第20話 ――

 それにしても、あのガキ、まさか女だったとは。あの時気付かなかった分、得した気分だ。


 まぁ、思ったよりも楽しめたな。石コロ連中のうちではマシな見た目だったか。


 趣味が悪りぃ。あれでマシか。うちの便所より小汚いなりしていたが。


 違いないな。全くその通りだ。


 汚い雑音を、喫茶店にある外の席に居座ってまき散らす数人の男達。周りにも客はいるが、構わず大声で話し続ける。


 周りの客は自然と耳に届くその雑音に、笑みを漏らしていた。


 そこを目がけて不意に飛んでくる小石。放物線を描き、コンッと机で小さく跳ねて飛んでいく。


 談笑に割って入った小石の軌跡を目で追い、不思議そうに周囲を見渡す男達。だが何の異変も見当たらず、また会話に戻ろうとする。


 コッ――。


 そして、もう一度小石が机で跳ねた。さすがに訝しんだのか、席から立ち上がると、石が飛んできた方向へ男達は視界を凝らす。


 なん――


 青い閃光が男一人の顎を砕いた。


 異変は一瞬で周囲に伝わった。悲鳴と共に混乱する店内。だがもう遅い。既に男の仲間も目を撃ち抜かれ、頭を吹き飛ばされている。


 しかし終わらない。その場にいた全ての人間に、業光を纏った石の飛礫が降り注いだ。


 誰も動かなくなったのを見て、初めからずっと店の前で立っていたメアトは深く息を吐いて目線を上に向ける。


「おたくらは、石コロ以下だったね……」 


 中にいた人間を醜い肉の欠片に変えたメアト。


 そんな地獄を生み出した子供を、誰もその場に存在していないかのように、視えてはいなかったのだ。

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