第4話 泳ぐ金塊
①
海は嵐に襲われていた。
暴風で波が巻き上がって宙へと舞う。海面に叩きつけるような雨粒が無数に降り注ぎ、目と鼻の先すら見通せない水のカーテンが四方を覆い尽くしている。
そんな暴れ狂う海を一隻の船が進んでいく。矢のように降り注ぐ雨に耐えて。蛇のようにうねる波を切り裂いて。
ただ、ひたすらに進んでいく。
「船長、このままでは船が持ちません! 沈んでしまいます!」
「くっ・・・野郎ども、最後まであきらめるんじゃねえぞ! 陸地まで粘るんだ!」
船乗りの悲鳴を吹き飛ばすように船長が怒鳴る。しかし、船長自身もすでに自分達の命運が尽きかけていることを感じていた。
船が嵐に巻き込まれてから数刻。すでに船は限界を迎えていた。船の舵はとうに機能を失っている。右も左もわからないまま、波と風に翻弄されるままに船は盲進していく。
そのとき、マストに上っていた船乗りが大声を上げた。
「船長、前方を見てください!」
「どうした!?」
「陸地です! 前方に陸地が見えました!」
「っ! 本当か!」
マスト上からかけられた救いの言葉。船長は縋り付くように船の前方を注視した。
日はすでに沈んでおり、灯台の明かりも見えない。しかし、雲の切れ間から閃く雷光に照らされて船の前方に巨大な島の影が見えた。
「しめた!」
船長は歓喜にこぶしを握った。どうやらまだ運が残っていたようだ。
「女神は我らを見捨てていなかった! 全員、気合を入れろ。あと少しの辛抱だ! このまま島まで船をつけるぞ!」
『おお!』
船は必死に波をかき分けて島へと接近する。巨大な島には街の明かりはもちろん、森の木々も見ることはできない。名前もわからぬ得体のしれない島であったが、嵐の海を漂い続けることに比べれば楽園に等しい。
「やった!」
「助かったぞ!」
あと少しで島に付けることができる距離までたどり着き、船乗りからも歓喜の声が上がる。この嵐の中で誰一人仲間を失うことなく陸地までたどり着くことができた。船長も安堵の息をつく。
しかし――
「なっ!?」
「うわああああああああ!?」
「ば、化け物だ! 逃げろオオオオオオオ!」
突如として、島が動き出した。島の左右に大きな目玉が現れて、ギョロリと彼らの船を睨みつける。嵐をはるかに凌ぐ巨大な波を上げてズブズブと船に向けて迫ってきた。
「ち、違う! これは島じゃねえ、これは・・・」
船長は最後まで言い切ることができなかった。
巨大な島は怪物のように巨大な
島が海底に消える瞬間、島の上方から巨大な水柱が噴き出した。
ボーッ、と低い笛のような音色が嵐の海に響きわたり、再び海は嵐の喧騒へと包まれた。
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