第60話 悪の女幹部の度々

「――待ちなさいっ!!」


 張りつめた声が、駅前広場へと響き渡った。


「ギュ?」

「えっ……」


 いきなりの、しかも予想外の方向からの横やりに驚く怪人とホワイトリリー。その拍子で力が抜けたのか、ぶつかり合いは止まり、お互いに一歩引いた位置に立つ。


「……その戦い、そこまでよ」


 さっきよりも小さく、けれどこわばったままの声が、戦闘が中断し静まり返った空気の中を伝わっていく。


 まるで時間が停止しているみたいに、ふたりは同じ方向を見ている。


「あなた……」


 目を丸くしているホワイトリリー。


「ギュー?」


 身体をこっちに向けて不思議そうにしている、怪人。


 じっと、それを見る。

 魔法少女と敵の怪人との戦いに割って入ってきた存在を。



 さて、問題です。


 駅前広場のど真ん中。怪人とホワイトリリーの視線を集める注目の的。そんな視線に恥ずかしくて死にそうになりながらも立っている、黒いマントで身体をおおった人は一体、誰でしょう。


 そう、西村千秋わたし――


 いや、違う。


 そう、悪の組織の女幹部わたしです。

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