空想山脈

歩いても歩いても頂上につくことはない。

しかし誰しもが明らかなゴールとして「頂上」を見つめあるき続けている。


僕はある1人のおじさんに声をかけた。

「なんで頂上を目指すんですか?」

おじさんはゆったりとした間を取ってこういった。

「何処も目指していないよ。この道はただ一つの山に続いているんじゃないんだ。山脈のひとかけらに過ぎないのさ。だから私の想像力だけが山の頂上を決めるのさ」

正直、彼が何を言っているのかさっぱりわからなかった。

年の功なのだろうか。そうならもっと早くおとなになってみたいものだ。


確かに、日の出が見える一番高い山の方向にたくさんの登山者が列をなして登っていく様子がここからでもはっきりと見える。

だが不思議なことに、整地された土地を安全に隊列で登っている彼らの様子は正直黒ずんで見えた。一時的かも知れないが、日の出で光を燦々と浴びるために影に身を落としているという様は実に滑稽である。


太陽の登りだす方向へと進まずとも太陽は12時の方向にいずれ上がる。

誰しもが照らされるときが必ず来るのだ。

だから私はこの道をゆく。


「え?僕の行道がわからないだって?そんなの当たり前だよ。

 君の選択肢にはまったくないんだからね。」

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