夢を叶える〜ハゲと笑われた女の子の物語〜

成瀬莉子

プロローグ ふたつの夢

「自分の髪をとかす」という夢。

これは、いつの間にか諦めた夢。


物心ついた時には、髪の毛がなかった。

お母さんにはある髪の毛が私にはないこと、お父さんにもある髪の毛が私にはないこと、周りのみんなと違うことにも気づいていた。


「早く髪の毛伸びるといいな」

そんなこと、本当に思っていただろうか。

いつか伸びるだなんて、心から信じていただろうか。

大人になって振り返ると、疑問である。


でも、ホームビデオに残っていた。

ツインテールのリカちゃん人形の髪の毛を触りながら、

「お人形ちゃんみたいに髪の毛やりたいな〜」

嫌味でもなく、

幻想チックでもなく、

夢を語る風でもなく、

素直に思いのままを口にした3歳の私。

「うん…」

言葉に詰まりながら、なんとか平然と相槌を打ったであろう撮影者である母の声。

今の私なら、その時の母の胸の痛みが分かる気がした。




「客室乗務員になる」という夢。

これは、6年前に22歳の私が叶えた夢。


いつからそれが夢になったのか、

明確なきっかけになる出来事はなかった。

この夢はいつの間にか目標になり、

自分の手で掴むことができた。



小さい頃から、ハゲ頭に帽子をかぶって外を歩くと色んな人が私を目で追うことに気づいていた。

「そんなに見ちゃダメよ」と子供を叱る大人がいることも。


ハゲ頭で通学したら、有名になった。

みんなの前で私のことをハゲという人は怒られた。

だから陰で言う人の方が多かった。


カツラをつけていたら、カツラだってバレた。

きっと子供たちにとっては、ハゲ以上に面白いネタだった。

でも、外を歩いても誰も私を目で追わなくなった。



まだまだある。

色んなことを乗り越えて、夢を叶えた。

こんな人生、生まれ変わりたい

そう思ったこともあったけど、今は

人生って素晴らしい

そう思える。


これは、ハゲ頭と笑われた女の子が客室乗務員になった、本当のお話。

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