TOKYOサイキック
武器YO
EP1 サイキックの仕事
プロローグ 真夜中の訪問者
夜が怖い。どんどん暗くなるし、もしかしたらこのままずっと明けないかもしれないという恐ろしさをはらんでいる。
夜中の2時を過ぎようとしているにもかかわらず、恵の部屋は明かりがついており、控えめな音量ながらもK-POPアイドルの楽しげな音楽が流れている。今のクラスで一番人気のK-POPグループ。聴いているとなんだか守ってくれそうな気がするのだ。
そろそろだ。ベッドに寝て布団に包まり、息を潜めて「その時」を待つ。
鍵はかけた。そんなものは全く意味がないかもしれないとか、次の瞬間には目の前に来ているかもしれないとか、尽きることのない不安に押しつぶされそうになりながらも「その時」を待つ。
コンコン、と部屋の扉がノックされる。
きた。
コンコン、と再び。
「な、何?」
少し上擦ってしまったが、なんとか声を出す。
「遊ぼうよ」
女の子のように高い声。7つも歳の離れた弟のもの。
「遊ばないよ」
考える間もなく答える。これはもう一種の儀式だ。
「そっか」
そっけない口調で返事が返ってきたあと、ドアの向こうの気配は消えた。
何もなかった。少しだけ安堵感が湧き、恵はいつのまにか眠りについていた。
事故で亡くなる前の弟と、楽しく公園で遊ぶ夢をみた。
寝起きはもう最悪だった。夜は怖いが、朝がきたことを喜ぶには永遠に朝が続く状態にならない限りは難しい。また夜が来てしまうのだから。
それでもいつもと同じように着替え、顔を洗い、朝ごはんをパンだけ食べて学校に向かう。最近痩せたわね、なんて母は言うが、以前より元気がないのはみんな同じだ。
「おはよう、恵」
学校の正門近くで後ろから声をかけてきたのは、同じクラスの美香。彼女はいつも悩み事などなさそうに、好きなミュージシャンやYoutuberの話ばかりしてくる。
「どうしたの、元気ないね」
美香ですら気付くほどの覇気のない顔をしているのだろうか。いよいよまずいかもしれない。
「夜寝られなくて。ちょっと、悩んでて。」
具体的な話をするつもりはなかったが、しつこく理由を聞いてくる美香に根負けし、ふんわりと「アレ」の話をしてみた。
「毎晩誰かが夜中に部屋をノックしてきて、怖くて眠れないの」
笑い飛ばされるかと思ったが、思いの外真剣な表情になる美香。
「それって人間じゃなくて、霊的なやつ…ってこと?」
「うん...多分」
頷くと、美香は“私に任せろ”と言わんばかりの表情で、
「ぴったりな人、知ってる」
と言った。
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