第42話高速レベリング

ハーンの街から盗賊団のアジトを目指す前に、俺達はドラゴンを狩りまくった。


おかげでイェスタのレベルが72に、俺もレベル70になった。


エリスとアルベルティーナはレベル60だ。


エリスやアルベルティーナと俺の間にレベル差がうまれたのには訳がある。


俺がレベルドレインの魔法を覚えていたからだ。


レベルドレインの魔法とは対象の魔物のレベルを1に下げてしまう。


俺にはレベルドレインをかけたドラゴンから膨大な経験値が入ってきた。


残念ながらこのドラゴンを倒しても、俺以外の他のみんなには経験値が入らない。


その為、最後の方は止めてしまったが、お陰でドラゴンを驚くほど簡単に討伐出来た。


実際、レベルドレインを使ってレベル1まで下げたドラゴンの強さは、ハイレベルのオークやゴブリンとあまり変わりがない。


『このパーティで勇者パーティに勝てるだろうか?』


もうすぐ俺は勇者エリアスと対峙する事になるだろう。仮に俺が勝てなくても、イェスタが勝ってくれるだろう。


イェスタは言った。


「おそらく今の私は勇者エリアスのレベルを超えました。彼の剣速よりも私の方が早いでしょうし、戦闘スキルも魔法も同等くらいはあるでしょう。しかも、クラス3のルーンナイトとクラス4の虚数戦士の加護が掛け合わされています」


俺の付与したクラス4のタレント虚数戦士、その加護はイェスタの元々持っていたルーンナイトと共存する。


この二つのタレントの加護は足し算では無い、掛け算なのだ。


当然、アルベルティーナも同様だ。彼女はクラス3のウォーロックのタレントを持つ。


その身体能力はクラス2の戦士系のタレント同等、その身体能力もやはり、クラス4の虚数戦士の加護に乗算される。


そして、これは通常のタレントを持つ者も同様なのだが、ジョブのクラス4の補正も乗じられた上で加わる。


俺の虚数戦士のタレントを付与された者は、勇者をも上回る戦士となり得ることが可能なのだ。


心配なのはエリスだ。彼女のタレントは『良妻賢母』。


家庭生活を送るうえでは最も優れたタレントだ。世の女性の憧れの的。


ただし、戦闘には全く向かない。家庭生活と戦闘は全く異なるのだ。


当然、『良妻賢母』に戦闘用の加護は無い。


エリスはただのクラス4の『虚数戦士』なのだ。


加えて、俺にはエリスが人を殺したり、傷つけたりすることが出来るのかが不安だった。


多分、エリスは人を殺せない。


かと言って、別行動させてはかえって危ない。


勇者パーティは4人で俺達も4人。もし、エリスが剣豪とぶつかったらまともに戦うことが出来るだろうか?


相手がアリシアやベアトリスだったとしてもエリスに二人が斬れるだろうか?


『俺が早々にエリアスを倒すしか無い』


少なくとも、エリスが簡単に負ける事は無い。倒す事は出来なくても、簡単には負けなければいい。エリスのクラス4の虚数戦士の加護は通常のクラス4よりも大きい。


剣豪ですら、簡単には倒せないだろう。ならば、俺が早くエリアスを倒せば、問題は無い。


イェスタは更に言った。


「今のレオン殿の力はレベル70のエリアスとほぼ同等です。戦士としても、魔法使いとしても。それは私が保証します」


イェスタは俺達に剣技を教えてくれた。


特に俺にはエリアスの戦い方を教えてくれた。俺にはイェスタから得た、エリアスの戦術の知識がある。


エリアスには俺の知識は無い。イェスタの言う通りなら、勝機は恐らく俺の方にある。


そろそろ廃城だ。ここで俺はエリアスとの決戦を迎える事になる


俺はそう予想していた・・・


☆☆☆


「エリス、一つだけ約束して欲しい」


「なんですかレオン様」


「エリスは人を殺した事がない。でも、この戦いは相手を殺さないと自分が殺されるかもしれない。たとえアリシアやベアトリスが君の敵になっても、危なくなったら迷わず殺して欲しい」


「レオン様、人を殺す事は......」


「エリス、君がいなくなったら俺はどうすればいいんだ?」


「......」


「俺の為に殺してくれ。例え相手が、アリシアでもベアトリスでも」


「レオン様」


「頼む」


俺はエリスの顔に近づくと、唇に優しくキスをした。

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