④
『あ、そこを右に曲がってください』
「おう、右だな」
怪盗シャドウは廃城の廊下をサーナの指示通りに進んでいく。
途中で次々とスケルトンが現れる。それを魔法で打ち払い、躱しながら進んでいく。
『はい、そのまままっすぐ進んでください』
「ったく、簡単に言ってくれるぜ!」
胸ポケットに入れた通信マジックアイテムからサーナの声が聞こえてくる。それに忌々しげに応えて、シャドウは魔法を放つ。
「第3階梯魔法【
「カタカタカタカタッ!」
「ガガガガガガガガッ!」
シャドウが放った炎の槍を受けて、数体のスケルトンがバラバラに吹き飛んだ。
廃城に入ってからというもの、絶え間なくスケルトンが襲ってきていた。下級アンデットであるスケルトン一体一体はたいした強さではない。しかし、この数の多さはなかなか面倒である。
「ちょっと甘く見てたな。こんなことならアンデット対策のアイテムを用意しておくんだった」
全ての魔法を使うことができるチート能力を持つシャドウだったが、アンデット系モンスターへの対抗策はほとんど持っていない。
そもそも、アンデットに対して有効なのは魔法ではなく『神聖術』と呼ばれる神官が使う術である。魔法が効かないわけではないが、必ずしも有効打とはならなかった。
「聖女だったら城ごと浄化して一網打尽だったろうに。適材適所って言葉を見直して欲しいね!」
言って、さらに魔法を放ちながら廊下を駆け抜けていく。できる限り魔力を温存するため、まだ動けるスケルトンも無視していく。
全てのアンデットと戦っていたら、先に魔力が切れてしまう。アイテムボックスに魔力ポーションは入っているが、飲める量には胃の大きさ的にも限界がある。
「サーナ! 財宝がある部屋まではあとどれくらいだ!」
『まだ20分ほどかかります。侵入者を拒むためか、廊下がかなり入り組んだ造りになっているみたいですね』
「はっ、他人の造った道を歩くのは好かないな! ここから財宝の部屋までの直線の方角を教えろ!」
『え? 方角だったらその位置から右の方角に・・・』
「右だな!」
シャドウは新たな魔法を発動させた。
オリジナル魔法【
シャドウの身体がうっすらと黒い煙に覆われる。身体の造詣がぼやけて周囲との境目が曖昧になった。
「よっと!」
魔法により自分の存在強度を下げたシャドウは、幽霊のように壁をすり抜けて城の通路をショートカットしていく。本来であれば20分かかる道のりを数十秒ほどで踏破する。
「この先の部屋だな!」
『はい! すぐそこです!』
シャドウは最後の壁をすり抜けて、財宝がある部屋へと飛び込んだ。
そこにあったものは・・・
「・・・女の子? なんでこんな所に?」
『あれ? お兄さん、だあれ?』
そこにいたのは、ピンク色のドレスを着た幼い少女だった。
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