第41話シュッツトガルト私兵討伐

「レオン、お主には悪いが、ベアトリスが再び私達の前に立ち塞がったら」


アルベルティーナはそう言った。


無理もない、彼女にとっては他人だ。そして、アーネを殺したのはベアトリスなのだ。


「分かってる。また俺たちに前に現れて敵対して、その結果君に殺されたとしても、君を恨んだりはしない」


「お主はどうする?」


「最低でも捕縛はする」


俺は殺すとは言えなかった。盗賊なら殺しても合法だが......


「それでも良い。ただし、邪魔はするでないぞ」


「ああ、わかってる」


「アリシアもそうだ。彼女は助けてくれたが、勇者パーティの一員には違いないのだから」


「ああ、わかってる。だけど、アリシアは以前の彼女に戻ったみたいだ。もうじき勇者パーティを抜けるだろう」


「そうか? 俄かには信じられないが。彼女はお主の婚約者なんだろうが? 今でも......それをあんな」


アルベルティーナは言いよどんだ。


「スマン、お主が一番辛いよな。あれで勇者パーティなどとは、勇者エリアス、本当に不愉快だ。あんな奴よりお主の方がよっぽど良い。あの婚約者も妹も私には到底理解出来ない」


アルベルティーナは不快そうに言った。


正直、今でも、二人に裏切られた事が信じられない。


だが、事実だ。


「それはそれとして、新情報だ。アンダースから情報が入った。例の捕虜が喋ったぞ。やはり、商人たちを襲っていたのはシュツットガルト公だった。そしてアジトもわかった。場所はこの街の北に位置する廃城だ」


「じゃあ」


「そう、そこを急襲して、盗賊団、いや、シュツットガルト公の私兵の将、ベリアルを捕らえたいのだ」


「ベリアル?」


「シュツットガルト公の私兵の将が盗賊団の首領ベリアル。捕虜からの情報だ」


「例の捕虜はどうしたんですか?」


「金を渡して逃したそうだ」


「逃していいんですか?」


「監視はつけている。嘘だったら、再度捕らえるまでのこと」


なかなかのお手並だ。アルベルティーナの幼馴染、アンダースは中々のやり手らしい。


「わかりました。では、俺達も討伐に参加させてください」


「もちろんお願いする。正直、アンダースと私の手勢だけでは心許ないからな」


アルベルティーナは自分の領地から手練れの私兵と金等級の冒険者を多数呼んだ。


加えてアンダースの私兵と、この街のAクラス冒険者達だ。


「もちろんです。俺も元々勇者パーティの一員です。こんな事は許せません」


「その勇者が黒幕の様なんだがな」


「えっ?」


俺は驚いた。偽の盗賊団の黒幕が勇者エリアスだって?


「驚くでない。エリアスは貴族に乗せられて動いているわけでは無い。寧ろ乗せられているのはシュツットガルト公や貴族達の方なのだ」


「そ、そんな」


「私は先日の勇者エリアスを見て確信したぞ」


確かに今のエリアスなら、それ位やりかねない。


俺の知っているエリアスは爽やかな好青年だった。


もちろん、俺が奴隷に落とされて売られた時に見せた顔の方が真実なのだろうが、しかし、ここまでの悪事を働くとは......


「そうかもしれません。彼が俺にした事を考えれば」


「ああ、ほぼ間違い無い」


俺は、少し、嫌な予感がした。では、そのアジトにエリアスもいるのではないか?


もしいたとしても、戦う他に選択の余地は無い


「だがベリアルは強いぞ。ベリアルはクラス4の剣聖だ。本来なら王都で要職につくべき身だった。しかし、4年前に貴族同士の争いに負けてしまい、シュツットガルト公の私兵にまで身を落とした。今のレベルは80を超えるらしい。先日の剣豪とは比べ物にならん」


まずはベリアルとの戦いに勝つことを考えなければならない様だ。


ベリアルに勝てない様では、エリアスには到底及ばない。


「それならば、少しでもレベリングをした方がいいのでは?」


「確かにな。私も実戦経験が少ないから」


「みなさん、レベリングが必要ならドラゴンを倒しましょう!」


イェスタが叫んだ。どうやらドラゴン討伐の趣味が出た様だ。


「いい考えかもな。北の廃城の近くには未討伐のドラゴンが多数いる」


「では、願ったり、叶ったりです」


「では、北の廃城の攻撃前にドラゴン討伐を行おう」


「「わかりました」」


俺とイェスタは同時に返事をした


「私も同行します」


エリスが言ってくれた。


「エリス、頼む。君の力も借りたい。しかし、今の戦闘力では心許ない。もっと実戦経験を積んでないと俺は心配だ」


「わかりました。私もドラゴンを倒します。レオン様、エリスの事心配してくれてありがとうございます」


「ああ、頼む」


俺の頬が緩んだ。エリスはいつも俺の心を癒してくれる。


こうして俺達は北の廃城を目指す途中でドラゴンを狩った。

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