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「それで・・・いったい、どうなったのかしら?」
人間界からはるか遠く、魔国と呼ばれる国にその女はいた。
褐色の肌に銀色の髪をもったその女性は、グラマラスな肢体を存分に生かした露出の高いドレスを着て玉座に腰かけている。
魔王チョコレータパフィ。
ニクジャガンの実の娘であり、『昼歩く吸血鬼』。
ペロペロキャンティが忠誠を誓う、現在最強の魔族である。
「どうなったっていってもなあ。今、説明したとおりだぞ?」
カゲヒコは肩をすくめて答えて、ちらりとチョコレータパフィの胸元を盗み見する。
ドレスから大胆にのぞいた胸元は小玉スイカのように膨らんでいて、ふっくらと柔らかそうである。
(たまらねえな・・・あー埋めたい。いろいろと)
「キャンティは結局、父を斬り捨てたのかしら? それに、クリョウカンはどうなったの?」
カゲヒコの視線に気づいているのか否か。チョコレータパフィは頭痛を堪えるようにこめかみを抑えて聞いてくる。
カゲヒコが魔王の下へとやってきたのは、先日の騒動について報告するためである。
一応、目の前の美女はカゲヒコにとって雇い主にあたる。定期的に報連相は行っていた。
ちなみに、先代魔王ニクジャガンがミニマムサイズで復活したことについても、チョコレータパフィにはあらかじめ知らせてある。
父親を倒した男を雇うことができたのも、父の生存を知らせて確執がなくなったことが大きな理由である。
「いやあ? クリョウカンがニクジャガンを連れて逃げて、キャンティはそれを追いかけて行ったぞ? まーだ戻ってきてないのかよ」
「戻ってきてないわ・・・この忙しいのに」
チョコレータパフィが物憂げに目を伏せる。
魔王が代替わりして、クリョウカンを始めとしたニクジャガン派の魔族が魔王軍から去ってしまった。
これによる人材不足は新任の魔王であるチョコレータパフィにとって大きな負担となっていた。
そんな状況で側近中の側近であるペロペロキャンティが行方不明になったのは大きな痛手に違いない。
「同情するね・・・ところで」
カゲヒコは悩ましげに玉座の上で姿勢を崩したチョコレータパフィを見つつ、表情をだらしなく緩めた。
「そろそろ約束の報酬を受け取ってもいいんじゃないかな? ほら、オーバーアイテムを集めてきたら一発やらせてくれるってやつ」
カゲヒコが下心満載の表情で要求すると、チョコレータパフィは「あら?」と嫣然と微笑む。
「まだ人間界に流出したオーバーアイテムは半分も集まっていませんことよ。報酬を渡すには早いんじゃあないかしら」
「またそうやって誤魔化しやがって・・・」
「賢者クロノ、貴方が私の夫になってくれるというのなら、いつだってこの身を差し出してもいいのだけど・・・」
ドレスの胸元を引っ張って露出を増やしつつ、チョコレータパフィはウィンクをしてカゲヒコを誘惑する。
しかし、カゲヒコはまっすぐな瞳で雇い主を見返した。
「断る。結婚するくらいならやらなくていい! 結婚はしたくないけどセックスだけはしたい!」
「普通に最低ね、貴方は・・・」
わりと本気で失望したように若き女魔王はつぶやき、深い深い溜息をついたのであった。
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