第8話(1/6)
『お祭り行きませんか?』
姫宮の風邪が完治したと報告を受け、それから一週間が経った日、俺が古典の夏休み課題に取り組んでいるとそんな文面がスマホに表示された。差出人は姫宮だ。
ちょうど課題もキリがいいところだったので、俺はLINEを開く。すると続けざまにメッセージが送られてきた。
『港の花火大会あるじゃないですか』
港の花火大会とは、その名の通りここから近い港で開かれる花火大会だ。数千発の花火が海上に打ち上げられる様は圧巻で、例年県の夏祭りで最も多くの来場者が訪れるらしい。
『あれに行くってこと?』
『あ、いえ、違います。行くのは別のとこです』
話が読めず、俺は疑問マークを浮かべたパンダのスタンプを送る。広告を兼ねた無料のやつだ。
『実はとある先輩と港のに行くことになるかもしれなくて、その予行練習をしたいなって』
……なるほどね。
『……今度の土曜日なんですけど、どうですか?』
わかった、そう入力までしたが、送信を押す指が止まる。なんだか気が進まなかった。
姫宮の練習台になるのはいつものことなのに。
まぁ、さすがに場所が遠いからだろうと自分を推測する。
『ほら、こないだのお見舞いのお礼もかねて、何か奢りますから!』
……まぁいいか、予定があるわけでもないし。
『わかった』
俺は端的に返し、
『それじゃあ藤和はお前が誘っといてくれ』
と続けた。後輩部の活動なんだから、藤和を誘うのが筋だろう。
『りょーかいです! 集合時間や場所はまた近くなったらで!』
『オッケー』
ややあって返ってきたメッセージに対し、俺はそう返してスマホを伏せる。
夏祭りか……。
そういえば去年は行ってないから、中学振りになるな。
そう考えるとちょっとだけ楽しみになっていた。
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