結婚してからが、ラブコメ。
えぐち
第一部
プロローグ:偽りの誓い
——あぁ、神様よ。
どうか、神前たる場所で、嘘をつく俺をどうかお許しください。
「新郎、
ここは真っ白で、景色のいい地上40階のスカイウェディング。
周りには親族や数少ない友人が、俺の返事を聞こうと耳を傾けていた。
これから俺は結婚する。
今、目の前にいるウエディングドレスに身を包んだ女性と。
綺麗なのには、間違いはない。これは本音だ。
嘘は嘘でも、嘘を突き通してしまえば、それは嘘ではなくなる。現実にしてしまえばいいのだ。
——大丈夫だ。
今までも上手くやってきた。
これからも同じ事をやっていけば良いだけの話だ。
であれば、何の問題もない。
じゃあ応えようか。返事は一つだ。
「はい。チカイマス」
♡
——あぁ、神様。
どうか神前たる場所で、嘘をつく私のことをどうかお許しください。
「新婦、
この結婚式場で、このチャペルで挙げれた事には感謝している。
青空の広がり、街並みを一望できるこの場所。
文句を言わず、ただ私の希望に添うようにしてくれた。
ただ、後のことは全部人任せなのは、むかつく。
そして、堂々と嘘をつくのにもむかつく。カタコトだし。
こういう時だけいい顔して、本当に腹が立つ。
愛していなくても、愛せばいいだけ。
愛せなくても、愛せばいいだけ……あれ、どっちもおかしなこと言ってるな私。
——ううん。大丈夫。
これまでも上手くやってきた。
いつも通りに過ごしていけば、何とかなる。
だから大丈夫。
答えは一つしかない。もうここまで来たら引き返せない。お母さんに心配を掛けたくない。
「はい。チカイマス」
♢
「それでは指輪の交換を」
牧師が指輪の入っているリングピローを差し出して、俺はそこから彼女の指輪を取る。
そして、緊張で震える手で、彼女の左薬指に指輪を通した。
次は彼女が指輪を取り、俺の左薬指に通していく。
「では、皆様に指輪をご披露して下さい」
牧師の言葉に従い、向き合った身体をバージンロードに向け、左手の甲を披露する。
パチパチと皆が祝福の拍手を送ってくれた。
「向き直してください」
再び向かい合いあった。
「ベールを上げてください」
彼女のベールを上げ、両肩に手を置く。
「それでは誓いのキスです」
あぁ、緊張する。
これは儀式だ。演技していると思えばいい。そう、今は結婚式の撮影をしていると思えばいい。
……大丈夫。
目を合わせると、彼女はこくりと頷いた。
『『練習はした』』
顔を傾け、ゆっくりと唇を近づけて、誓いのキスを——
——カツッ
「「痛っ!」」
こうして最悪の挙式は幕を閉じ、俺達の結婚生活は幕を開けた。
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