第104話 最近の電車は軽くて丈夫なのがウリ
そこに立っているのは、ホワイトリリー。間違いなくホワイトリリーだ。
だけどその姿は、
背中に生えた、純白の羽。
まさに天使と呼ぶべき彼女は私の目に、いや誰の目にも
「あれは……牛丼怪人たちと戦ったときの」
そう、あの姿を私は見たことがある。今日みたい何体も怪人がいて不利な状況でも、いつも以上のスピードとパワーで怪人たちを圧倒したのは記憶に新しかった。たしか第2形態、と。たしかエリーさんはそう言っていた。
「でもあの姿って、たくさんのプラス感情を得たときにしか出せないはずじゃあ」
エリーさんはこうも言った。「限定的な姿だ」と。
前に変身できた理由はわかる。私がその……素直な気持ちを、伝えたから。乃亜さん《ホワイトリリー》がそれをあたたかく受け取ってくれたから。
ううん、なに考えてるんだ私。ちょう恥ずかしい。
ま、まあそれはともかくとして。今この状況――たくさんの人が逃げたりしてマイナス感情エネルギーが充満していてもあの姿になれるってことは……
「向こうもパワーアップしとるっちゅーことやな」
苦々しく、隣でベルがつぶやいた。
「やっぱり、そういうことなのかな」
「おそらくやけどな。あんさんが新しい能力を使えるようになったように、ホワイトリリーも鍛錬を積んでたってわけや」
そりゃあそうだよね。ホワイトリリーには町の人たちを守るっている使命があるんだし。きっとがんばって修行とかしたに違いない。
「むむむ、これは苦しい戦いになりそうですぞ……」
ハカセもうなっている。それに呼応するように、ホワイトリリーをぐるりと囲うように立っている怪人たちも「ガタタタ……」と言葉をつまらせていた。
「せやけど、今日はボスが望まれた決戦なんや! 引くわけにはいかへんで!」
と、尻込みしていたみんなを
「いくんや! こうなったら数の多さで押し切るで!」
「「「ガターッ!」」」
「「「キ――ッ!」」」
再び合計6体が飛びかかる。回避のスキを与えまいと一斉に。
だけど、
「シャイニングシャワー!」
それを待ちかまえていたかのようにホワイトリリーが技を発動させる。シャイニングシャワー、光を放っての全方位攻撃。しかもいつもの状態よりも発動スピードが格段に違う。
「「「ガタッ」」」
「「「キーッ」」」
当然、飛びかかっていた全員にクリーンヒットして、光に包まれる。
1対6になっても戦力差は歴然だ。勝ち目があるようには見えない。
「キー……」
光が消えていくと、
ほらやっぱり――
「ガタタタ……」
あれ?
なんと、倒れているのは戦闘員だけで、電車怪人は3体ともピンピンしていた。
そんな、パワーアップしているホワイトリリーの攻撃を真正面から受けたのに……。
「あなたたち、なかなかやるわね」
「ガタタ……あまりなめるなガタ」
電車怪人は不敵に笑うと、
「俺たちの身体は最先端のアルミ合金でできているんだガタ!」
「さらには衝撃吸収構造も採用されてるんだガタ!」
「そんなしょぼい攻撃なんて痛くもかゆくもないガタッ!」
その車体を自慢するようにそろってポーズをとる。
「おお! さすがはE235系! 軽くて丈夫な素材、シビれますなあ!」
「そのしなやかなボディ、うっとりしますぞ!」
「あの接合面は間違いなくレーザー溶接ですな!」
そして少し離れたところで興奮気味に会話する鉄オタ3人組。あの人たち、まだいたんだ……。
「あなたたちの身体が頑丈なのはよくわかったわ。でも、これならどう?」
ホワイトリリーはそう言うと、ステッキを掲げる。直後、その先端には光が、エネルギーが集まっていく。おそらく必殺技のビーム攻撃、ホワイトスターを放つつもりなんだ。
「言っておくけど、避けるのも防ぐのも難しいわよ? 今の姿で打つホワイトスターは、すっごく速くて強いんだから」
彼女の言うとおりだ。第2形態で放つホワイトスターは、牛丼怪人に回避を許さず、そのひざをつかせていたほどに強力だった。
しかし、電車怪人はまったくひるむ様子を見せない。
「ガータッタッタ……甘いガタ」
それどころか、なんだか自信満々だ。
「俺たちには今までやられてきた怪人の恨みが蓄積されてるんだガタ。当然、お前との戦いも蓄積されているガタ」
「つまり、あなたたちはなにが言いたいの?」
「ガタタタ……お前に勝ち目はないってことだガタッ!」
すると、電車怪人のうち1体(たぶん特急? よくわからないけど)が声を張り上げた。
「いくガタ! 『準急』! 『急行』!」
「ガタッ!」
「ガタッ!」
すかさず残り2体が反応する。そして最後に彼らは声をそろえて、こう叫んだ。
「「「連☆結!」」」
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