第41話 正体と理由(2)

「マイナスの感情っていえば」

「なんや?」

「初めてホワイトリリーと戦ったときも似たようなこと言ってたよね」


 たしか、駅前ビルの屋上。缶チューハイ怪人が広場で暴れているときのこと。


『ああして不安や恐怖みたいな、人のマイナス感情をエネルギーにしてるんや』


「せや。怪人に暴れてもろて、効率的にマイナス感情を集めようってわけや」


 そうなんだ。あのときはてっきり怪人がエネルギー源にしてるんだと思ってた。


「オレだけで集めようとしても限界がある。せやから、ミカに怪人をつくる力を与える……オレが適性ありと見込んだ人間に協力してもらう。それがオレらのやり方やねん」


 適性ありの人間……ミカさん、橋本はしもとさんたち。それに……私。


「けど困ったことに、それをジャマするやつがおんねん」

「……魔法少女」

「そのとおりや」


 魔法少女ホワイトリリー。正義の味方。

 ベルも生きていくためにやっているとはいえ、人々にマイナス感情を抱かせていることに違いはない。やりすぎると人間の心は沈んでいってしまう。それは私自身、ネガティブ思考だからよくわかる。

 人々が、社会が暗くなっていってしまうかもしれない。それを阻止そしするため、ホワイトリリーはベルと戦っているってことなんだ。


 ん、ちょっと待てよ?


 私たち――つまり悪の組織側はベルから力をもらって、戦闘員に変身したり、怪人をつくったりしている。普通の人間にはできない、超常的な力を出すことができている。


 じゃあ、魔法少女は?

 悪の組織に対抗し、そして何度も勝利をおさめているホワイトリリーは、一体どこからそんな力を……。


「ねえベル、ひとつきたいんだけど」

「なんや?」

「さっきから時々オレ『ら』って言ってるよね?」


 もしかして。そんな予想を胸に抱きながら訊くと、


「あんさんの思てるとおりやで」


 ベルはヒゲを揺らしてにやりと笑う。


「この星にやってきたんは、オレだけやない」


「もうひとり……オレと正反対なやつがおるんや」

「それって、つまり」

「せや」


 うなずく。そして私が予想していたことを、そのまま口にした。


「ホワイトリリーに魔法少女の力を与えてるんは、オレと同じ宇宙から来たやつや」

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