依頼《クエスト》と報酬
十四
仲間バレによるなし崩し的な計画変更は、五月五日、その日のうちに、早くもおおよそのことがらが固まった。
人嫌いだった小半助教授から
とはいえ、女子中学生をすねさせるとあとあとめんどうだ。交渉の結果、『転生したら(以下略)』の五十連ガチャを何回かまわさせる約束で折りあいがついた。一九九〇年当時の絵柄に近いほど報酬アップ、と吹き込まれて、葵はがぜんやる気が出たようだ。
拓海と不藁の意見を参考に、座卓上のノートPCや自前のスマートフォンなどで平成初期のタッチを
葵をうまいこと釣った千尋いわく、「ゲーミフィケーションって人間心理を強力に突くのよね」
日焼けで色あせたカーテン横で壁にもたれかかる千尋は、三十年前の市場調査に取り組む少女の後ろ姿を眺め、彼女の伯父に語る。わきの博は、
先ほどまであれだけ嫌がっていたバブル期の絵柄を、今は熱心に研究。モニターへ現れる画像に逐一「なんか色づかい、異様に濃くない?」「キャラデザやばい。悪い意味で」「昭和人、こんな絵しかない時代に生まれてかわいそう」と感想を述べる。おおむねネガティブ評価だ。
それでも「ここまで誘導できれば上出来」と、千尋は誰にともなく自画自賛をつぶやく。
「さすが
「知りあいの同業者が、開発に欠かせない、と語る心理学テクニックのまねごとよ」
聞きかじり程度でも『こうかはばつぐんだ』のようね、と千尋は、
葵は「キニちゃん、待っててね。キツい
――どうも
ソーシャルゲームの鬼畜仕様も含めていろいろとげんなりする博を察したように、千尋が言った。「若い子向けのサービスも、洗練された手口でえげつなく絡め取ってるみたいだしねえ」
特にソシャゲ界隈は闇が深い、とぞっとしない調子でかぶりを振る。
かくいう彼女も彼女で、「
たしかに、スマホゲーのガチャは不毛この上ないと博も白眼視しているが、昭和のキャラうざいよぉー、全然かわいくないー、と悶えながらも一生懸命、画像を見てまわる姪の姿は、アンフェアな判定をする気にさせない。
価値観は人それぞれだ。大多数にはごみやガラクタに見えるものでも、収集家は何万、何十万もの金をつぎ込む。
「
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