告白3 =愛すべき人=

神原 遊

第1話 荒廃

 自堕落な生活を続けていました。


 会社勤めでなくなるということは、いとも簡単に私を堕落させました。


 夜中の2時、3時まで夜更かしをするのが当たり前になり、昼近くまで眠る日が続いていました。


 会社員だった頃、あの人と交際していた頃は頻繁に料理をしたものですが、だんだんまともな食事をしなくなりました。


 外食をすればましなものを食べられましたが、家にいる時はスナック菓子や、甘いものなどのジャンクフードで済ませてしまう日々でした。


 次第に部屋は散らかり始め、時間があっても掃除や片付けをしようとはしませんでした。ソファーに寝そべりお菓子を食べながら、再放送らしき韓国ドラマを何本も眺めていました。


 ごみ箱の中以外にも、テーブルの上や床にもゴミがあふれ出しはじめました。部屋を見渡せばいたる所にほこりが積もっていました。それでも対処する気力もなく、見て見ぬふりをしていました。


 かつて自分は綺麗好きだと思っていましたが、どうしたわけか散らかった部屋でも平気になっていました。


 あの人と別れてから、私の部屋を訪れる人はありませんでした。


 彼を愛したことなどないつもりでした。


 ですが彼を失った私は。


 退職をして、会社勤めから解放され、一時的な予定ではありましたが、自由な時間を得ることのできた私は。


 ただ無気力に、廃人のごとく過ごしていました。


 記憶の中で、繰り返しあの人のことを思い返していました。


 私の上司だった人。


 彼が初めて私に触れた日のことを。


 あれほどまでに感じたことはなかったかもしれない・・・


 やがていつしか、私から積極的にあの人を求めるようになったことも。


 須藤は私を受け入れてくれました。


 思いがけず交際に至ったものの、彼をむしろ有効に利用するつもりでいました。


 妻子ある男など・・・時期を見計らい、既婚者であるあの人とは別れることを、ずっと願っていたはずでした。


 それが叶ったというのに、皮肉にもあの人との記憶は私を苛んでいました。


 彼を思い出さない日はありませんでした。


 あの人がどのように私を欲したのか、いかにして私は淫らな渦に堕ちていったのか、詳細に記憶をたぐり寄せていました。


 ただ不毛な、不健全な日々の日課でした。


 あの人との情事を思い返しながら、数えきれないほど、私はひとり果てていました。

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