第43話 出会い ~黒の次は白~
私の目の前には、立派な
白を基調とした現代風のデザインで、庭にはオシャレなテーブルとイス。
まさに、物語の主人公が住んでいそうな家――
そう。
「大きな家……」
どうして私が乃亜さんの家の前に立っているのかというと。
話せば長くなる……なんてことはもちろんなく、単に学校を休んだ乃亜さんにプリントを届ける役目が、たまたま日直だった私だったから、だ。
てっきり乃亜さんといつも教室でしゃべっているギャル連中がお見舞いも
どうせ友情なんてそんなものだ。まあ、友だちがあんまりいない私が言えたセリフじゃないか。
そんなわけで、担任の先生に住所を教えてもらって、放課後やってきたわけだけど、
「緊張してきた……」
同級生の家を訪れるなんていつぶりだろう。小学生時代はよく遊びに行っていたような気もするけど、今は遠い昔。あのころはよくもまあ、人様の家に遠慮なくずけずけと上がり込んでいたものだ。
「……よし」
胸の前でこぶしをふたつ握って、戦闘態勢。なにと戦うかって? そりゃクラスのアイドルのお宅訪問だもん。
心の中でもう一度「よし」とつぶやいて、インターホンを押す。
・・・。
「……あれ?」
スピーカーからはなにもない反応が返ってきて――つまり、応答がなかった。
家族が出かけてて、乃亜さんは寝てるとかかな。
考えてみれば、風邪で休んでいるんだ。起き上がれないくらい体調が悪い可能性だってある。
でもどうしよう。ポストに入れておくのもなんだか失礼な気もするし……
「あっ、そうだLINE」
少し前に構築された彼女との連絡手段を思い出す。アプリを起動してトーク画面へ。なんて送ろうか悩みに悩んだ末に採用されたのは『風邪、大丈夫? プリント持ってきたんだけど』というシンプルなメッセージ。
返事、くるかな。寝てたらそもそも気づかないよね。
けれど私の心配は
『ごめん! 来てくれてありがとう! けどうつすと悪いから、プリントはポストに入れておいてくれない?』
続いて、ウサギがごめんなさいのポーズをしているスタンプ。
『わかった、お大事にね』
『ほんとごめんね? わざわざありがと』
ぽこぽこと数回音が鳴って、私たちの会話は終わる。それから、プリントの入った封筒をポストへと入れた。
やっぱり直接渡した方がよかったかな……。乃亜さんの体調も気になるし。
なんて思いながらも、私は連絡手段であるスマホをポケットにしまう。
LINEはちょっと苦手だ。だって、どれだけ優しい文章でも、かわいいスタンプでも、相手がそれと同じ気持ちで、表情でいるかはわからない。それは相手にとっても同じこと。
「……帰ろ」
まあ会ったところで私にできることが変わるわけでもないし。
玄関に背を向け、夢崎家をあとにしようとして、
「あなたが悪の組織の新入りね」
「え?」
背後から声がして反射的に振り返る……も、誰もいない。
聞き間違い、かな。
「こっちよ、こっち」
もう一度声。よく聞けばそれは私の背後、正確には足元からだった。引き寄せられるように、目線を落とす。
「こんにちは、悪の組織の新入りさん」
そこには――1匹の真っ白な猫がいた。
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