センパイ、「計算高い」って褒め言葉ですよそれ♪

ラムチョップ三世

プロローグ

「――先輩のことが、ずっと好きでした。俺と付き合ってください!」

 

 勢いよく頭を下げる。

 上靴の先が見えた。

 この一年間で随分汚れたものだ。

 開かれた窓の外から、賑やかな声がする。きっと今頃、多くの後輩達が諸先輩方を涙ながらに送っているのだろう。


 今日は卒業式。

 式が終わるとすぐに、俺は二人の思い出の場所であるこの生徒会室に先輩を呼び出し、そして告白をした。


 正直自信はあった。この私立一ノ瀬いちのせ高校の第三十一・二代目生徒会会長である、神楽坂志保かぐらざかしほ先輩とはこの一年、多くの時間をともに過ごしてきた。思い返せば、大変だったけど楽しかったことばかりだ。

 一週間近く泊まり込みで学園祭の準備をしたり、近隣の中学校の生徒会と一緒になってクリスマス会の運営をしたり……。そして何より、その合間で先輩から色んなことを教えてもらった。二人きりで勉強を見てもらったこともある。


 たぶん、生徒会で一番可愛がられていた思う。先輩が異例の二年連続生徒会長を務めたことで、二年連続先輩の下で役員を全うした女子の二年生よりも、一年生だった俺の方がずっと。

 そして俺も先輩を一番慕い、尽くし、その恩に報いるべく期待以上の成果を上げて来た。


 だから、俺は先輩にとって特別だと思っていた。その自信があった。

 ……それなのに、




「…………ごめん」




 降ってきた言葉に、思わず目を見開き、顔を上げる。

「君のことは、ただの後輩としか見てないんだ」

 先輩は困ったように、それでもハッキリと、そう告げた。


 頭を横からぶっ叩かれた想いがした。

 一瞬、呼吸が出来なくなる。


 いや、俺だって別に全くのノー天気ってわけじゃない。フラれる展開だって多少の想定はしていた。

 ただ先輩にとって俺という存在が、“ただの後輩”そんな一言で片付けられてしまったことが、この上なくショックだったのだ。


 以降、先輩と何を話したのかは覚えていない。

 ただ一つの疑問が、俺の脳を支配していた。



 ……後輩って、一体なんなんだろう。

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