第5話(2/6)
「姫宮、すでに気になってるやつはいるか?」
「え、まぁいますけど……」
そう言って姫宮は何か考え込むようにして口元に手をやる。
「……そうですね。イケメンの先輩といえば無難にサッカー部の
ややあってそう続けた。
「私、全員知らないです……」
「大丈夫。それが普通だ」
三宅は同級生だからなんとなくは知ってるが、それ以外はさっぱりだ。
「いやいや、三人とも超有名人なんですよ。吉澤さんはサッカー部のエースで、空中戦を得意とするその高身長が特長です。三宅さんはテニスの傍ら、読者モデルも務めるメディアが認めるイケメン。須藤さんは普段の甘い顔立ちと試合中の熱く真面目な表情のギャップが魅力とされています」
「へ、へぇ……すごい人達なんですね……」
藤和が若干引いていた。
俺はとりあえず今上がった三人の名前をホワイトボードに記す。
「他には……、藤和は誰か心当たりはいないか?」
「うーん……私は人の顔をあまり気にしないので……。あ、でも、チェロの三年生の
「ふむ。藤和の知り合いなら、藤和経由で関わりやすくていいかもな」
「……あー、私、その先輩と話したことないです。ごめんなさい……」
「まぁ人数の多い部活だもんな」
それに藤和はついこないだまで先輩部員とまともに話すこともなかったわけだし。
一応“加瀬”と書いたところで藤和が訊ねてくる。
「先輩のお友達に誰か良い人はいないんですか?」
「俺の大事な友人を生贄に捧げるわけにはいかない」
「ちょ! それどういう意味ですか!」
「どういうも何もそのままの意味だ」
ま、紹介出来るようなイケメンの知り合いなんぞいないんだけどな。そもそも俺は友達が少ない。
中学からの同級生は少ないこの高校だし、去年は昼休みも放課後もほとんど生徒会に費やしてきたから、新規の友達もほとんど出来ていない。
結果、現在の俺が友達と呼べるのは、春樹を始めとした数人だけだった。
「というわけでこの四人とまずは知り合いたいと思う」
「知り合うっていっても、どうするんですか? ファンなんです~って言って連絡先渡すんですか?」
不服そうな表情そのまま、姫宮が訊ねる。
「さすがにヒナ、そういうのはあんまりしたくないんですけど……」
「大丈夫だ。モテる男子にそんなことしても有象無象に紛れるだけだからな」
何より、そんなことを複数の男子にしてるなんてバレたら、とんだ軽い女だと思われてしまって逆効果だろう。……まぁ事実なんだけど。
「じゃあどうするんです?」
「これだ」
俺は鞄からあるものを取り出した。
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