第10話 隼人の過去
「白崎さん、ごめんね。迷惑かけたね。いろいろありがとう。」
「高木さん。大丈夫ですか?落ち着きましたか?」
「うん。すごく落ち着いた。」
「高木さん。高木さんが大丈夫ならでいいんですが、何があったのか教えて頂いてもいいですか?」
「そうだね。白崎さんには迷惑かけてしまったし…聞いてくれるかな?」
『僕が5歳の頃の話なんだけどね…
僕の家は、父さんも母さんも共働きで、仕事の時はおじいちゃんの家に預けられててさ、月に一回ぐらいは休みを合わせて何処かに出かけるんだ。
その日は、僕が前から海に行きたいと言ってた事もあって、父さんと、母さんと僕の3人で水族館に行ったんだ。
お昼は近くの浜辺でシートを引いて、母さんが作ったお弁当を持ってきてそれを食べる。これが、僕が子供のころの楽しみだった家族の休日だったんだ。
でもね、その日の帰りにね…事故に遭ったんだ。
帰りの時は天候が悪くてね。雨と雷が凄かったんだ。雨で視界がとても悪かった。
そのせいもあって、トラックが近づいていることに気が付くのが遅かったんだ。
気づいてブレーキを踏んだ時にはもう…
僕は、1か月ほど集中治療室にいて普通の病棟に移動したときに聞かされたんだけどね。
父さんは即死、母さんは運ばれて一週間後に亡くなったそうなんだ。
いつも、後悔しているんだ。僕があの時に海に行きたいなんて言わなければこんなことにならずに済んだのにと。そのあとは、祖父母の家に引き取られて育てられたんだ。さっき話したアフィリエイトも、こんな僕を育ててきてくれた祖父母に恩返ししたくて始めたんだけどね。』
と、僕の過去の話を一通り終えたところで白崎さんの方を向くと…
白崎さんは、声には出していなかったけど泣いていた。
「高木さん、話してくれてありがとぉ。変な話聞いちゃってごめんねぇ。」
「うぅん。いいんだ。白崎さんに聞いてもらったおかげで、少し楽になったよ。それに、白崎さんが作ってくれた肉じゃがが、僕の大好きだった母さんの作ってくれた味にすごく似ててびっくりした。」
「そうなの?私もお母さんから教えてもらったレシピで作ってるから…でも、お口にあったようなので良かったです。」
この後は、他愛もない話で盛り上がった。
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