けて息吹を吐くスラメ。
もう完全にスライムの域を超えている。
それに対応する様に地上から息吹をぶつけるドゴラ。
痺れて飛べない状態なので完全に固定砲台と化している。
それに気づいたのかスラメはドゴラの背後を取り
背に向けて息吹を放出。
それは見事に命中し、背を焼く。
『ぐっ!!おのれスラメ!!』
小型の龍だけあって小回りが効きドゴラはスラメを捉えることができない。
『……くっ、、魔王様、我の負けだ。もう手がない』
苦虫を噛み潰したような声でドゴラは自分の敗北を認めた。
その潔さ俺は嫌いじゃないがな。
『やったー!僕の勝ちだ!!』
そう言って元の少女の姿に戻る。
本当に無邪気な姿だな。
「スラメ、強くなったな……我を負かすとは」
「そんなことないよ!僕が強くなったのは魔王様のおかげだから!ドゴラも魔王様から能力をもらえば僕以上に強くなるよ!」
「そうだといいがな……しかし今の我の力で勝ちたかったのだ」
やはりかなり悔しそうだ。
元十二翼だったプライドもあるのだろうな。
「まぁいい勝負だったよ。ドゴラ次に期待するぞ」
「はっ!」
膝をつき頭を下げる。
まぁこの2人は大した心配はしていない。
問題は……
「さぁ私たちの番だマホ!魔王様への最後の挨拶でもしたらどうだい?」
「あはー!面白いこというねぇー。フレンこそ挨拶しておいた方がいいんじゃないー?跡形もなくきえるんだからさぁー!」
……やる気……いや、殺る気満々じゃねぇか。
「おーい2人とも殺すのはなしだぞ……」
果たして俺の声は届いたのだろうか。
さぁ問題児たちの戦いの始まりだ。
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