DESIGNERS!!!
初期タッ君
第1話・1年前
歓声の中にいる。
四方八方から打ち付けてくる光の中で、真影桜(まかげさくら)は遭難者がSOSの旗を振り回すように、必死に右手を振る。
手の中で熱を帯びたペンライトが大きく回転し、光の輪を描いた。
天井の照明が不意に回転し、ドームの奥、『きんいろペンギン 4thAnniversary』と垂れ幕の下がった、濃白のスモークが立ち込めている舞台に、極太の光を突き刺し、
スモークの裏側に5人のシルエットが映る。
あちこちから悲鳴と絶叫が上がる。
桜も負けじと声を張り上げる。
あのスモークの中に、夢枕彩音(ゆめまくらあやね)が、あやっぺがいるのだ。
舞台から、興奮がうねりとなって押し寄せてきて、周りのペンライトが狂ったように点滅する。虹色の波が幾重にも折り重なっているように見えた。
周囲のボルテージがさらに上がり、全身にスピーカーを押し付けられているかのように、体ががくがくと震える。音圧の海に放り込まれた気分だ。
不意に、自分が何をしているのかわからなくなる。
泣いているような気がするし、笑っているような気もする。
感情の高ぶりに脳が追いつけていないのか、顔中の筋肉が収縮したまま固まって、無理やり笑っているかのような表情になった。
感情の高ぶりを、なけなしの理性を振り絞って抑え込む。
正気を保つために、桜は力の限り叫ぶ。
スモークがゆっくりと晴れていく。
光の中から、ゆっくりと、ゆっくりとあやっぺの姿が現れて、それと同時に桜の何かが決壊した。
目から滂沱の涙が溢れる。
必死に目を擦りながら、桜は狂ったようにペンライトを振る。
自分はここにいるのだ。
届け、届いてくれ。
あやっぺが、こっちを見て笑った気がした。
天使の微笑みが、桜の脳を焼く、
泣きながら笑いながら、桜は光の中に立っている。
夢枕彩音と共に、光の中に立っている。
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