第8話 痴漢されながら調教された話

男尊女卑法が施行されたばかりの電車内は男性たちの妙な静けさが、女性にとって恐ろしさを感じさせたが、しばらく時が経てば男性たちの行動も次第に落ち着きをみせていた。

むしろ若い女の子達の間では、痴漢された回数が一種の特殊ステータスのようにも扱われ、今の時代に痴漢されないような女は、♀としての価値が低いというような暗黙の風潮が漂い。

男性たちの間では、いかに女性の前で紳士的に振る舞う余裕があるか試されているような、特殊な空気さえも感じる社会となった。


信じられないことに、私も若干痴漢されることにも慣れてしまってきている。男尊女卑法が施行される前に痴漢をされたのは二度程だった。どちらも女子校に通っている時だった。

男尊女卑法の施行後は週に2.3回は服の上から軽く体を触られることが日常となってしまった。すれ違いに胸を鷲掴みにされたり、お尻を触られたこともある。

そのようなことをする男性の大抵はこれまでに女性との縁がなさそうだった者が多い。

車内にいる大半の女性も、今では体を見られることは勿論、軽く触られる程度では同様しにくくなっていた。

これまでの光景で一番驚いたのは、派手目な学生の子達が小額紙幣を受け取り地味なサラリーマンにお尻を触らせながら友達と平気で談笑していたことだ。

彼女たちの言い分としては、

「触られて抵抗したところで何も変わらないし、触られて減るものでは無い。」

というものだったが

以前の自分なら全く同意しかねなかった意見も、今では完全に否定できない自分の存在を認めたくはなかった。

人類はいかなる場所や環境にも適応してきた。


私も男性に体を触られてもあまり何も感じなくなった。時々鬱陶しくは思うときはあるが、これも法律なのだから仕方ないと諦めが簡単につくようになってきた。


そんなある日、いつものように電車に乗りつり革に捕まって外を眺めていると背後から近づく人の気配を感じた。

「あー、またお尻とか胸触られるんだろうなぁ。まぁあと2.3駅だしいっか」と思っていると、案の定彼は私のスカートの上からお尻を触り始めた。

この感覚にもすっかり慣れてきた自分が嫌だったが、この男性の手付きはどこか他の男性と違うものを感じさせた。

彼は私のスカートを僅かにめくり、スカートの中へ手を伸ばしてきた。

以前なら反射的に拒んでいた私の手はつり革をつかみ続けていた。

彼の手はやがて私のお尻を下着越しにまさぐりはじめた。普段なら何も感じないはずの自分が今日はやけに敏感になってしまうことを感じた。

彼は私のお尻の割れ目をなぞるようにして触ったり、真下から優しく鷲掴みにするようにして掴んだ。

その瞬間私は自らの股間が熱くなっていることを実感した。これは彼の手の体温ではなく、自分の内側から湧き上がってくる体温ということが間違いなくわかった瞬間わたしは悔しさに近いものを感じ、唇を噛み締めた。

明らかにこれまでの雑な男性の手とは違う感覚に私は何か期待に近いようなものを始めていた。一言で言うならばオーガズムがほしい。一瞬ではあったがそう思ってしまった自分がいた。

私は彼が下着の中に手を入れることを期待してしまった。これまでの男性なら雑に私の恥部をまさぐり、私はそれを回避するように下車していた。

それなのに今の私は自分の下車駅が来ることを拒むかのように彼に期待を寄せた。

しかし彼は下着の中まで手を入れることは無かった。

下車駅につく間際に私は

「次で降りるので失礼します…」と小さく呟いた。

そこで彼の手は止まった。

あぁ、明日もまた会えるだろうか、そんな期待を胸にしまい私は家路についた。


彼のせいではない。そう思い込みながらも私は自宅に帰るとすぐに下着を確認した。

やはり濡れていた。あろうことか私の体は男性の性器を受け入れる準備をはじめていたのだ。

自分が自分でないような感覚でいられるうちにと思い、すぐに自慰行為を試みた。

しかし、自分の細い指は彼のゴツゴツとした指と全く違った感覚で絶頂に達することは出来なかった。

その日は彼に痴漢されてしまったことが頭から離れなかった。

食事をしていても、入浴中も彼のことを考えた。そしてベッドに入ってからもまた彼に会えることを期待して股間に手を伸ばした。


つづく

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